平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

皇室の慶事と皇室典範

2006年02月08日 | Weblog
秋篠宮妃・紀子様が第3子をご懐妊という報は、久々に明るいニュースです。

現在、論議がやかましくなっている皇室典範の改正問題は、9月末までペンディングにすべきです。

なぜかといいますと、女性天皇、女系天皇に対する国民世論が必ずしも統一されていないからです。それに対する反対が無視できないほど強い中で、有識者会議の結論をそのまま国会で多数決で強行したならば、国論が分裂します。今国会で愛子様を徳仁殿下の次期皇位継承者と決めたあとに、もし紀子様に男児がお生まれになった場合、必ずやその方を真の皇位継承者として戴こうとする人々が出てきます。そうなっては、天皇の地位をめぐって争いが繰り広げられた南北朝の二の舞になります。

それは天皇家の不幸であり、日本の不幸です。

天皇は「日本国民統合の象徴」(日本国憲法第1条)です。天皇の座を「国民分裂の争点」にする愚は避けなければなりません。

今度のお子さまもまた女児であった場合、そのときこそ、女性天皇、女系天皇も含めて、皇位継承のあり方を、国民の間で徹底的に議論し、国民大多数のコンセンサスを形成すればよいのです。わずか半年待つだけです。歴史的にわかっているだけでも千年にわたる伝統をどうするかの問題ですから、事は慎重に扱う必要があります。

もちろん、秋篠宮様の第3子が男子であったとしても、その方に男子のお子さまが生まれる保証はどこにもありません。現在のように、男系だけで皇統を未来永劫、継承するというのは、かなり困難であることはたしかです。しかし、これから50年もすれば、世の中はすっかり変わり、人類の多くが神の心をはっきりと知るようになりますから、誰がその時代の天皇=「天の白い王」であるかということは、なんの疑いもなくわかるようになるでしょう。

そのような時代が来るまで、世界平和樹立のために重大な天命を持っているこの日本を分裂・混乱させてはならないと思います。



(19)映画『ザ・コーポレーション』

2006年02月07日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (19)

最近話題の映画『ザ・コーポレーション』は、グローバル企業の反社会的・反環境的行動を描いています。この映画は、ポジラックの製造元モンサント社の問題も取り上げています。

映画の「イントロダクション」より――

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最近日本でも話題になった、企業買収の際に問われる「株式会社は誰の物か?」という議論、法令を破り連続する企業の不祥事の「原因」、そして郵便事業の「民営化の是非」といった問題の答えを導いてくれるのがこの『ザ・コーポレーション』です。

『ザ・コーポレーション』はカナダのマーク・アクバー、ジェニファー・アボットの共同監督により、ジョエル・ベイカンの「ザ・コーポレーション:わたしたちの社会は「企業」に支配されている」(早川書房)を原作として製作された長篇ドキュメンタリーです。

本作は、2004年サンダンス映画祭で上映され観客賞を受賞したのを始め、2005年カナダ・アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリーを含め全世界の映画祭で25個の賞を受賞、そのうち10個が観客賞を受賞しています。またニューヨークでロングラン上映されたのを始め、世界各国で草の根的に上映され、多くの観客の支持を集めてきました。

株式会社の誕生から、政治システムを超えてグローバル化している企業の正体を描き、現在の企業を一人の人格として精神分析を行うと完璧な“サイコパス(人格障害)”であるという診断結果のもと、すべては利益のために働く機関としての企業の、様々な症例を分析します。

マイケル・ムーア監督、ノーム・チョムスキーMIT教授を始めとする総勢40人の証言や発言を基に構成された『ザ・コーポレーション』は、グローバル化された資本主義社会を生き抜くために必見の“サバイバル・シネマ”です。
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http://www.uplink.co.jp/corporation/story.php

サイコパスとは?

