野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

野菜の調理と成分

2009-08-30 17:23:16 | Weblog
 日本調理科学会の大会に出ておりました。多くの野菜は調理してナンボのもんなので、現在勉強中です。意外に思った発表を2件ほど紹介します。
 ビタミンCは酸性条件で安定です。**レモン(あるメーカーの飲料)なども、飲みやすくするためにあれほど砂糖を多量にいれなくてもよいだろうと思うほど、酸っぱくしています。たぶん、ビタミンCを安定にするには、あの程度酸っぱいほうがよいのでしょう。だから、野菜を浅漬けするとき、酢でも入れて酸っぱく(酸性に)すれば、野菜のビタミンCがそのまま残ってよいだろう。これは常識と思ってました。発表によると、酸を加えると、ビタミンCが野菜から漬け汁に流れ出るとか。酸を加えないほうが、野菜に残るビタミンCは多いそうです。(ただ、酸には殺菌作用もありますし、酸っぱいほうがおいしい漬け物もありますので、浅漬けに酢はいらないともいえないのでしょうけど。)
 逆に、最近では、赤や紫のジャガイモも手に入るようになりました。赤い色素はアントシアニンと呼ばれるもので、水によく溶けます。そういうとテレビで、紫キャベツのアントシアンで酸性、アルカリ性がわかるとやってましたね。赤いジャガイモを煮てしまうと、せっかく体によい成分?であるアントシアニン(色素)が抜けてしまうんではないかと思い込んでました。ところが見た目は煮汁に色素が溶け出しているようでも、量的にはわずかで、大部分はイモに残っているとのこと。
 野菜の調理という身近な現象でも、なかなか頭で考えるようにはなっていないようです。常に物事に疑問に思い、手を動かして実験(調査)してみることが必要なんでしょう。

ナスのおいしさに関係する成分

2009-08-23 12:42:19 | Weblog
 テレビ番組関係の方から、ナスのおいしさに関係する成分についてお問い合わせいただきました。途中来客のため、十分な返答ができませんでした。もしこのブログを読まれていたら、お詫びするとともに、話の補足お願いします。
 お問い合わせいただく内容のほとんどは「化学成分」についてです。結論を申しますが、ナス特有の旨味成分はみつかっておりません。むしろナスは特有のスポンジ状の構造により、油でも、だしでも、吸い込むところに特徴があるものと考えます。また、加熱することにより、とろりとする独特の食感も重要でしょう。
 野菜のおいしさに関しては、多くの場合食感の関与が重要だと思います。
 しいて、特徴的な成分というとクロロゲン酸でしょうか?ポリフェノールの仲間で、渋味成分とされています。また切って放置すると褐変しますが、これもクロロゲン酸の酸化が関係していると思われます。品種によってクロロゲン酸の量は大きく異なりますが、お世辞にも旨味成分とはいいがたいと思います。
 また、ナスニンという色素成分についても研究が進んでいます。皮の紫色の成分ですが、抗酸化能が高いとされます。ただ、「ナスニン」を強調しすぎると、「ガン予防のために(相対的に皮の多い)小さめのナスを生で食べよう」などと食文化を無視したような発言を、マスコミ相手になさるセンセイ方が出てこられるかもしれませんので要注意です。
 秋ナスを嫁に食わせない理由について、ある先生は「ナスには興奮作用のあるコリンが含まれるので、嫁さんが食べ過ぎると、夜興奮して、(翌日仕事にならない)。」と書かれています。ナスに含まれるコリン含量について文献を調べていますが、未だみつかりません。ナス=eggplant、タマゴにコリンが含まれるのなら、eggplantにも含まれるだろうという思い込みではないかと推測しています。
 

