野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

冷え性によいショウガ紅茶の作り方

2009-11-22 11:53:46 | Weblog
このブログの読者の方から、ショウガ紅茶について質問を受けました。紅茶については多少の知識はありますが、ショウガも野菜だろといわれれば、その通りですが、「薬効」となると薬学の中でも生薬学の守備範囲ですので・・・。
野菜売り場に並んでいるショウガも、古くから生薬(漢方薬)に用いられてきました。その有効な摂取方法は、有効成分が解明されていない時代から、試行錯誤のなかで考えられてきたはずですから、「効能」を期待するなら、漢方医に相談するのが正しいかと思います。
ただこの忙しい時代です。「ショウガを煮出した汁を冷蔵庫で保存しておき、飲む前に紅茶に混ぜるのはどうか」という質問内容でした。ショウガの有効成分はジンゲロールとその分解物であるショウガオールとされています。J. Pharmaceutical Sciences 90, 1958 (2001)(薬学系の雑誌なので普段は読まない)について、JSTの日本語で書かれた要約だけみて、「ショウガオールもジンゲロールも熱水中で不安定なので煮出しには向かないのではないか」と回答いたしました。論文を取り寄せて図表をみると、確かに熱水中でジンゲロールが低下していますが、横軸の時間が通常調理でみる「分」ではなく、「時間」になっています。すなわち、ジンゲロールは、長時間煮ると分解するかもしれませんが、「普通に煮るくらいならほとんど壊れない」というのが正しいようです。ショウガオールについても同様。
すなわち、ショウガの煮汁を冷蔵庫で短期間保存するというのは、能率よくジンゲロール、ショウガオールを摂取するにはよい方法かと思われます。

怪しい情報をいかに見分けるか?

2009-11-01 07:54:38 | Weblog
 これまで個別の野菜などを中心に、怪しい情報を取り上げてきました。それではネットや本を読んでいるときに、「自分で健康情報の確からしさを見分けるにはどうすればよいか?」という質問をいただきました。考え方を整理させていただきます。
1.キュウリの「ククルアスコルビン酸」、レタスの「ラクッコピコリン」、スイカの「シスペイン」など、そもそも学術用語として使われていないものの場合:科学技術振興機構がJDREAMという日本語の文献検索サイトを運営しています。会費は月500円ですが、お試し利用も可能です。そのサイトでキーワードに「ククルアスコルビン酸」、「ラクッコピコリン」、「シスペイン」などと入力していただければ、関係する文献が「0」と表示されるはずです。タマネギの「グルコキニン」についても、このグループに含まれるでしょう。「学術的に見える言葉」を使って記載されているサイトであっても、その学術用語自体が「架空」のものであれば、書かれている内容についての信頼度は低いと評価できます。
2.JDREAMのキーワード検索で、関連する文献がみつかる場合:架空の物質ではないので、さらに詳しく調べることは容易です。例えば、キュウリの「イソクエルシトリン」の場合、「イソクエルシトリン」だけなら文献はみつかりますが、その中で「キュウリ」に関するものはないはずです。あるいは、googleなどを用いて英語で、isoquercitrine * cucumber で検索して目的とするような内容がみつかるか、確認すればよいかと思います。イソクエルシトリンのつづりは、先のJDREAMで検索された文献のタイトルやキーワードをみれば、正しい綴りがわかります。このように、物質名は正しくとも、問題とする野菜に結びつかないようなものとしては、他にナスの「コリン」や「ルチン」、キュウリの「ピラジン」などがあげられます。
 以上2点に注意すれば、誤った情報の拡散が少しは抑制されるのではないかと期待しております。その野菜に該当する物質がどの程度の量含まれるのか?動物試験などで確認されているのか等も調べる必要はありますが、上記1&2に比べれば、かなり難しくなります。