野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

野菜が壊れる

2008-11-18 18:41:35 | Weblog
 11月19日第1刷発行の新刊書のタイトルです。あまりに衝撃的なタイトルで、最初の数ページで唖然とさせられます。ホウレンソウのビタミンCは1950年に150mgあったものが、1982年には65mg、2000年には35mgになったとグラフで紹介されています。このデータをみると、今まで栄養豊富だと思っていた野菜は実は何だったのかと思わされ、実にたくみなオープニングです。
 読みすすむと、こうして質の悪い野菜が生まれたのは化学肥料のせいだと力説されています。農水省のサイトなども引用し、よく勉強されていると印象づけられます。農水省の相談ページで、「ひき肉入りのピーマンの肉が赤いのはニトロソアミンができるから」という回答を批判されているのは、まさにその通りです。
 著者は有機農法にもどれとすすめておられます。化学肥料を使わない有機農法なら品質もすぐれると力説されます。しかしながら、多くの科学的な文献で、有機農産物が明らかに優れていることを示したものは、多くありません。統計的に有意な差があったとしても、例えばビタミンCが数倍に増えたというデータはみたことがありません。となると、1950年から2000年の間のホウレンソウのビタミンCの減少というのは何なのか。単に昔は有機で今は化学肥料では説明がつきません。また、水耕栽培でも立派なトマトが育ちますし、有名な農法である永田農法においても、無機肥料を与えて、高品質な野菜を作っています。冒頭の衝撃的なグラフ(50年間のビタミンCの減少)については、単に「化学肥料が悪い」だけでは説明がつきません。冒頭から理屈が壊れているように私には思えます。

キュウリはガン細胞を殺す働きを持つTNFを抗ガン剤なみに増やす!

2008-11-03 14:07:34 | Weblog
 各種食材の効能や選び方を解説した本からです。くだものや魚、肉などとともにまとめられた本の中で、野菜のコーナーのトップはキュウリでした。当然力を入れて書かれたものと想像します。他のページにはない学術的なデータも入っており、内容にも説得力がありそうです。
 「ガン細胞を殺す働きがあると免疫物質TNF(腫瘍壊死因子)を抗ガン剤なみに増やす作用があり、ガン予防が期待できます。」何かの誤植があったのか、そのまま書き写すと日本語として意味不明の部分もありますが、TNFという物質を増やす働きを持っているのがキュウリだと著者はいいたいようです。
 すぐ下にグラフが書かれており、キュウリはナス、ダイコンに次いで、TNF活性を高めるようです。ポジティブコントロールには免疫増強剤となっており、棒グラフでみれば、キュウリと免疫抑制剤の棒はほぼ同じ高さです。なるほど、キュウリには医薬品なみの活性があるのかと思いたくなりますが・・・。
 グラフがある以上、どこかにタネ本があるはずです。調べましたところ、Yamasaki M. ら、Biosci. Biotech. Biochem., 56, 149 (1992) が元になった文献のようです。この報文の著者はキャベツやニンジン、ホウレンソウには免疫系に対する強い刺激活性があるとは述べていますが、キュウリやナスはこれらに比べて強いと判断していないようです。
 となれば、同じようなガン予防に関する記載を、キャベツ、ニンジン、ホウレンソウにおいてこそ書くべきかと思いますが、本には全く言及されていません。
 そもそも、マウスを使った実験系ではありますが、「野菜を食わせてTNFが増えた」という実験結果ではないので、ヒトが野菜を食べた場合、有効かについては疑問と考えます。
 さらに、このブログでもたびたび紹介している「イソクエルシトリン」がキュウリの利尿物質として登場するあたり、科学の仮面をかぶったトンデモ本の類かもしれません。