野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

釜炒り茶は何故飲みやすいか?

2012-01-22 11:21:36 | Weblog
 九州地方には釜いり茶という緑茶があります。一般的な煎茶は茶畑で摘んだ茶葉を蒸してから揉むのですが、釜いり茶は、蒸さずに、釜でいってつくります。香りは香ばしく、飲みやすいので個人的には好きですが、生産量が少なく、産地以外ではなかなか手に入りません。
 釜いり茶と煎茶と化学成分を比較してもほとんど差はありませんが、渋味が少なく飲みやすいのは釜いり茶の方です。松尾らは、食品科学工学会誌、2012年、1月号において、見事にその謎を解いています。文献によると、味覚センサーを用いて比較すると、煎茶よりも釜いり茶の方が渋くないと出ています。(釜でいると甘い香りがするので、本来は渋いのですが、渋味がごまかされるのかと思ってましたが見事にハズレ。)何故、センサーで釜いり茶は煎茶より渋くないと出るのか?渋味成分であるカテキンが、お茶の中に溶け出しにくいとデータが出されています。きわめてシンプルですが、煎茶にも釜いり茶にも、含まれるカテキン量は同じですが、煎茶の方が飲むお茶の中に出やすいので渋いとの結論です。
 お茶の渋味はペクチンによって緩和されることが知られています。釜いり茶ではペクチンが溶け出すので、渋味が弱いのかとも考えられますが、実際にペクチンを測ると、釜いり茶の方がペクチンの溶け出す量は少ないとのことです。なるほど、煎茶はとろっとしておいしいですが、釜いり茶はさっぱりしておいしい。食感の違いはペクチンに関係しているようです。
 要するに、釜いり茶は、渋味成分であるカテキンも、とろっとしたペクチンもお湯の中に溶け出さないので、渋くなく、口当たりさっぱりだということです。
 伝統的なおいしいお茶、ぜひまもりついでほしいものです。

ボケたくなければ、**を食べなさい

2012-01-09 12:21:44 | Weblog
年末に出版された本です。高齢社会を迎え、一番避けたい病気は認知症ではないかと思います。食べ物で防げるのなら・・・と期待して買ってしまいました。著者は私と同じ年で、しかも医学部の教授で、老化のスペシャリスト。老化や認知症予防に関する医学上の新しい知見と食品化学の融合、期待して読み始めました。
ところが、最初からぶっ飛びました。老化を促進してしまう食品として、食品添加物、農薬が残留している野菜等があげられています。認可されている食品添加物を適量使って老化を促進したという研究事例はあるのでしょうか?あるいは、市販の野菜に危険なレベルで農薬が残留しているのでしょうか?証拠を示さず、あまりにも安易に世間一般で懸念されているようなリスクを冒頭に呈示することから、怪しいなと感じました。
あとは、雑穀がよいの、発酵食品がよいの・・・なんとなく世間で言われているような内容を復唱しているだけ。タイトルから期待するボケ防止策はほとんど出てきません。やっとアルツハイマーをブロックしてくれるナットウキナーゼが登場しました。脳にできるシミ、ベータアミロイドタンパクをナットウキナーゼが分解してくれるとのことです。でも、食べた納豆に含まれる酵素ナットウキナーゼがどうやって脳まで達するのでしょうか?納豆を食べたらボケないという説明にはなっていません。また、本の最後の方でやっと述べられたアルツハイマー症予防策は、なんとウオーキング。食による認知症予防だったはずが、いつのまにか運動にすり替わっています。
その他のページには、多様な食材の効能が必ずしも老化とは関係なく述べられています。発酵食品や雑穀について書かれた部分の真偽はわかりませんが、野菜については、カイワレダイコンにスルフォラファンが含まれるなど誤認も多く、また、魚介類のタウリンまでファイトケミカルに分類するなど、食品科学のイロハが理解できていないのではと疑われます。本ブログで批判してきたようなネット情報について、きちんと精査せずに本にまとめたという印象です。
老化(あるいはボケ)防止食材について、何らかのヒントがあるのかと期待して購入しましたが、全く金と時間の無駄でした。 

ハインズ博士再び超科学をきる

2012-01-02 10:20:09 | Weblog
あけましておめでとうございます。(ただいま充電の読書中です。)
化学同人から表題の書籍が出版されております。「食」とは直接関係ないのですが、おもしろい本なので紹介させていただきます。
昔、宇宙人が文明を伝え、バミューダ海域では遭難が多発するなどというテレビ番組を熱心に見、また本も買って世界の謎にあこがれておりました。この本では、デニケンの古代宇宙人飛来説やバミューダトライアングルの謎、ノストラダムスの予言までバッサリ。関連本やテレビ番組はなんだったのかと思えます。普通の歴史や旅行書・番組ではインパクトはありませんが、権威といわれるものを(学問的な正しさは無視しながら)思い切り持ち上げて、ヨイショしてそのご威光で売ろうというのは、今も続く健康法や食品にも類似するものかもしれません。
ただ、お正月になってもTVは無害なお笑い番組を繰り返すだけで、なんら知性や創造力を刺激するものではなくなりました。宇宙人がピラミッド建設を指導したとしたら・・・と考えると、夢があり、刺激的でもあります。身近な史跡を訪ねて、当時の知識で作りえたものなのか、それとも超科学的な何かが必要だったのか考えるきっかけにもなるかもしれません。科学の限界を感じる上でも、こうした超科学情報は意味があったものと思います。
超科学が、不当な金儲けやオウムのような宗教に結びつくのは問題ですが、リクリエーションやイマジネーションを喚起するために提供されるのであれば、それは必ずしもメディアから排斥する必要はないものと思います。(いつものメディア批判とは矛盾するかもしれませんが。)映画「紀元前1万年」も「ガリバー旅行記」も、デニケンやバミューダを知らないと、つまらないものになってしまいますから。