エダマメやトウモロコシのおいしさを数値化する方法

2009-08-09 14:21:36 | Weblog
 夏休みに入りました。自由研究の課題について、質問がありました。家庭菜園で作ったエダマメやトウモロコシは店で買ったものよりおいしい。これを自由研究らしく、数値にあらわせないかというものです。
 小学生にも簡単に測れるようなそんな方法があったとしたら、私たちオマンマの食い上げですと回答したいと思います。テレビ番組などでは、よく糖度計を使っていますが、糖度計の数値が甘さと関係するものとしないものがあります。最も糖度計の計測値の高い野菜は、メロンやイチゴではなく、ニンニクです。小学校の先生は、数万円もする糖度計を使って数値を出せば、ほめてくれるかもしれませんが、一夏の自由研究のために使えるかどうかわからぬものに数万円の出費は痛すぎます。
 ここは官能評価しかありません。家庭菜園のものと店で買ったものについて、同じ時間ゆでて、できるだけ多くの人に食べてもらい、どっちがおいしいか言ってもらうことです。「ためしてガッテン」などでよくやっている方法です。
 その結果、もし家庭菜園のものがおいしいという結果が出たら、店で売っているものについて、どういう流通をしているか、八百屋さんなどで調べてみればよいのではないでしょうか?なぜ、おいしさが違うのか、ヒントが隠されていそうです。
 学校の先生方、分析キットなどを使ってきれいに数値をまとめるだけが質の高い自由研究ではありません。官能評価だって、立派な学問ですし、「おいしさ」を比べられるのは機械ではなく、ヒトです。

野菜は毒?

2009-08-02 09:20:19 | Weblog
 「ゲッチュ先生の野菜探訪記(木魂社)」という本を読みました。動物のように動けない植物は、ケミカルディフェンスといって化学物質を体内にため込んで、これを武器に摂食から逃れようとしているということを、野菜にもあてはめておもしろく解説されています。ワサビをテントウムシの背中に塗ったら死ぬ、アブラナ科野菜のS-メチルシステインスルホキシドでウシが溶血性貧血を起こす、タマネギでイヌが溶血性貧血を起こすなど例示して、こういったものを平気で食べられる人間こそが「変態」とのこと。
 こうした有毒成分としてワサビの場合はイソチオシアネートが知られています。S-メチルシステインスルホキシドは、ニラのニオイのもとですし、タマネギの溶血成分は、イソアリルシステインスルホキシドでしょう。こうした成分は、このブログでよく紹介するような「***事典」の類の本では、これらの野菜の「健康成分」として大々的に宣伝されています。
 神様が今の形で野菜なり作物なりをお与えくださったのではなく、先人達が、それこそ命をかけて食べられる食材を探し、これをより食べやすく改良した姿が現在の野菜であり、コメであり、ダイズでしょう。これらの植物にとっても、動物や微生物にやられることなく、子孫を残すことが最大の目的であったはずです。野菜や他の作物にも、本来はケミカルディフェンスが備わっていたはずです。こうしたケミカルディフェンスに関わる成分は、動物にもいやがられるように、苦味や辛味を示す場合が多く、これらの成分を減らす方向で野菜が代々改良されてきました。
 ケミカルディフェンスの弱くなった植物を育てるためには、ある程度、人が管理してやらねばなりません。農薬の使用も必要な管理のひとつだと思います。
 また、ある本には「家庭菜園で無農薬栽培したトマトの葉はサラダによい」と書かれています。ケミカルディフェンスが弱くなったといっても、元々の植物の性質は引き継いでいます。トマトはジャガイモ同様、人にも有毒なアルカロイドを生産します。熟した果実にはほとんど含まれませんが、葉や未熟果実は危険です。ゲッチュ先生の本にも、キャッサバをきちんと毒抜きせずに食べる危険が書かれています。自然とのつきあいの中で、健康をできるだけ害さないような食べ方を考案してきたのが、現在の料理のはずです。フロンティアスピリットから、野菜の捨てていたような部位の料理や新しい食べ方に挑むのはご自由ですが、遺書を書いてからにした方がよさそうです。
 野菜は本来毒である。こういった考えをベースにもてば、行き過ぎた食についての見方も変わるのではないかと期待します。