野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

トマトでお肉が柔らかくなる?

2010-05-31 17:26:33 | Weblog
 テレビ番組の制作担当者の方から,「トマトでお肉が柔らかくなるのは何故か?」という質問を受けました.キュウイやパイナップルなどタンパク質分解酵素を含むフルーツを,生肉の上にのせると,酵素の作用で肉のタンパク質が一部分解され,柔らかくなるという話は聞きます.しなしながら,トマトに強いタンパク質分解酵素活性があるという話は聞きませんし,肉にジュース様のトマトをかけて煮込んだら柔らかくなったということですので,仮に酵素があったとしても熱変成するため十分には作用できません.お手上げです.
 トマトと他の野菜の大きな違いは,クエン酸を含む点かと思います.クエン酸というとキレート作用が強く・・・,カルシウムは・・・と考えておりました.すき焼きの肉の近くにコンニャクを置くと,肉が硬くなるといわれます.コンニャクに含まれていたカルシウムが肉の硬化を促進するのだと説明されます.トマトジュースをかけると・・・,クエン酸は豊富です.クエン酸が肉や他の食材由来のカルシウムに働きかけ,配位結合することによって,肉を硬くするフリーのカルシウムイオンを減らす効果は期待できないでしょうか?
 きわめて自信のない理屈付けです.「お手上げです」以前の部分を番組制作会社の方にはお伝えしました.本当にトマトで肉料理が柔らかくなる事例があるのか,経験された方は,コメントいただけると有り難いです.

 

ヤマイモのジオスゲニン

2010-05-15 14:42:51 | Weblog
 5月3日にネバネバ食材と関連してヤマノイモのジオスゲニンについて触れました。後に調べてみると、ヤムというヤマノイモなどを含む植物の中には、ジオスゲニンを抽出して薬用として利用するのに有用なものがあるようです。
 有用物質が野菜の中に含まれるとすれば、いつも食卓に並ぶものにはどの程度含まれるか気になるところです。2006年に印刷されたドイツの文献に、葉中のジオスゲニンが比較されています。ヤマイモと呼ばれる日本のものでは、非常に含量が低いようです。また、ジオスゲニンを含むエキスを販売しているメーカー(酒で有名)のHPによると、沖縄の特殊なヤムイモにはジオスゲニンは含まれるが、国内で普通に食べるヤマイモ、ナガイモなどには、ジオスゲニンは微量しか含まれないようです。
 ネバネバ食材の効能として、番組ではジオスゲニンを紹介していましたが、沖縄の特殊なヤムイモを入手しないかぎり、期待薄ということでしょうか。

伊勢の和紅茶

2010-05-09 08:35:36 | Weblog
 「伊勢の和紅茶」なるものがローカルスーパーで販売されています。ティーバッグ20袋で380円(1杯20円弱)と国産紅茶としては非常にリーズナブルな価格だと思います。緑茶用品種を使用しているためか、紅茶のイメージからすれば水色は薄め、苦渋味も薄めです。同じように水色、渋味の薄いダージリンに比べれば、華やかな香りのトップノートは少なく、中国紅茶に近い印象を受けました。宣伝用パンフレットに書かれているように、砂糖なしで飲め、多様な紅茶のなかでも独特の香味特性を保っているものと思います。
 ただよくわかなないのが「熟成するとより深みと紅茶の香りが増します」と書かれたパンフレットの言葉の意味です。昔、江戸の将軍に献上するために茶壺に詰めた新茶を、変質しないように、保存したと聞きます。こういったお茶は熟成して、新茶とは違った味わいがあるそうですが、パンフレットに書かれた紅茶の熟成とは?購入した消費者に対して、「すぐに飲まずにそのままどこかで保管してほしい」といいたいのか、「春高く売れる一番茶は緑茶として売り、夏の時期のタンニンの多い(熟成された?)茶葉を紅茶に加工しました」といいたいのか、一消費者として迷います。パッケージやパンフレットのデザインはすばらしいので、パンフレットに書かれた内容をよく精査されれば、非常におもしろい商品だと感じ、実際に県外へのおみやげとして重宝しています(安いから!)。