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精神病質者の意。
現在サイコパスという言葉は無く、反社会性人格障害(APD)と変更されている。
サイコパスの特徴は極端に自己中心的で、慢性的な嘘つきで後悔や罪悪感が無く、冷淡で共感が無い。
加えて自分の行動に責任が取れない。
他人への思いやりがない
人間関係を維持できない
他人への配慮に無関心
利益のために嘘を続ける
罪の意識がない
社会規範や法に従えない
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こういう人は、今の世の中に大勢いるようですね。とくに政治家や大企業のトップや有名人の中に。私たちは連日テレビでそういう人たちの姿や言行を目にしています。そういう「反社会性人格障害」者が現在の世界を支配しているのですから、世界がよくなるわけがありません。

モンサント社もサイコパスの大企業です。

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アメリカ、モンサント社が1993年から販売を始めた、遺伝子組み換え牛成長ホルモン薬品rBGH(商品名:ポジラック)。代謝作用が高まり、搾乳量が増えるが、乳腺炎のリスクを高めるため、牛乳への膿汁混入が問題となる。また、抗生物質が食物連鎖で人体に及ぼす影響、乳ガンや大腸ガンの発生を危惧する声もある。フォックス・テレビのスティーヴ・ウィルソンとジェーン・エイカーは、ポジラック問題を取材した番組を制作したが、放送直前に会社側から虚偽の内容への変更を命じられた。「モンサント社からは“放送したらフォックスは重大な影響を受ける”との文書がきました。そして全米一多くのテレビ局を所有するフォックスは、広告収入減を恐れたのです」エイカーとウィルソンは解雇され、その後、内部告発者保護法に基づきフロリダで訴訟を起こした。結果、エイカーは42万5千ドルを勝ち取ったが、フォックスは上訴した。判決は法律倫理に基づいた判断によって覆され、彼女は勝訴金を失った。
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http://www.uplink.co.jp/corporation/log/000887.php

アメリカの裁判所もサイコパスにおかされているようです。

広告収入に依存する民放テレビは、サイコパス大企業の利益に反する番組を流すことはできません。マスメディアもサイコパスにおかされています。それはアメリカでも日本でも同じです。

これまでこのブログで取り上げてきた、レンダリング、肉骨粉、鶏糞・糖蜜飼育、牛の解体処理、へたり牛、狂鹿病、、成長ホルモン、ヤコブ病の集団発生、などの問題を映像で見せられたら、日本人は誰一人として米国産牛肉を食べたいとは思わないでしょう。しかし、NHKをはじめ民放も、こま切れの情報は発しますが、そういう本格的な番組をいまだ作っていません。

NHKですら、いまだに狂牛病問題の番組を制作・放映していないのは、政界・財界からの圧力のためでしょう。

現在のNHKには多くの問題があり、改革が必要なことは当然ですが、広告収入に頼らず、政治的な圧力から自由な公共放送はやはり必要だと思います。そういうことを考えた上で、NHKの改革について考えるべきでしょう。

(18)成長ホルモン

2006年02月06日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (18)

牛が乳腺炎などの病気になぜなるかというと、不自然な飼育方法のためです。

ピーター・ローベンハイムの『私の牛がハンバーガーになるまで』(日本教文社)という本には、次のように書かれているそうです。「BSE&食と感染症 つぶやきブログ」(この連載の情報源の一つです)より――

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酪農牛が置かれている今日の生活環境を考え合わせれば、乳房炎は当然なるべくしてなっている病気と言っていいだろう。酪農家養成講座に参加した時、獣医師はこう説明した。”自然界で暮らす牛はめったに乳房炎にはかかりません。牛は本来食餌の場所と排便の場所が異なるため、乾いた地面の草を食べているからです。乳房炎にかかりやすい状況を作っているのは人為的な生活環境、牛舎へのつめ込みや排便の仕方なのです”。・・・”抗生物質を繰り返し投与しても効き目が現れない慢性乳房炎であれば、牛を早急に処分することが肝心です”と言っていた。
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http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/d/20051111

不自然な飼育方法が乳腺炎の一因です。さらに、現在の牛のかなり多くは成長ホルモンを投与されていますが、成長ホルモンによって乳牛が乳腺炎にかかる比率がさらに高くなるそうです。Hotwiredの2003年9月16日の記事から――

