野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

曲がったキュウリはおいしいか?

2008-08-31 13:38:04 | Weblog
 あるテレビ局の方から、「曲がったキュウリなど野菜の規格外品が多くでており、市場流通できないので、非常にもったいない。曲がったキュウリもまっすぐなものと同じようにおいしいことを示すことはできるか?」という質問をいただきました。別の番組で野菜の先生が「キュウリは曲がっていても、上から下まで太さが同じであれば、おいしい。」と述べられたことを受けての質問のようでした。
 野菜園芸大百科にも書かれていますが、お尻の太ったもの、逆にお尻の細くなったものなどは、樹の状態の悪い時に発生しやすいため、こういったキュウリは生で食べたときおいしくないであろうとは想像できますし、経験的にもそう思います。また、別の番組で、キュウリを容器に閉じこめて、例えば星形の果実を作る実験をしていました。力が加われば、キュウリの果実の形は容易に変わります。したがって、果実が他のものに触れるだけで、曲がることもあります。こういった原因で曲がった果実は、それほど味の面で悪くはないと推測できます。従って、「太さが均一なら曲がっていてもよい」という考えも、正しい部分はあろうかと思います。
 いっぽうで、同書にも「株が若く草勢がよい収穫初めの時期には(曲がり果の)発生が少ない。」と書かれています。すなわち、樹が元気な時には、曲がったり、先の形が変な果実はできにくいので、まっすぐな果実を高品質として選ぶのには理があるものと考えます。
 曲がったキュウリがもったいないというとき、どういう用途に使えるかをまず考える必要があろうかと思います。味がどうであれ、曲がっているとカッパ巻きには使えません。漬物などの加工業者も機械が使いづらいため、嫌がるかもしれません。家庭の主婦の立場でも、サラダにする時には切りづらいのではないでしょうか。
 ユーザーの立場を考えずに、単に成分Aについては「まっすぐなものと、曲がったものと差がありません」と言っても仕方ないように思えます。それ以前に、曲がるには曲がるなりの原因があります。その原因を無視して、曲がったキュウリでひとくくりにして、品質に関して議論することは難しいものと考えます。
 とはいえ、「資源を大切に」という社会です。曲がったキュウリをおいしく食べる工夫ができるのは一般家庭だと思います。曲がった安いキュウリとまっすぐで高級感のあるキュウリをうまく選択できればよいのかもしれません。

クイズ番組の問題

2008-08-23 15:02:23 | Weblog
 最近、テレビのクイズ番組の製作会社からの問いあわせが多くなりました。担当の方が作った問題に対する解答について、専門家としてオーソライズしてほしいという主旨かと思いますが、○×で答えられないような問題が多くて困ります。具体的に書くと番組製作の妨害になりますので書けませんが、よくある問題は、「野菜AとBとはどちらがおいしいか?」というようなものです。一般向けの本には「Aの方がおいしい」と書いてあるのは知っておりますが、それほど単純化できない場合もあります。まず、「おいしい」とは主観の問題です。どちらが甘いか辛いかなら、客観化できますが、「おいしさ」については食べた人がおいしいと思えばおいしいと認めざるをえません。また野菜については一般に調理して食べる場合が多いです。例えばやわらかい春キャベツは、生でサラダで食べるとおいしいです(私の主観であり、一般にもいわれていること)。しかしながら、お好み焼きに使うと水っぽくなって、食べられたものではありません。春キャベツが寒玉キャベツ(普通のかたいキャベツ)よりおいしいという場合、「サラダとして食べる場合」に限定する必要があります。どのようにして食べるかというところを無視して、「春キャベツは寒玉キャベツよりおいしいか」というクイズ問題が出される傾向にありますが、きちんと条件をつけて設問する必要があります。また、できれば「おいしいか」という主観の入る設問ではなく、「甘いか」「辛いか」「硬いか」など客観的に判断できる問題設定をお願いしたいものです。
 「++は**に効く」など単純化した報道は一般受けしますが、本来は「%%という条件で行った実験では!!という結果がでたので、将来的には、$$には##予防効果があると認められる可能性があります。」程度に述べるべきで、クイズ番組でも、漢字や計算問題など明らかに正解がある場合を除き、その設問の仕方には注意を払うべきだと考えます。