おいしいお茶が飲める急須を

2010-05-09 07:52:39 | Weblog
 すでに八十八夜も過ぎ、例年なら大型スーパーなどで新茶セールなどの看板が目立つところですが、今年はあまりにも静かに感じます。景気の低迷にともない、100g、1000円の緑茶などとても買えないというのか、あるいは4月の寒さのために収穫が遅れているのか?他の農産物については季節感がなくなっている中で、「食は太陽の恵みを受けている」と感じられる数少ないアイテムだけに、新茶セールだけはがんばって続けて欲しいものだと願っております。
 本題ですが、職場の急須が壊れたので大型スーパーに急須を買いに参りました(一応茶の生産県のはずですが、茶専門店というのがほとんどありません)。価格はお手頃で、形やデザインは多様ですが、1000円の緑茶を買ってきても、そのおいしさを職場で引き出すには不満足な品ばかりです。網かごのような部分に茶葉を入れて、これにポットから熱湯をかけるスタイルの急須ばかり(茶葉の廃棄には便利だと思います)で、よくもめた新茶をこのような方法で入れたら、単なる色の薄いだし汁になってしまいます。新聞記事で紅茶のジャンピングの話が出ていましたが、お茶を入れるうえで重要なのは、茶葉内の成分をお湯の中に抽出する具合をコントロールすることです。そのために、最近は適切な湯の温度などがパッケージにも記載されています。網かごの中で「おしくらまんじゅう」されている茶葉は、たとえ十分に時間をかけても開かず、抽出効率は低いものと想像します。また、網と急須の形の合致していないものも多く、湯量を減らすと茶葉が十分に浸漬しないものも多く見られました。
 安いものを買う(その結果まずい茶を飲む)のがエコではなく、そこにあるお茶のおいしさを十分に引き出せる茶器を使う方がのがエコではないかと考えます。そうすれば、ペットボトル等の購入機会も減り、よりエコロジーでエコノミーな生活につながりそうに思えるのですが。ぜひ、おいしいお茶がいれられる茶器を簡単に買えるようにして欲しいものです。

ネバネバは体に効く?

2010-05-03 07:37:52 | Weblog
 観音様を間近で拝めるとのことで、奈良の長谷寺に行って参りました。ボタン寺として有名なお寺です。園芸屋の端くれではありますが、人の目に見て奇をてらったものを尊重するお花の世界には興味ありませんでした。ボタンというと彫り物のデザインくらいにしか思わなかったのですが、赤から青まで色も形も様々で、観音様を彫り上げた仏師も想像できなかったような彩色の極楽浄土がそこに再現されていたように感じました。またそれぞれの遺伝子の発現が、花の色や形に表現されているとすれば、現代科学にとっても興味深い材料になりそうです。
 前置きはこの程度にして、「ネバネバ食材」に関するテレビ番組が放送されました。ネバネバが体によいと伝える目的で制作されたものと思いますが、残念ながら担当者のお考えになったほど科学は発達していなかったようです。
 ネバネバ食材としてヤマノイモが紹介されていました。視聴者からすればネバネバ成分の話を期待しているはずですが、話は突然ジオスゲニンの効能に飛びました。ジオスゲニンは、女性ホルモンの前駆物質だそうです。日本のヤマノイモで分析した文献を知りませんが、ステロイドサポニンとして含まれ、加水分解等によりジオスゲニンを生成するのではないかと想像します。ステロイド、あるいはステロイドサポニンであるとすれば、ネバネバとは直接関係ないように思えます。
 次に、オクラ。ビタミンB1が紹介されてました。サポニンであれば泡立ち等との関係で、食感に多少の影響があるかもしれませんが、水溶性のビタミンの場合は、ネバネバどころか、その他の食感にもほとんど影響しないでしょう。ネバネバとは全く無関係です。
 最後に出てきたウナギについては、全くネバネバ食材のイメージとはかけ離れています。
 取材した結果、ネバネバに関する情報が得られなかったので、文化祭ネタの「箱の中身あて」でお茶を濁したというのが実態かもしれません。ネバネバというと高分子を想像します。ジオスゲニンやビタミンB1のような比較的小さな分子と異なり、ネバネバのような複雑にからまったものを再現性よく扱うのは難しく、「ネバネバが体によい」と期待されるようなデータを得るのは技術的に大変かと考えます。