野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

ゴボウはささがきにすると食物繊維が増える?

2011-09-08 17:39:07 | Weblog
 野菜の日の新聞広告記事からです。ゴボウについて「豊富な食物繊維は切るとより増えるので、”ささがき”にすることをおすすめします」と書かれてます。マジシャンなら、1枚のお札をちぎって、2枚にすることもできる(紙の繊維も2倍と期待)でしょうけど、ゴボウを切っただけで繊維が増えるのでしょうか?ゴボウにはポリフェノールが含まれ、切ると酸素に触れて、褐変します。ポリフェノールなら水に溶けますが、褐変物質は酸化重合しているとすれば、水溶性が低くなり、消化酵素にも安定なので「食物繊維」といえなくもありません。せっかくのポリフェノールを酸化させて褐変させるのは、健康のためにどうかなとも思いますし、切ったぐらいで、みるみる食物繊維が増えるとも思えません。
 探しているとそれらしい文献が見つかりました。1996年の瑞穂短期大学紀要に「油いためをし、実際キンピラゴボウにした場合、せんぎりよりもささがきの方がわずかにDFが多かった」と書かれています。DFとは食物繊維のことです。図を見ると、せんぎりでは100g中3.6g程度、ささがきでは3.7g程度となり(統計的に有意差があるのかはわかりませんが)、ささがきの方が食物繊維が多いようです。
 もしこのことを元に、「ささがきが食物繊維が多い」ので勧めるのはどうかと思います。この実験でいいたかったことは、「せんぎり」よりも「ささがき」の方がわずかに食物繊維が多かったということであって、「ささがき」に切れば食物繊維が増えるというデータではありません。また、「せんぎり」と「ささがき」を比べても、食物繊維の差はごくわずかなので、無理に「ささがき」にしなくとも、「せんぎり」の方が口当たりよく多く食べられるのなら、「せんぎり」にしておいしく食べるべきだと思います。
 中途半端に勉強した人は、ゴボウは「さきがき」とすり込まれ、他のおいしい調理法に出会う機会を失うのではないでしょうか?せっかくの野菜に興味を持ってもらう特集に、野菜の調理法を制限するような内容、これも怪情報のひとつと思われます。