野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

野菜(A)の栄養価はホウレンソウの3倍?

2010-10-10 08:55:02 | Weblog
 生産者の方から、作っている野菜の栄養価について質問を受けることがあります。あるめずらしい野菜(A)を生産しているが、栄養価については食品成分表に出ていない。ネットではこの野菜Aの栄養素Bはホウレンソウの3倍だと書かれているが、自分の野菜についても、「ホウレンソウの3倍の栄養素Bを含む野菜」として宣伝してもよいかとのことです。
 食品成分表については、全国で年間の平均値を示しています。ある野菜Aについて栄養素を測定する場合、個人あるいは1企業で、全国・年間平均の値を得ることは非常に難しいと思われます。自分の土地で生産した野菜の内容成分は、他の土地で作ったものと異なるかもしれません。また、栄養成分含量は季節変動することが知られています。野菜Aに含まれる栄養素Bがホウレンソウの3倍といいたいのであれば、全国規模で年間を通じてサンプリングした野菜Aについて、栄養素Bを測定し、その平均値について同じ方法でサンプリングし分析したホウレンソウと比較する必要があります。サンプリング自体も大変ですが、分析についても各栄養素の分析を依頼すると、1点あたり最低10万円はかかるでしょう。とても個人や個別の企業で対応できる金額にはならないはずです。
 野菜については、栽培条件や環境によって成分は変動します。さらに収穫後も流通の過程で変化します。消費者の立場からすれば、売り場にあるニンジンについてカロテンはどの程度含まれるか知りたいところですが、今のところ食品成分表に記された平均値でしかお知らせできない状況です。手塩にかけて育てた野菜なので、そこらの野菜とは違うんだといいたい気持ちはよく理解できますが、「ホウレンソウの3倍」かといわれると、お答えしづらいところです。
 たとえば、日本人の身長の平均値が170cmとして、ある特定のアメリカ人の身長が180cmであったとしても、アメリカ人は日本人よりも背が高いということはできません。
 

野菜の栄養価が低下している?

2010-10-02 14:53:00 | Weblog
 「50年前の野菜と比べて、今の野菜では栄養価が低下している」とよくいわれます。その根拠として、食品成分表について1950年代の値と最新版の値を単純に比較されています。これまで、栄養成分の分析方法が異なるので、数値だけ比較しても無意味だと回答してきましたが、実測することはありませんでした。
 小島彩子ら、2010、栄養学雑誌、68、141-145 において、ビタミンCについて過去の分析法を用いた場合と、現在の方法を用いた場合とで比較されているので、紹介します。当然、分析精度は現在の方法がよいはずです。よく問題にされるホウレンソウについては、過去の方法では、過大評価されるとのことです。
 同じ畑のホウレンソウでも、株ごとに栄養成分の含量は異なります。また同じ株でも、葉の位置によって栄養成分量は異なり、同じ生産者の方が作ったホウレンソウでも、栄養成分は季節によって異なります。また50年前は、夏にホウレンソウは食べられたでしょうか?
 測定方法も、試料のサンプリング方法も異なるデータ(1950年代と最新の食品成分表)を単純に比較して、「栄養成分が増えたor減った」という議論はあまり意味がないものと考えます。