トマトのおいしさ基準

2008-08-13 18:35:14 | Weblog
 テレビ局の方から、トマトのおいしさの基準についてご相談いただきました。ある地域のトマトがおいしいことを数値で示したいようです。とはいえ、お上の定めたおいしさ基準などはありません。
 一般的には、果汁をとって糖度、滴定酸度を測定します。糖度とは屈折計示度のことで、どれだけ濃いかを示します。糖度が高いものは糖(果糖、ブドウ糖、ショ糖)の含量が高く、甘い傾向があります。滴定酸度とは、果汁にアルカリ性の溶液を加えて中和するまでのアルカリの量を示します。滴定酸度の高いものは、酸性の物質(主にクエン酸)が多く酸っぱい傾向があります。
 そこで「糖度」を「滴定酸度」で割った値を「糖酸比」とよび、糖酸比が高いほど、酸味より甘味が強く甘く感じることになります。糖度と糖酸比が、トマトの品質上重要とされ、一般には高い値が望まれます。
 ところが、トマトって、甘いだけでよいのでしょうか?酸味も重要でしょっ、甘すぎるのも長続きしないって考えると、どういうトマトがおいしいのか???
 おいしいとされるトマトを食べてみて、そのおいしさを表現するのは何なのか考える必要があります。またトマトのおししさはトマトジュースのおいしさとは異なります。どういう食感なのかも重要です。例えば、調理用のトマト。生で食べると全然おいしくありません。食感が悪いからです。
 あるトマトがおいしいという場合、どういったセールスポイントなのか提示していただかないと、他のトマトとの違いを表現するポイントは見つかりませんというのが回答でした。
 
 

キュウリの青臭さが心筋梗塞を予防する?

2008-08-10 12:37:59 | Weblog
 昨日、テレビで夏野菜が紹介されていました。様々なトマトなど目を楽しませてくれます。
 その中で講師の先生は「キュウリの青臭さが血液をサラサラにして、心筋梗塞を予防する」と述べられました。何度もこのブログに書きましたように、何の根拠もない都市伝説のひとつです。もし、キュウリの青臭さが血液をサラサラにするのなら、キュウリをカットしている工場の方は、軽い切り傷でも血が止まらなくなるはずですが、そのような事例は聞いたことがありません。
 ピラジン類の化合物は、血小板凝固を抑制する(事実)。ピーマンの独特の香りにはピラジン類が寄与する(事実)。ただし、ピーマンを食べたら血液がサラサラになるという実験データは見たことがありません。さらに飛躍して、キュウリは青臭い香りがする(事実)。青臭い香りはピラジンである(間違い)。キュウリの青臭い香り成分(ピラジン)が血液をサラサラにする(都市伝説の世界)。
 それでは、夏にキュウリを食べても意味がないのかということになりますが、そんなことはありません。番組でも述べていたようにキュウリは95%が水です。糖分は2%程度です。番組でやっていたように冷やしたものを2本も食べると、のどの渇きをいやすことができます。一方で、コーラの糖分は10%以上です。350mlの一缶にもれなく糖が30g以上入っていることになります(ダイエットコークは除く)。キュウリなら糖4g、コーラなら糖30gでいやされると考えれば、どちらの方が血糖値の上昇を抑えられるか明らかです。
 日本人はキュウリをよく食べる民族です。キュウリのさわやかな青臭みと歯ごたえは、蒸し暑い夏を乗り切る活力になっているものと考えます。


夏休みの自由研究

2008-08-03 14:44:55 | Weblog
 夏休みの自由研究のネタ探しのためにネットを利用する方も多いようですので、例えば野菜を使ってどんなことができるか考えてみましょう。
 測定機器がない場合、一番わかりやすいのは色ですかねー。例えば、いろいろな色の野菜ジュースが売られてますが、色素のなかにも水に溶けやすいものと、溶けにくいものがあります。ナスなどもおもしろいですね。皮の紫は水に溶けますか?お酢や重曹を加えて、pH(酸・アルカリ)を変えてみたらどうでしょう。切り口は、すぐに褐色になります。この色の変化はどうやったら止めることができるでしょうか?ゴボウのアク抜きはどうやりますか?アク抜きしないと色はどうなりますか?
 トマトジュースは赤い色ですね。家庭のジューサーでトマトジュースをつくって、コーヒーのフィルターで濾してみましょう。濾した液は何色でしょうか?
 少しお金はかかりますが、硝酸試験紙というものがネット販売されています。植物は主に硝酸のかたちで窒素肥料を吸います。植物によっては、硝酸のままの形で体内に蓄えるものも、違う形で蓄えるものもあります。また、植物の場所によっても、硝酸の量は違います。水を加えてすりつぶせば、試験紙で簡単に硝酸の量を求められます。注意点としては、水道の水やミネラルウオーターにも硝酸は含まれます。使う水としては、薬局で「精製水」を買ってください。
 野菜って身近にあるので、何でもわかっているように思いがちですが、実は、わからないこともたくさんあります。新しい発見を期待しています。