野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

タケノコは焼くが、キャベツは焼いちゃダメ?

2011-06-26 08:12:07 | Weblog
 あるテレビ番組で野菜や果物を焼いて食ることが紹介されてました。多くの野菜・果物については焼くことの効能を述べてましたが、唯一キャベツだけは焼いてはダメだと説明されておりました。「キャベツには胃を守る作用のあるビタミンU(メチルメチオニンスルホニウム)が含まれる。焼くとこれが分解される」との説明でした。確かに、このブログでよく批判している「***栄養学」のたぐいの本には、「ビタミンUは生のキャベツから摂取するのがよい」と書かれています。ところが、私の調べた範囲では、加熱調理するとどの程度含量が低下するか示した文献は見あたりません。「***栄養学」のたぐいの本には、ビタミンCに関しては、「加熱すると減少するが、加熱した方が多く摂取できるので、加熱した野菜を食べよう」と書かれています。ビタミンUはビタミンCと比べて著しく不安定なのか???。もう少し、根拠を調べる必要がありそうです。ただ、キャベツに含まれるのは、ビタミンUだけではなく、食物繊維や、ビタミンCなども含まれます。焼いたキャベツでも、おいしく食べられればそれでよいと思いました。
 いっぽう、タケノコは茹でるのではなくて、焼くのがよいそうです。タケノコに含まれるチロシンが茹でると流出するためとか。料理の本には、アク(シュウ酸など)を除去するために茹でることと書かれているはずです。焼いたらアクはどうなるのか?番組では説明されませんでしたが、そのまま残って水分の消失分だけ濃縮されます。
 あいかわらず、TV番組において食材の一面だけを強調して取り上げる姿勢は変わっていないようです。野菜でも、果物でも、おいしい成分(体によい成分)と、アク(体によくないかもしれない成分)の両方を含んでいます。できるだけおいしく食べてもらおうというのが料理であり、あまり細かく単一成分の増減にこだわることはないと思います。番組では、ニンニクも焼けばよいと言ってましたが、焼くとアリイナーゼという酵素が働きません。アリイナーゼが作用するするおろしニンニクと、アリイナーゼが働かない焼きニンニクとではずいぶん効能は違うはずですが、細かく気にし出すと、美味しく食べられなくなります。

ビーツが血圧を下げる(その3)

2011-06-19 12:43:29 | Weblog
 ビーツジュースの飲用により血圧が下がり、これはビーツに豊富に含まれるカリウムの作用であるとテレビ番組で放送されておりました。ビーツ中のカリウム含量は100g中に460mgと食品成分表にかかれております。ホウレンソウなら、690mg、パセリなら1000mgですが、根菜類のダイコン230mg、ニンジン280mgと比べれば、含量は高いのかもしれません。medlineのアブストラクトでは、500mlのビートジュースを飲むと3時間後に最大で10mmHg程度血圧が下がったとされます。500mlのビートジュース中に含まれていたと推定されるカリウムは2グラム余です。トマトジュースなら1L弱、オレンジシュースなら1Lと少しでとれる量なので、カリウムだとすれば、必ずしもビーツでなければならないとはいえません。そもそも、カリウムがナトリウムと拮抗的に働いたとしても、長期的にはナトリウム感受性の高血圧患者の血圧を下げるかもしれませんが、短時間に効果を現すものでしょうか?(このあたりは専門外です。)元の論文に従い、(カリウムではなく)ビーツ中の硝酸イオンが血圧を下げたと放送すべきではなかったかと考えます。オレンジシュースやトマトジュースでは、硝酸イオンは十分には摂取できません。
 シュウ酸については確かにビーツにおいて問題視され、調査された報告が最近まとめられております。J. Amer. Soc. Hort. Sci. 136, 54-60 (2011) この文献では、多くの品種のビーツの葉と根についてシュウ酸を比較しており、根については、総シュウ酸で 95-142mg/100g とされます。ホウレンソウの葉よりは1ケタ低い値です。お茶も一部では、シュウ酸含量が高いと書かれていますが、ビーツジュースを飲用する場合、シュウ酸濃度はホウレンソウジュースとお茶の中間くらいになるでしょう。この量を毎日飲むことが、腎結石のリスクを増やすのか、あるいは他のミネラルの吸収をどの程度阻害するのかについては、飲み方や体質にもよるだろうとしか言えません。
 英国では、ビーツジュースが販売されているそうですが、日本ではえぐみ成分とされるシュウ酸が多量に溶けたジュースを英国人はおいしいと思って飲んでいるのか否かの方が、個人的には知りたいところです。 

ビーツが血圧を下げる(その2)

