野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

とろろソバで持久力アップ?

2010-06-13 10:11:28 | Weblog
 登山の際の名物食品として、TV番組で「とろろソバ」が紹介されてました。普通のソバと比べて、とろろソバでは血糖値の上昇が緩やかで、その後の血糖の低下も緩やかなので、スタミナが維持できるとの説明でした。
 ちょっと待ってください。とろろソバに使うヤマイモについて、アミラーゼという消化酵素を含み、消化を助けると多くの本に書かれています。ソバもヤマイモもデンプンを含みます。アミラーゼが作用するのなら、デンプンの分解、吸収がよくなって、血糖は急激に上昇するのでは?
 ヤマイモのアミラーゼ活性について資料は持っておりませんが、ヤマイモをすり下ろすと、直ちにデンプンが消失するほど高い活性ではないと推測されます。また、熱いソバの上に「とろろ」がかけられるので、ソバのデンプンを分解する前に酵素は失活するでしょう。
 となると、アミラーゼ以外の健康成分が血糖調整に関係している?以前書いたジオスゲニン?いやいや、日本のヤマイモにはジオスゲニンはほとんど含まれません。
 ネット上では、ヤマイモはネバネバ成分の作用により血糖値を抑える食材とされるようです。研究データとしては北海道農業研究センターが「ナガイモ粉末を与えるとラットの血糖値上昇が抑制された」と報告しています。ただ与えた量が、乾燥粉末でエサの10%以上という多量の場合です。ヒトの場合にどの程度ヤマイモ(あるいはナガイモ)を食べれば、血糖上昇が抑制されるのか知りたいところです。(番組では、「ソバ」と「とろろソバ」の間で明らかな差が出ていましたが、もっと厳密な試験をすればおもしろいと思います。)加熱したナガイモでも効果は期待できるようですので、本当にネバネバ成分が有効なのか、ぜひ血糖上昇抑制成分を明らかにしてほしいものです。

トマトでお肉が柔らかくなる(その2)

2010-06-06 13:03:53 | Weblog
 先週(5月31日)、「トマトで煮込むとお肉が柔らかくなるのは、トマトに含まれるクエン酸の影響であろう」と考察しました。これに対して、岡山大学のHPをご紹介いただきました。マリネード処理すると肉が膨潤し、軟らかくなるそうです。マリネードは酸性であり、酸性条件では、プラスイオンの反発作用により肉の線維の間が押し広げられ、保水する能力が高まると説明されています。先週は、他の野菜と比べてトマトに多く含まれる成分からクエン酸の影響だろうと考えましたが、実は、トマトは野菜の中でも酸味の強い野菜です。pHは4.5以下でしょうか。煮込んで濃縮すればpHはさらに低下するはずです。なるほど、トマト煮込みはマリネードと同じ効果(酸の影響)により肉を軟らかくすると考えれば、話は通りそうです。
 タンパク質とpHの関係で、学生時代の実験を思い出しました。当時タンパク質化学の研究室に所属し、タンパク質を溶かしている水のpHを変化させれば、タンパク質を構成するアスパラギン酸やグルタミン酸などの解離基でプロトンがついたり離れたりし、そのことによって、解離基周辺の環境が変わるということを実験しておりました。当時は酵素と基質の結合として解析してましたが、確かにタンパク質の分子間あるいは分子内でも起こるはずです。改めて、調理学のベースには、化学、生物学があることを感じた次第です。