野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

ビーツが血圧を下げる(その3)

2011-06-19 12:43:29 | Weblog
 ビーツジュースの飲用により血圧が下がり、これはビーツに豊富に含まれるカリウムの作用であるとテレビ番組で放送されておりました。ビーツ中のカリウム含量は100g中に460mgと食品成分表にかかれております。ホウレンソウなら、690mg、パセリなら1000mgですが、根菜類のダイコン230mg、ニンジン280mgと比べれば、含量は高いのかもしれません。medlineのアブストラクトでは、500mlのビートジュースを飲むと3時間後に最大で10mmHg程度血圧が下がったとされます。500mlのビートジュース中に含まれていたと推定されるカリウムは2グラム余です。トマトジュースなら1L弱、オレンジシュースなら1Lと少しでとれる量なので、カリウムだとすれば、必ずしもビーツでなければならないとはいえません。そもそも、カリウムがナトリウムと拮抗的に働いたとしても、長期的にはナトリウム感受性の高血圧患者の血圧を下げるかもしれませんが、短時間に効果を現すものでしょうか?(このあたりは専門外です。)元の論文に従い、(カリウムではなく)ビーツ中の硝酸イオンが血圧を下げたと放送すべきではなかったかと考えます。オレンジシュースやトマトジュースでは、硝酸イオンは十分には摂取できません。
 シュウ酸については確かにビーツにおいて問題視され、調査された報告が最近まとめられております。J. Amer. Soc. Hort. Sci. 136, 54-60 (2011) この文献では、多くの品種のビーツの葉と根についてシュウ酸を比較しており、根については、総シュウ酸で 95-142mg/100g とされます。ホウレンソウの葉よりは1ケタ低い値です。お茶も一部では、シュウ酸含量が高いと書かれていますが、ビーツジュースを飲用する場合、シュウ酸濃度はホウレンソウジュースとお茶の中間くらいになるでしょう。この量を毎日飲むことが、腎結石のリスクを増やすのか、あるいは他のミネラルの吸収をどの程度阻害するのかについては、飲み方や体質にもよるだろうとしか言えません。
 英国では、ビーツジュースが販売されているそうですが、日本ではえぐみ成分とされるシュウ酸が多量に溶けたジュースを英国人はおいしいと思って飲んでいるのか否かの方が、個人的には知りたいところです。