野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

ダイコンおろしは煮ると甘くなるか?

2009-01-25 15:10:58 | Weblog
 某テレビ番組において、ダイコンおろしを煮ると甘味が強くなると放送していました。ダイコンおろしに含まれる甘味を作る酵素は熱に強いため、温度がかかった状態でも働くことができると紹介されていました。
 多分、甘味を作る酵素というのはアミラーゼのことかと推測します。ご飯をよく噛むと、唾液中のアミラーゼの作用でデンプンが分解され甘くなります。また、焼き芋の場合も、加熱中にアミラーゼが働いて、デンプンが分解されて甘くなるといわれます。ダイコンの場合は???デンプンが含まれないので、アミラーゼがあったとしても、その作用で甘味が強まるとは考えられないのですが・・・。テレビではもっともらしくグラフを紹介していましたが、私には納得できません。
 いっぽうで、ダイコンの辛味を作る酵素ミロシナーゼは皮の近くに多いということについては、最近の知見をさりげなく紹介されてました。元の文献はPlant Science 160号、425-431ページ(2001年)と思われます。ミロシナーゼがあれば、辛味の元グルコシノレートからブドウ糖が生成されます。これを検尿で糖尿病を検査する原理で染めれば、ミロシナーゼがダイコン中でどういう分布をしていたか分かるという実にクレバーな方法です。(ダイコンの輪っかをみせるだけでなく、いかに優れた方法なのか、科学のおもしろさを視聴者に伝えられればもっとよかったと思いますが。)
 越前ソバを取材する時間があるのなら、もう少し科学的検証をしっかりやっていただければと希望するものです。権威のある番組だけに、「ダイコンおろしを煮ると甘くなる」という珍説がネット上で広まりかねませんので。