野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

タマネギとメチルメルカプタン

2008-07-26 15:06:16 | Weblog
 メチルメルカプタンに関する話題でトラックバックいただきました。調べてみると、「タマネギを切ると、メチルメルカプタンが発生し、涙が出る」という誤解もあるようです。
 メチルメルカプタンというと代表的な悪臭物質です。タマネギの腐ったニオイなどとも表現されますが、タマネギの中にウンコや口臭にも関係する悪臭が詰まっていると誤解されるのは困ったものです。新鮮なタマネギの名誉のために投稿いたします。
 タマネギ、ネギ、ニラ、ニンニクなど独特のイオウ臭がします。これらは、アルキルシステインスルホキシド、あるいはアルケニルシステインスルホキシドを匂いの元とし、切ったりおろしたりすると発生します。タマネギの場合は、アルケニルの部分が1-プロペニルとなった、1-プロペニルシステインスルホキシドが主成分です(ニンニクの場合は、2-プロペニルシステインスルホキシドであり野菜の種類によって異なる)。この1-プロペニルシステインスルホキシドに酵素が作用すると、プロパンチアール-S-オキシドを生成し、これが催涙物質とされます。催涙物質はメチルメルカプタンではありません。
 また辛味についても、1-プロペニルシステインスルホキドから酵素反応で生成されるチオスルフィネート類とされます。(よく硫化アリルと言われますが、正しい表現ではありません。)
 なぜ、タマネギを冷やして切ると涙が出にくいかですが、先に「酵素反応」と書きました。温度が低いと酵素が働きにくいため、催涙物質が生成しにくいのだと考えられます。
 1-プロペニルシステインスルホキシドはタマネギのフレーバーに欠かせない重要な成分です。

 
 

食品中のシュウ酸含量

2008-07-26 13:39:31 | Weblog
 最近、新規投稿を休んでいたら、トラックバック、コメント等多数いただきありがとうございます。「食品中にどの程度シュウ酸が含まれるか教えてほしい」というコメントがありました。これはという資料を探しているのですが、なかなか見つかりません。もし、どなたかご存じでしたらお知らせください。
 古い文献ですが、「栄養と食料」27巻、33-38ページに中原の分析値が出ています。栄養上問題になるのは可溶性シュウ酸だと思いますが、セリ 0.1%、煎茶 1%、ツルナ 1.2%、ホウレンソウ 0.7%、ミョウガ 0.4%、ショウガ 0.5%、タケノコ 0.6%、サトイモ 0.2%、コンニャクイモ 0.2%となっています。バナナについては記載されておりません。
 別の文献ではハチミツ中のシュウ酸が比較されています。100ppm以下ですので、栄養上の問題にはならないと思いますが。
 米国のデータですが、オクラ、チョコレート、全粒パン、プリッツ、フレンチフライ、野菜スープ、トマトなどからも0.1%以下ですがシュウ酸を検出しています。
 ゴレンシというと聞き慣れない名前ですが、スターフルーツにもパーセントのオーダーでシュウ酸が含まれるようです。(園芸学研究、3巻、415-419、2004)
 というわけで、結構多様な食品にシュウ酸が含まれているようです。シュウ酸というと、「ホウレンソウのえぐ味」と短絡されがちですが、シュウ酸がどのような形で存在するか、他にどのような成分が共存するかなど多くの因子が「えぐ味」に関係します。むしろ、シュウ酸はカルシウムの体内吸収を阻害する可能性があるので、ミネラル吸収の面から、食材中の可溶性シュウ酸量の比較研究が必要と考えます。
 補足します。腎結石予防のためのサイトなどにもシュウ酸の多い食品が記載され、そのなかに「紅茶」が含まれています。多分、外国の文献に従って「tea」を「紅茶」と記載したためでしょうけど、「紅茶」も日本の「緑茶」も同じチャの樹から作ります。従って、腎結石予防のために「紅茶」をひかえれば「緑茶」はいくら飲んでもよいという具合にはなりませんので、ご注意ください。
 
 

ピーマンは縦に切ると苦味が減る?

2008-07-06 12:10:29 | Weblog
 久しぶりにおもしろい質問がありました。「ピーマンは縦切りにすると苦味が減るが何故か?実験で示す方法は?」とのこと。
 ピーマンは子供に嫌われる野菜の一つですから、切り方を変えるだけで苦味が変化するのなら、それはおもしろい話です。確かに、ネット上には、ピーマンは縦に切った方が苦味が少ないなどと書かれています。根拠は?
 まずピーマンの苦味について、どういった成分に由来するのか解明されておりません。従って、切り方と調理方法の組み合わせで苦味物質が減るのか、あるいは、苦味物質が溶出しにくなるのか、化学分析により確認することはできません。
 無理に考察するとすれば、ピーマンを横に輪切りにした場合には、ヘタから先まで走る維管束を切断することになります。おそらく維管束には水分や糖などの味に関係する成分が含まれていることと考えられますので、輪切りにして維管束が切断されれば、水分や味成分が調理過程で逃げやすくなります。一方、縦切りにすると、維管束はそのまま保持されるので、水分や味成分は調理過程で逃げにくい。その結果、同じように加熱しても、縦切りの方が水分を保持しやすく、シャキシャキ感やジューシーさが残るので、多くの料理では縦切りにするのだと考えます。ジューシーで歯切れがよく、また甘味成分も多ければ、本来ある苦味はマスクされるため、縦切りでは苦味が弱くなるなどと言われるのではないでしょうか?