野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

朝バナナダイエット?

2008-06-08 13:18:35 | Weblog
 今朝、新聞の一面広告で「バナナがダイエットに使われている」ことを知りました。ホームページによると朝、好きなだけバナナを食べるとか。ダイエット効果については論じる立場にはありません。少なくとも、食経験のない方法で調理した白インゲンマメよりは、普通に食べるバナナは安全だと想像します。
 ただし、すべての食品にはメリット、デメリットがあります。食塩は体の維持には必要ですが、摂りすぎると生活習慣病を招く可能性を高めます。バナナについては、日本調理科学会誌、2008年、52ページに成分分析値が示されています。それによると、シュウ酸含量は100g中770mg!まさにホウレンソウなみです。ホウレンソウの場合は、結石の懸念があるので、茹でこぼしてシュウ酸を減らしましょうと料理本にも書かれています。ところが「バナナの茹でこぼし」は聞いたことがありません。ホウレンソウならオカズとして100gくらい食べれば満足ですが、朝ご飯代わりに3本(500g)のバナナを食べると、「約4gのシュウ酸がもれなく付いてくる」計算になります。
 シュウ酸は結石の原因となる可能性があるだけでなく、カルシウムなどミネラルの吸収も阻害すると言われます。著者は良質のカルシウム源である牛乳の摂取は否定されているようですが、ミネラル吸収のバランスの点からも、高シュウ酸食品の偏食については、検討の余地があるように考えます。

ペットボトルの茶と家庭でいれる茶は別物(その2)

2008-06-03 07:09:06 | Weblog
 あるテレビ番組において、4月29日に書き込んだ「ペットボトルの茶と急須で入れる茶の違い」をテーマに放送されました。全体的にはよく調査されたよい番組であり、毎週見ています。
 番組では、2つの茶の違いについて
1.茶期が違う。
2.製茶方法が違う。
3.入れ方が違う。
の3点から整理されていました。
 1の茶期が違うについては、4月29日にも書きましたが、新茶の時期に売り出される100g当たり千円の茶葉を使ってペットボトルに詰めたのでは採算があいません。どうしても安い茶を使わざるをえないはずです。となると、1番茶でも終わりの方か2番茶、3番茶と呼ばれる比較的安い茶葉が多く使われるのではないかと推測します。ただ、番組では「旨味成分」であるテアニンがペットボトルでは少ないと説明されてました。テアニンは食品添加物として認められているので、添加すればおいしいペットボトル飲料ができるかというと、そうはなりません。お茶の「うま味」はテアニンだけによるものではありません。
 また番組では古い葉は細胞膜が厚いため内容成分のテアニンが溶出しにくいと説明されてましたが、私がテレビでみた印象では、写っていたのは細胞壁の写真であり「細胞壁」が厚いとすべきかと思います。溶出されにくいのなら粉にひけばよいはずですが、実は単に溶出しにくいだけでなく、「テアニンそのものが古い葉には極めて少ない」という重要なコメントが欠落しています。
 2の製茶方法の違いについては、手もみ茶の実験との関連も含めて意味不明でした。たしかに製茶工場には60kg、200kgなどの製茶機械のラインがあります。大型化することで、製茶作業を省力化できます。「これはペットボトル用だから200kg用で」、「これは家庭用だから60kg用で」などと使い分けているとは考えられません。手もみというのは、番組でも紹介されたように非常に時間と技術を要するため、手もみ茶は大変貴重なものです。映像としてはおもしろいのですが、何をうったえたかったのか伝わりませんでした。
 3の入れ方については、急須でいれるのと機械で抽出するのでは明らかに異なるはずです。わざわざお茶を酸化させるような実験は何のためなのか不明でした。いれたお茶は酸化するので、ペットボトルには酸化防止剤としてビタミンCを加えてますよいうコメントがないと・・・。成分的には、ペットボトルの茶は薄いだけでなく、ビタミンCが添加され、また「カテキンの異性化」(少し難しいですが)も起こっています。
 急須でいれる茶とペットボトルの茶の違いという視点はおもしろいのですが、期待していたボトリングメーカーの協力が得られず、取材内容がうまくつながらずに消化不良の内容になってしまったのかと推測します。(残念!)

キュウリの栄養

2008-06-01 13:21:47 | Weblog
 相変わらずテレビ番組関係者から、キュウリのネタ探しの問いあわせが続いています。食品成分表を見ても、特段多い栄養成分はみられません。また、ネットや**事典のたぐいの本には、このブログで紹介しているように根拠のない話ばかりです。(例:イソクエルシトリン、ピラジン、ククルアスコルビン酸など)
 イソクエルシトリンなどを期待した「栄養は?」という問いには、「特にない」とお答えせざるをえません。先に書きましたように、「アスコルビナーゼ」についても、視聴者の益になる情報ではありません。
 やおら、「キュウリは食感が重要な野菜で・・・、皮の部分、肉の部分、種の部分、3種類の食感の異なる部位があり、しかも噛めば口の中でキュウリらしいニオイを発する、こんな野菜や料理・お菓子などありますか?」とまくしたてると、いつも聞く耳持たずと電話を切られています。
 ネットで検索していただければ「卑弥呼の歯がいいぜ」という言葉で代表されるように、咀嚼の重要性が強調されています。よく噛んで食べることの重要性は、多くの方が認識していると思います。特にキュウリやレタスなどの生野菜は食感が命であり、噛むことを楽しむために食べているはずです。キュウリは噛んで細胞が破壊されることによって、初めて独特の香り(スミレ葉アルデヒド)が発生し、この香りが鼻にぬけて、キュウリらしいおいしさ(フレーバー)を感じるわけです。噛むことの報酬としての「味」と「匂い」、まさにキュウリの醍醐味が感じられるものと思います。チューインガムを噛んでも「咀嚼」はできますが、あらかじめ添加された香料以外のニオイの発見はありません。キュウリは微妙な食感の変化と香りの発揚も楽しめ、飽きがこない、まさに噛むための野菜です。牛肉にしても、ネギにしても軟らかいのがおいしいとされますが、キュウリだけは「硬さ」にこだわった品種開発がなされています。
 マスコミでは、食品を扱う場合には「有効成分」中心に語られます。成分だけならジュースや錠剤でも摂取可能です。野菜を食べましょうという背景には、ジュースにして飲むのではなく、自分の歯を使ってよく噛みましょうという意味合いもあるはずです。わけのわからない化学物質名よりも、素直に食べる楽しみ、噛む喜びを、マスコミの方にはお伝えいただければと願うものです。