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 組換え牛ソマトトロピン(rBST)とも呼ばれるポジラックは、すでに供給過剰になっている市場にさらに牛乳を供給するだけであり、酪農家の収入は減る一方だという生産者の声もある。しかしモンサント社は、ポジラックを使えば牛の乳量を増やせるので、農家はそれによって低迷から抜け出せると主張する。(中略)
 米農務省(USDA)は、米国の酪農家の約17%がrBSTを使用し、投与されている乳牛は全体の32%にあたると発表した(PDFファイル)。その大半が、乳牛を数千頭単位で飼っている大規模農家だという。
 ポジラックは、牛が乳を分泌するときに出す成長ホルモンから分離した遺伝子で作られている。この遺伝子を大腸菌に注入し、容器内で急速に培養する。これを牛に注射すると、牛が毎日出す乳の量が増えるだけでなく、乳を出す期間も長くなる。農家によると、乳を出す期間が延びるのは平均30日ほどだが、もっと長くなる場合もあるという。1155日間も乳を出しつづけた例もある。ポジラックを投与された牛の大半は、投与されなかった牛よりも約25%乳量が増えている。(中略)
 小規模農場がrBSTを使わないのは、時間とコストがかかるという理由のほかに、ホルモンが牛に及ぼす副作用を嫌っているからだ。カナダ保健省が1999年に出した報告書は、rBSTを投与した牛は乳腺炎にかかる率が最大25%増加し、それによって牛の体細胞、すなわち膿が牛乳に混じる確率も高くなることを示している。
 この調査はまた、rBSTにより牛の不妊症が18%、四肢の運動障害が最大50%増加すると報告している。このデータに基づき、カナダ当局はrBSTを認可しなかった。
 欧州連合(EU)15ヵ国、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーも同じ理由でrBSTを認めていない。認可しているのはブラジル、南アフリカ、パキスタン、米国など19ヵ国だ。
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http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20030918205.html

ポジラックという成長ホルモンを製造・販売しているのはモンサントという会社ですが、この会社は、害虫が食べると死んでしまったり、除草剤にも枯れないという、遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシを製造・販売している会社です。モンサント社は、成長ホルモンを使っていないアメリカの酪農家が、自社製の牛乳に「人工ホルモン不使用」と書くことは「不当表示」だとして、それを禁止させようとしています。(上記Hotwiredの記事)

それが不当表示だというのであれば、「有機栽培」とか「遺伝子組み換え大豆不使用」とか「米国産牛肉不使用」いう表示も「不当表示」ということになります。

ポジラックは牛の成長ホルモンを遺伝子工学で製造したものです。成長ホルモンを使うと、牛に様々な障害が起こります。とくに牛が乳腺炎を起こしやすくなり、膿が牛乳に混入する危険性があります。また、牛が急速に成長するので、大量の濃厚飼料を与えなければなりません。そこに肉骨粉が必要になります。肉骨粉を与えていると、BSEの危険が生まれます。BSE牛が乳腺炎になると、そこにプリオンが蓄積され、牛乳にプリオンが含まれる可能性もあります。「成長ホルモン+肉骨粉」という組み合わせは、きわめて危険ということになります。

家畜にはポジラック以外の抗生物質や人工ホルモンが使用されていますが、これも重大な問題なのです。牛肉に残留した薬剤が、発ガンなど人体に悪影響を及ぼす懸念があります。EUやオーストラリアは、アメリカが成長ホルモンを使っているので、アメリカからの牛肉を輸入禁止にしています。「グローバル・スタンダード」が大好きな日本は、世界の趨勢に準じてなぜ同じ措置をしないのでしょうか。



(17)炎症部位にプリオン

2006年02月04日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (17)

最初に昨日のニュースから――

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【ワシントン2日時事】米農務省監査局(OIG)は2日、米国のBSE(牛海綿状脳症)対策の柱である脳や脊髄(せきずい)など特定危険部位除去の検査態勢について、「調査対象の12施設のうち9施設で適当かどうか判定できなかった」とする監査報告書を発表した。
 日本は特定危険部位に指定している脊柱(せきちゅう)の混入を受けて米国産牛肉の輸入を1月20日から再停止している。ジョハンズ農務長官は牛肉処理の安全性を強調しているが、「身内」の監査局からの報告で日本で米国の検査態勢に対する不安が高まりそうだ。 (時事通信) - 2月3日15時1分更新
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アメリカ自身が、自国の検査態勢が杜撰だ、と認めているわけです。ジョハンズ氏は嘘をついていたことになります。

