個人的には、某メーカーの飲料を飲めば安価に多量のビタミンCを摂取できるので、ビタミンCがどうなろうと、その人がおいしいと思う食べ方をすれば気にするほどの問題ではないと考えます。
日本施設園芸協会編「野菜と健康の科学」57ページをご覧ください。ここではキュウリではなくニンジンの「アスコルビナーゼ」について書かれていますが、ニンジンをキュウリに置き換えても、基本的には変わらないでしょう。
ダイコンおろしだけでは30分程度放置してもビタミンCはあまり減りません。ところが、ニンジンも加えたもみじおろしでは、ビタミンCが急激に失われています(図2-13)。ニンジン由来のアスコルビン酸酸化酵素が、ダイコンエキス中のビタミンCに作用して、ビタミンCを分解したものといえます。ところが、千切りのダイコンとニンジンでは、ビタミンCは減らないと書かれています。
アスコルビナーゼ(正確にはアスコルビン酸酸化酵素)は、ビタミンC(正確にはアスコルビン酸)に接触して初めて作用します。またこのとき酸素も必要です。
おろしたダイコンからは汁が出ます。おろしたニンジンからも汁が出ます。ダイコンの汁(アスコルビン酸)とニンジンの汁(アスコルビン酸酸化酵素)が混じり合って初めて、アスコルビン酸が酸化(分解)されるわけです。したがって、千切りにしたダイコンと千切りにしたニンジンを混ぜ合わせても、お互いの汁があまり混ざらないので、アスコルビン酸は酸化されずにすみます。
キュウリの場合も同様です。キュウリとダイコンなどをともにジュースにして、空気が入るようによく振ってやれば、アスコルビン酸は酸化されます。ダイコンを切ったサラダの上に、キュウリを切ったものをのせても、両方の汁が混じらないので、アスコルビン酸の酸化はほとんど起こらないと考えてよさそうです。
結論は、「サラダにキュウリを加えてもビタミンCの損失はない」といえます。
細かいことにこだわるよりも、キュウリはその歯切れ感を楽しむ野菜です。冷やし中華のあのふにゃっとした麺の上にパリパリとしたキュウリがのって、それぞれの食材の食感をハーモナイズするのがキュウリの役目ではないでしょうか。