野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

野菜の糖度

2010-03-28 12:08:25 | Weblog
 相変わらずテレビ局の方から,野菜の糖度に関する問い合わせがあります.「普通市販されているトマトは糖度5ですが,名人に作ったトマトはスイカなみで10以上の糖度になる.」といった放送をしたいようです.一般の野菜,果物の糖度について比較した表のようなものがないので,どこかで糖度をまとめた表が欲しいというのはよくわかります.ただ,「スイカなみの糖度を示す甘いトマト」のような表現をされると困ります.糖度というのは,糖度計で測った値にすぎません.糖度計では屈折率を測定するだけなので,甘い糖でなくとも,塩でも酢でも溶けておれば糖度の値は上がります.ちなみに
http://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku/58/12/1063/_pdf/-char/ja/
をごらんいただくと,いくつかの野菜の糖度(brix)を測定した中で,一番高かったのは,ゴボウです.その時のゴボウの糖度16.4は,甘すぎるメロンの値です.さすがにテレビ局も
「ゴボウのように甘いメロン」という放送はしないでしょう.
 野菜の品質を述べる時,確かに糖度で表現する場合はありますが,あくまでもトマトならトマトの中での比較にとどめるべきです.他の野菜や果物と糖度を比較するのは全くのナンセンスですと質問された方には回答させていただきました.

タマネギのグルコキニン

2010-03-14 15:41:31 | Weblog
 先週、このブログに書いたような内容をお話させていただきました。時間の都合で、タマネギの話をとばしたのですが、グルコキニンについては、お話すべきであったかと反省!グルコキニンについてこのブログで紹介したのが去年の秋で、丁度同じころ、「激素庵Mini情報」というホームページでもまさに同じ内容のことが書かれていたようです。非常にわかりやすくまとめておられますので、興味ある方は検索してみてください。
 グルコキニンについては、本屋の一コーナーを独り占めできるくらい有名な先生が、タマネギに含まれるグルコキニンの血糖降下作用についてよく書いておられます。もし、そういう効果が学会などで認められているのなら、関連する論文が簡単にみつかるはずです。しかしながら、1920年代の論文以外は、mini情報に紹介されている2003年のブラジルの研究者の総説以外は認められません。
 そもそも、タマネギにグルコキニンというインスリン(すみません。私が学生の頃インシュリンと習ったので、前のブログはインシュリンになっています。物質は同じ。英語の綴りも同じですが、カタカナの当てはめ方が変わったようです。)様物質があるという研究は、タマネギ抽出物を動物に注射した結果に基づきます。タマネギにグルコキニンというインスリン様物質が存在することにも「?」がつきますし、仮にタマネギにグルコキニンが含まれていたとしても、それを食べると血糖が下がるという期待もできません。
 インスリンはポリペプチド(アミノ酸が長くつながったもの)です。消化管を通過して、それでも活性のある形で体内吸収されるとは考えがたいのですが。

輸入カボチャが苦かった!

2010-03-14 13:44:19 | Weblog
 流通業者の方から、輸入したカボチャについて「苦味があるという苦情がある」と相談いただきました。ニガウリのように常に苦い野菜については、その苦味成分について、解析することは比較的容易です。たぶん、輸入カボチャすべてが苦いわけではなく、ごく一部の果実で苦かったものと推測しますが、こういった苦情への対応は大変難しいと思われます。同じロットのカボチャが手元にあったとしても、食べてみるまでは苦いかどうかわかりません。分析センターに送って分析したとしても、分析したものが苦味果かどうか不明です。1個2個では苦味果にあたる確率が低いので100個分析依頼したら、莫大な金を要求されます。それ以前に、カボチャの苦味成分について、依頼分析を受け入れる機関は国内に皆無なのではないでしょうか?
 一般論ですが、カボチャのようなウリ科植物はククルビタシンという苦味成分を含む場合があります。カボチャの苦味もククルビタシンである可能性が高いと思われます。ネット上には、ククルビタシンは抗ガン成分のように書かれる場合がありますが、毒性も強い物質です。Journal of Food Protection (1985)43, 50-51 には、カボチャの仲間(日本で食べるカボチャとは種が異なる)の苦い果実を、エサに10%混ぜて、10週間マウスに食べさせたら、全部死んでしまったと書かれ、原因はククルビタシンであると考察しています。普段、苦味を感じない、キュウリやカボチャで強い苦味を感じたら、無理に食べない方がよいかもしれません。ニガウリの苦味もククルビタシンによるもの(細かな化学構造は植物によって異なる)ですが、これまで食経験もありますので、大過剰に摂らない限り問題がないはずですが。
 では、何故輸入カボチャにククルビタシンが含まれたのか?ウリ科であるカボチャの祖先は苦いものも多かったのではないでしょうか?それを祖先達が苦心して苦味をなくしたのが、現在のカボチャでしょう。日本でとれるカボチャは、育種家達の努力の末、苦味がなくて、日本人に好まれる味や食感のカボチャを育成されました。海外で日本人向きのカボチャを作るとしたら・・・・?日本のタネに近いものが入手でき、そのまま栽培できればよいのですが、気候、風土などが異なります。そこで、現地にあるカボチャと、日本のカボチャに近いものを掛け合わせして、日本人の好むカボチャを作ろうとするのではないでしょうか?そうした場合、日本のカボチャのタネとは少し違いますので、本来のカボチャが持っていた「苦味」が出ることもあるのかなと考えました。

酢水につけるとモヤシがシャキシャキする?

2010-03-06 15:38:00 | Weblog
 テレビ番組の関係で、「酢水につけるとモヤシがシャキシャキするのは何故か?」というご質問をいただきました。残念ながら、手元にある本やネット情報を集めても、この何故には回答できそうにありません。
 次のように考察します。酢を使って料理したことのある方にご意見いただければと思います。まず、モヤシは水につけておくそうですので、細胞の内部は水を十分に吸った状態になっているはずです。さらに多くの水を吸わせることができれば、細胞がふくれて、食感はもっとよくなるものと期待できます。では、どうやって水を吸わせるか?植物細胞は、細胞壁という硬い壁に包まれています。ダンボールの箱の中で風船が十分にふくらんだ状態が、水につけたモヤシだと考えます。さらに細胞(風船)に水(空気)をいれようと思えば、細胞壁(ダンボール箱)を大きくするしかありません。酢を加えると、酸の作用で細胞壁がゆるみ、細胞内により多くの水を蓄えられる状態になるのかと考えます。水をより多く蓄えたモヤシは、プチプチとはじけるような食感になるノカナ-?と思うところです。番組名は聞いておりませんが、酢に関する放送だそうですので、もしごらんになれば、どう紹介されたか教えてください。
 *明3月7日に、鈴鹿医療科学大学で本ブログに書いたような話をさせていただくことになりました。ご興味のある方は、意見交換にご参加ください。