さて(15)で、炎症を起こした羊の乳腺にプリオンが見つかったことを述べました。炎症を起こすと、その場所にプリオンが蓄積される生体メカニズムがあるようです。やはり農業情報研究所のサイトから――

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 BSE、vCJD等の海綿状脳症を引き起こすとされる異常プリオン蛋白質は、典型的には神経組織・リンパ組織に蓄積する。我々は、これが蓄積するのは脳・脊髄や一定の免疫組織などだから、仮に牛がBSEに感染していても、これら特定危険部位(SRM)と呼ばれる組織を食べなければ病気が移ることはない、牛肉は食べても安全だなどと信じ込まされている。これを胡散臭くさせる知見がまったくなかったわけではない。最近、日本でも高齢感染牛の末梢神経組織への蓄積が発見されたばかりだ。肉を含むほかの部位だって安全とはいえないのではないかという懸念はあった。この懸念をさらに高めるような新たな研究が発表された(Adriano Aguzzi et al,Chronic Lymphocytic Inflammation Specifies the Organ Tropism of Prions,Science:express,05.1.20)。 

 この研究を発表したのは、03年、vCJDで亡くなった人の筋肉に微量の異常プリオン蛋白質を検出、感染動物の肉もこれを含む可能性を示唆した病理学者・Adriano Aguzziを含むスイス・チューリッヒ大学病院、英国・神経病研究所、米国・エール大学医学校の国際研究チームである。腎臓、膵臓、肝臓の五つの炎症を持つマウスに異常プリオンを投与し、すべてのケースで、これら異常プリオン蛋白質が蓄積されるはずのない器官にそれが蓄積することを発見した。研究者は、その理由は確かではないが、免疫反応が関係していると見る。慢性的リンパ球炎症がこの蓄積を可能にしたと言う。器官に炎症があれば免疫システムが病気と闘うためのリンパ球と呼ばれる血液細胞を生産する。これらの細胞がリンフォトキシンなる物質を生産、正常な細胞を異常プリオン複製が可能な細胞に変える反応の引き金になるのではないか。リンフォトキシン受容体を欠くマウスでは炎症を起こした器官に異常プリオンは見つからなかった。

 これはマウスで確認されたことだが、牛についても同様なことが考えられる。もしそうだとすると、感染牛のこれら組織は食べられないことになる。悪いことに、これらの組織では脳よりも先に異常プリオン蛋白質の蓄積が始まった。従って、現在の脳を対象とするBSEスクリーニング検査では、このような形で異常プリオン蛋白質を既に多量に蓄積しているかもしれない牛を発見できないことになる。 
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05012101.htm

現在は、BSE牛でも、特定危険部位を取り除けば、その他の牛肉部分は安全、と言われてきました。しかし、炎症を持った牛は、炎症部にもプリオンが蓄積される可能性があるというのです。それどころか、現在のように脳を検査してもわからない、というのです。それでは、いくら脊柱を取り除いても、その牛肉が安全ということにはなりません。ところがアメリカでは、へたり牛まで食用にされていたのです。



(16)『週刊文春』が伝える米国食肉処理場の実態

2006年02月03日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (16)

先週発売の2006年2月2日の『週刊文春』の記事から紹介します。(現在発売中の2月9日号にも米国産牛肉が、メキシコ産としていつわって輸入されている疑惑についての記事がありますが、これについては1月19日の投稿で触れています。)

タイトルは「検査は骨抜き、アメリカ牛は背骨付き」です。

・カリフォルニア州の大手精肉工場を訪れたジャーナリストの椎名玲氏によると、従業員の大半が英語が理解できず、作業を教育するシステムもない。手を切るなどの事故が多発している。チェーンソーでカットするとき、脊髄の髄液が肉に飛び散ることがある。機械でぎりぎりまで肉をそぎ落とすので、危険部位の神経組織が混じる可能性がある。

