野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

ホウレンソウのえぐみは鰹節で防げるか

2007-12-12 07:43:32 | Weblog
 最近出版された本には、「ホウレンソウ農家の人はさっと茹でるだけのホウレンソウを食べているのに、えぐみを感じない。その原因はおひたしにかける鰹節のカルシウムにある。」と述べられています。
 ホウレンソウのえぐみはシュウ酸によるものとされます。口に入れると、唾液中のカルシウムと、ホウレンソウのシュウ酸が結合して、不溶性のシュウ酸カルシウムとなり、これが口の中を刺激するのが「えぐみ」だと考えています。この本にあるように、ホウレンソウを牛乳やカルシウムをたっぷり含んだミネラル水でジュースにすると、ホウレンソウ中のシュウ酸は、口に入る前に、シュウ酸カルシウムとして大きな結晶(えぐみなし)を作ってしまうので、えぐくありません。フリーのシュウ酸が口に入れば、刺激性のシュウ酸カルシウムが生成するので、あらかじめカルシウムを加えて、フリーのシュウ酸を減らそうという作戦です。量的に考察すれば、例えば、ホウレンソウ100gを牛乳1000mlと混ぜてジュースを作るとすれば、ホウレンソウ中のシュウ酸は約0.5%なので500mg、いっぽうで牛乳中にはカルシウムが0.1%程度含まれるので、約1000mgになります。カルシウムの方が過剰となるので、ホウレンソウから溶出したシュウ酸の大部分はシュウ酸カルシウムの形になっているものと考えられます。
 一方で、鰹節の場合はどうでしょう。ホウレンソウ100gに鰹節5gかけるとすれば、鰹節中のカルシウムはわずか2mgです。口の中での各成分の溶出なども考慮する必要はありますが、シュウ酸500mgに対して、カルシウム2mgではあまりにも旗色が悪すぎます。鰹節のカルシウムは関係ないと考えます。
 おひたしの場合、ダシや醤油を使います。これらの中に含まれる有機酸などが、口の中でのシュウ酸カルシウムの生成を抑えるため、えぐみが弱いものと考えています。

 

発掘あるある大事典第1巻

2007-12-08 13:10:46 | Weblog
 1997年12月10日、すなわち10年前に「発掘!あるある大事典」が出版されています。内容についても、よく調べて書かれております。まさにいまはやりの食育の教科書にぴったりの内容です。どうしてこんなにまじめな番組が、10年後には捏造にまで発展したのかと考えさせられます。
 最初の方は、やや専門的な本の記載を素人向けにやさしく説明するだけで番組も成立したと思われます。しかしながら、それなりに視聴率がとれてくればやめるわけにもいかず、また視聴者からはもっと新しくインパクトのある内容を期待されるため、素人である制作スタッフが、ちょっとした科学的知見に対して想像力で味付けして放送して受けをねらうようになったのかもしれません。捏造の背景には、新しもの好きで、フードファディズムのとりこになった視聴者がいるように思われます。
 ところで、その後の番組の暴走を予見させるような記述は「お茶」のページにありました。本の中で、緑茶はビタミンACEを含むと大々的に宣伝し、ビタミンCはレモンの4倍、ホウレンソウの3倍含まれると書かれています。ホウレンソウやレモンは生でそのまま食べることがありますが、お茶はお湯で入れて飲むものです。茶葉中のビタミンC量をレモンやホウレンソウと比較することは、無意味です。またビタミンAやEについては脂溶性の成分であるため、普通にお茶を飲んでも摂取できません。にもかかわらず、ビタミンAやEの効能を述べるのは完全に場違いです。

ダイコン(目がテン)

2007-12-02 13:37:57 | Weblog
 12月2日、「目がテン」についての感想です。いつもきちんと取材されていると思います。(トマトの回では別のHPで文句をつけましたが)
 今回の「ダイコン」もためになる内容だったと思います。グルコシノレートから辛味成分のイソチオシアネートができるところなど、わかりやすい絵であったという印象です。
 1点疑問に思ったのは、重機でつぶしたダイコンおろしと、料亭の名人がおろしたダイコンおろしについて、辛味成分を比較していたところです。画面で見るかぎり、実験室内の高速液体クロマトグラフィーでイソチオシアネートを分析していたようです。番組中でも、「ダイコンの辛味成分は揮発しやすい」と語られてましたが、実際にその通りです。辛味を比較しようとダイコンおろしを運んでも、実験室についたころには、辛味成分の多くは失われているはずです。実際に、こういった比較をするのは大変難しいはずです。ダイコンの辛味を現場で測定できる方法があればよいのですが、そのような方法は今のところ開発されておりません。
 番組構成上の演出と目くじらをたてる必要はないのかもしれませんが、この番組を見た他の制作会社の方が、ダイコンの辛味は簡単に測れると誤解されないことを期待します。