野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

タマネギの硫化アリル

2009-04-12 13:29:40 | Weblog
 書籍やネットで調べるとタマネギの健康成分として必ず硫化アリルあるいはアリシンが紹介されています。このブログで何度もおかしいとうったえて参りました。今日は最近の文献を紹介させていただきます。 
 Kubek et al. (2008) J. Chromatogr. A, 1212, 154-157, この文献では新しい分析法を開発し、ニンニクやタマネギの R-cysteine sulphoxide を調べています。ニンニクでは、Rの部分がアリル基であるアリルシステインスルホキシド(アリイン)が主と書かれています。アリルシステインスルホキシドに酵素が働いて、アリシンを生成します。アリシンはアリルシステインスルホキシド2分子からなりますので、アリル基を2つ持ちます。イオウも含みますので、これを硫化アリルと呼ぶのならまあよいと思います。
 この文献では、タマネギにはアリルシステインスルホキシドは含まれないことになっています。タマネギでは主にイソアリル基(アリル基ではない)を持つイソアリインですので、これを元にアリシンを生成するのは難しいはずです。
 これは外国の話であって、日本のタマネギは違うんだという議論の余地も残されます。この春、園芸学会があり、北大のグループから、R-cystein sulphoxideの組成比較が発表されています。ニラはRがメチルのメチイン、ニンニクはアリインが主で、タマネギ、ネギはイソアリインが主とのことです。
 この結果をみても、ニンニクにはアリル基のあるイオウ化合物は含まれますが、タマネギ、ネギ、ニラではアリル基を持つイオウ化合物はほとんどみられません。従って、硫化アリルと呼べるのは、ニンニクの場合のみであって、タマネギ、ニラ、ネギについても硫化アリルあるいはアリシンと記載されておれば、内容は眉唾ものと思った方がよいのかもしれません。



野菜でダイエット

2009-04-02 06:39:18 | Weblog
 テレビ番組の担当者から、野菜のイノシトール含量を知りたいと問いあわせがありました。聞いてみると、ある野菜(ごく普通に食べているもの、番組の種明かしになると申し訳ないので野菜名は書きません)を食べてダイエットする番組を企画したいとのこと。イノシトールがダイエットに効くので、野菜を食べると痩せられるというストーリーをつくるには、その野菜のイノシトール含量が必要なようです。
 そもそもイノシトールがダイエットに有効であるという科学的根拠はあるのでしょうか?少なくとも国立健康・栄養研究所のデータベースにはダイエットに関係するような効能は書かれておりません。仮にその野菜がイノシトールを含み、イノシトールに「ダイエット効果」があったとしても、野菜そのものは糖やアミノ酸を含むためノンカロリーではありません。食品には多様な成分が含まれますので、単一の成分だけとりだして、その効能を強調しすぎるのは危険だと思います。
 上記のようなことをお伝えした上で、そのダイエット法について誰か専門家が唱えている方法かとお聞きしたところ、番組担当者がネット情報に基づき考えたオリジナルとのこと。もし番組が成立したら医学知識や食品知識のない素人の方のアイデアに基づき、タレントが危険な人体実験させられ、これを受けて、多くの視聴者が真似て事故を起こしかねない怖さを感じました。
 先日も「キャベツダイエット」を放送していましたが、食前にキャベツを食べて満腹感を得ること、生活習慣を正すことが重点のようでした。キャベツダイエットといわれると、気象の影響でキャベツがなくなるとパニックになりがちです。基本がわかっておれば、低カロリーの旬の野菜を食べればよいことに気づくはずです。むしろ栄養のバランスを考えれば、いろんな野菜を食べていただく方がよいのではないかと思います。