2011-06-15 21:00:32 | Weblog
 久々の目新しい野菜の紹介、ブログの書き込みも盛んなようです。テレビ番組で、ビーツが血圧を下げると紹介されたのを受けて、書き込んでみます。
 血圧降下作用について、ロンドンの大学で証明されたとのことですので、文献を調べてみました。どうせ都市伝説を元に、番組製作されたものと思っておりましたが、ありました!。2008年の Hypertension、51巻3号、784-790 に書かれているとのことです。medlineのアブストラクト情報です。著者は確かに Queen Mary University of London となっております。
 ただし、ビーツの効果を調べるのが目的ではなく、硝酸イオンの効果を調べるのが目的で、硝酸イオンを含むビーツジュースを健常者に飲ませたら、血圧が下がったというものです。続報で、硝酸カリウムのみを与えても血圧が下がったとされていますので、著者らは野菜の中の硝酸イオンに血圧を下げる効果があると考えているようです。
 野菜の硝酸イオンについては、これまで有機農業信奉者の方々から目のかたきとされてきました。それが、血圧を下げるとは・・・。だから直ちに、硝酸の多い野菜を食べましょうとはいえないかもしれませんが。
 番組では、長々とカリウムの説明をしていました。論文があるのなら、なぜその論文にそって、硝酸イオンの効果を紹介されなかったのか?ビーツに含まれるシュウ酸とともに宿題にさせていただきます。
 

ビーツが血圧を下げる?

2011-06-14 21:58:19 | Weblog
 あるテレビ番組で、高血圧予防食材としてビーツが紹介されていました。ほうれん草と同じアカザ科の根菜とのこと。高血圧予防は豊富なカリウムによると紹介されてました。そして、バナナと豆乳を加えてジュースに。
 カリウム摂取の意味合いではよいのかもしれません。ほうれん草の仲間ということで、シュウ酸が気になります。そこにさらに、シュウ酸を豊富に含むバナナまで加えて・・・。体質にもよるでしょうけど、高血圧を気にする人が多量に飲み続けると、過剰なシュウ酸の結果、腎結石にならないか心配です。またジュースなので簡単に飲めますが、結構高カロリーなのでご用心。
 食材の一面だけ見て、「健康によい」という番組作りは考えものです。カリウムをとりたいのなら、無理にデパ地下を探さなくても、普通のスーパーに売られている野菜や果物で十分です。

涙を流さずにタマネギをみじん切りする方法

2011-06-05 13:46:03 | Weblog
 お茶の基準値設定という比較的地味な作業が大きく報道された1週間でした。「荒茶」というこれまで関係者しか使わなかった業界用語が、平時であれば流行語大賞にノミネートされるかと思われるような勢いで報道されています。お茶の放射線基準は、荒茶について500ベクレル(セシウム)とするという決定については、飲用時の濃度に換算すれば牛乳の200ベクレルよりもずっと厳しいことになり、生産・流通にかかわる方には納得できない部分も多いかと思います。「荒茶はふりかけとして食べることもある」とういう政府の発表も、ふりかけを1日にどれくらいの量食べるか、総量としての被曝量を減らそうという趣旨から考えて、どこまで「科学的根拠」があるのでしょうか?話かわりますが、こうした議論を通じて、「A国産の野菜から基準値の5倍の農薬が検出されました」等の報道で、これまでは絶対視されてきた基準値というのが、どこまで安全上意義があることか改めて考えるきっかけを与えてくれたものと思います。
 前置きが長くなりましたが、テレビで「タマネギを切る方法」について放送されるとのことでしたので、どんな新しい技を使うのか楽しみに見ておりました。紹介されたのは、冷凍庫で15分冷やすという、ありきたりの方法でした。実際にスタジオで涙を流さずに切れたので、実用上問題はないのですが、「調理科学」を謳った割には、その説明がいただけない。「冷やして、硫化アリルの揮散を抑える」とのこと。まず、「硫化アリル」という化学物質は存在しません。タマネギの組織の中に、催涙成分のもとが存在します。包丁で切ったりすると、組織中の酵素が働いて、何段階かの反応の後に、催涙成分を生成します。冷やせば、酵素の働きが弱くなるので、結果的に催涙成分の生成量が少なくなり、そのために涙がでないというのが正解です。酵素が働かなくなればよいので、加熱したりアルコール漬けにしたタマネギをみじん切りにしても涙はでません。
 冷やし方について、冷凍庫で15分というのは、時間を間違うと凍ってしまいます。冷蔵庫でも、氷水でもよいので冷やすことが大事だと思います。涙の出ないタマネギについても一時期科学上の話題になりましたが、まだ実用販売されたという話はききません。
 余談ですが、お茶の基準値騒動で、静岡の茶農家杉本さんが映ってました。放射性物質について、個人で依頼分析に出しているとのこと。10年前に茶園を見学させていただきましたが、先進的で科学的な有機農法の経営者です。たまたま原発から遠い生産地では、データを公開して「安全」プレミアで売れるが、近い生産地で本来の品質とは違い、放射性物質の数値にびくびくしながら、生産・流通せねばならない、なんとなく、しっくりいかない部分もあります。