野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

占いは信じるな!

2008-09-21 12:21:49 | Weblog
 時間つぶしに八重洲ブックセンターを歩いていて、驚きました。「占いは信じるな!」という本のタイトル、タイトルだけなら、「と学会」や物理の先生などが出版されるのであれば、別に不思議はないのですが、著者が佐藤六龍氏。これは衝撃です。私は、ビデオ化もされていない「ノストラダムスの大予言」という映画で丹波哲郎氏の扮する研究者にあこがれ、理系に進んだ者です。その影響もあり、学生時代は専門書よりも、占い本の方を数多く読みあさりました。当時の記憶で、ピカ一の理論派の占術師が佐藤六龍氏でした。そのあこがれの佐藤氏が、「占いは信じるな」とはいかなることか。
 要約すれば、占いは当たりませんよ、占い師のいうことは参考意見として聞いて、本人が判断してくださいという内容です。そして、様々な占いについて批判されています。活字になったり、テレビ番組で取り上げられると、信用できるのかと期待しがちです。それを、こうして完膚無きまでに批判いただくと、売れればよい、視聴率がとれればよいというメディアに対して、批判的な目で見ることができるようになります。
 本ブログの目的にもどりますが、占いや霊、予言の類については、視聴者、読者も、半分は冷めた目でウソかもしれないと思いつつ眺めています。これに対して、**に効く食品についてのメディア報道には、一般の方は科学的事実であり、間違いないものと信じがちです。そして、素人判断で実践し、病を招く可能性があります。はずれた予言はネットからも消滅しますが、食の怪情報はいつまでもネット上に残り、それがメディアで再度取り上げられて、さらに増殖するため、よりたちの悪いものです。
 活字やテレビ番組を信じることへの警鐘として、すばらしい本だと思います。

レタスは食物繊維が豊富???

2008-09-13 15:22:58 | Weblog
 公立の図書館で今年5月に出版された野菜と健康に関する本を見つけました。久しぶりに、書評を書いてみます。
 タイトルには「レタスは食物繊維が豊富???」と書かせていただきました。著者は薬膳の専門家のようですが、いろいろな野菜の効能を紹介する中で、「レタスは食物繊維が豊富」と書かれています。レタスは食物繊維が少ない野菜であるというのは常識であって、それゆえ、瓶詰め飲料にレタス*個分の食物繊維を詰めることができるはずです。著者は成分表まで掲載しているので、食物繊維の含量を他の野菜と比較すれば、「豊富」という表現が正しいのかどうか判断できるはずです。にもかかわらず、「食物繊維豊富」と書けるところに、この本の危うさがあります。
 「えだまめ」のページには、「アルコールを飲み過ぎるとホルムアルデヒドの分解ができなくなり・・・」と書かれています。メタノールを飲むと、ホルムアルデヒドの影響で失明するなどということは聞きます。メタノールはアルコールには違いありませんが劇物ですので、素人が簡単に購入して、飲めるわけではありません。普通、我々が飲むのはエタノールなので、体内ではアセトアルデヒドを生成します。たかがメチル基ひとつといえど、メタノールは劇物、エタノールは食品成分と全く違います。
 「キュウリ」の項目では、このブログで何度も紹介しているイソクエルシトリンとククルビタシンが登場しています。さらに「ぬか漬けにするとビタミンB1の効力が上がる」そうです。食品成分表をみると、ぬか漬けでは明らかにビタミンB1がキュウリより多いので、「効力が上がる」のではなく、「増加する」と書くべきです。
 「たまねぎ」では「プロピルメルカプタン」が「分解酵素」として紹介されています。普通酵素の場合は、アミラーゼ、アリイナーゼなど「アーゼ」の文字がお尻につきます。プロピルメルカプタンは酵素ではありません。20年前には、プロピルメルカプタンは加熱タマネギの甘味物質とされていましたが、今では完全に否定されています。そのことは全く無視して「分解酵素プロピルメルカプタンの作用により刺激臭は気化して辛味が甘味になります」などと意味不明のことを述べられています。
 「トマト」では「カロチノイド、フラボノイド、ベータカロチン、プロビタミンA活性・・・」と列挙されて、いかにも有効成分が多いような印象をうけます。フラボノイド以外は、カロチノイドでまとめてよいはずです。この文章では「私の財産は、宝石とダイヤと指輪です。」と言っているのと同じです。テレビコマーシャルでも「カロチン」ではなく「カロテン」という表現が使われており、現在では「カロテン」、「カロテノイド」が「カロチン」「カロチノイド」よりも一般的です。トマトの次のページのニンジンでは「ベータカロテン」と述べられているのに、何故トマトでは「カロチン」なのでしょうか?ひょっとして「カロテン」と「カロチン」は別物とお考えなのでは?
 このブログでも何度かご紹介していますが、あるある大事典でナットウが問題になって以来、テレビ番組では、誤報を流さないようものすごく慎重になっている印象があります。クイズの解答のような些細なことも問い合わせいただき、製作関係者が「かわいそうなぐらい努力している」姿が浮かびます。一方で出版業界は、そうではないようです。少なくともこの本は常識を逸脱した記載が多すぎます。
 書店で本を選ぶとき、この本のように、カタカタ語を多く使い、効能をいっぱい詰め込んでいるのを見ると得した気になり、つい買ってしまうかもしれません。しかしながら、裏のないネタ、都市伝説の世界はネットで調べれば幾らでも集まります。本当に良心的な著者なら、都市伝説は排除し、科学的に認知されていることを書くはずですから、効能もカタカナ言葉もてんこ盛りにはならないはずです。何度も書いていますが「***事典」のような本は、前者の場合が多い気がします。このブログで紹介した内容なども参考にして、良心的な著者の書いた本をご購入いただけるようお願いします。