・昨年6月、デンバーを視察した山田正彦議員によると、月齢チェックは、18歳に満たない女性従業員が、6秒に1頭で流れてくるつるされた牛肉を目で判断している。除去すべき部位を知らない従業員も多い。

・昨年12月の日本側調査団は、orbit(見て回る)しただけで、inspection(査察)していない。米農務省は日本側に〔都合のいい場所の〕見学しか許していない。

・EUは成長ホルモン剤の使用を理由に、1999年から米国産牛肉の輸入を一切禁止している。(※この問題についてはあとで取り上げます)

・オーストラリアの食肉工場では、輸入国のロシア、中国、マレーシア、グアテマラは1年ごとに、米国は2年ごとに、本国政府の検査官が来て監視している。日本は一度も来たことがない。

・EUは北海道産のホタテを輸入禁止にしたが、EUの検査官が抜き打ち検査をしたときに、工場にカモメが飛び込んできて、糞を落としたから。買い手が生産者に厳しい注文をつけるのは当然。

1月23日に私は、「現在、徹底しなければならないのは、全頭検査ではなく、20ヶ月以下の牛も含めて、特定危険部位の完全な除去なのです」と書きましたが、これは撤回させていただきます。作業中に「脊髄の髄液が肉に飛び散る」のであれば、特定危険部位でない肉でも、プリオンに汚染されている可能性があるからです。

極端な言い方ですが、今日では牛肉はフグと同じような食べ物になりつつあるのかもしれません。フグをさばくためには、それなりの訓練を受けたフグ調理師の資格が必要です。ところがアメリカでは、資格のない素人がフグ(牛)をさばいているようなものです。フグ毒はすぐに判明しますが、狂牛肉がヤコブ病になって現われるには潜伏期間があります。

日本の食料の自給率はカロリーベースで40%にすぎません。60%は海外からの輸入です。それが大甘の検査で日本人の口に入っているのです。牛肉だけの問題ではありません。


(15)母子感染と水平感染

2006年02月02日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (15)

羊のプリオン病スクレイピーの名称は、scrape(こする)に由来します。この病気にかかると、羊が体にかゆみを覚え、体を木や柵などにこすりつけるからだそうです。

羊の間ではスクレイピーが母子感染、水平感染するようです。

農業情報研究所のサイトより――

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 英国政府実験農場で、狂牛病(BSE)に感染させた羊が生んだ子羊のBSE感染が確認された(S. J. Bellworthy et al.,Natural transmission of BSE between sheep within an experimental flock,Veterinary Record, 2005 157-7;http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/reprint/157/7/206)。これは、自然の条件の下で(羊にBSE感染物質を食べさせる、あるいは接種する実験によってではなく)、BSEが羊の間で伝達することを初めて実証したものだ。

 政府の獣医試験機関研究者は、BSE感染物質5mgを食べさせた2頭の雌羊が生んだ子羊が、出生から546日後、扁桃に感染の兆候を示した後に死んだことを明らかにした。母羊たちは、出産時には病気の症候を示さなかったが、その後、それぞれ73日、198日後に発症した。子羊は母親の子宮のなかで感染したのか、出生の直前または直後に感染したのかはわからない。出産時に出る分泌液を通してか、別のルートでの感染も考えられる。ただ、いままでのところ、外見上感染していない他の羊(つまり母親)から病気が移った可能性が非常に高いという。

 これまで疑いはあった(牛のBSE発生率は、感染牛の子において僅かながら高い)ものの確証はなかった母子感染、あるいは水平感染の可能性が示されたわけだ。

 ということは、羊群のなかにBSE感染羊が存在した(する)とすれば、羊のBSEが広く拡散している(拡散する)可能性があるということだ。羊や山羊では、BSE感染性を持つ部位は牛より広範囲に広がっており、大容量での実験的感染では血液やリンパ組織にも感染性が認められている。従って、感染羊1頭のがもつ危険性は、牛1頭よりもはるかに大きい。もし羊のBSEが拡散しているとすれば、人間のBSE感染リスクは大きく膨らむだろう。
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05081801.htm

羊の母子感染、水平感染のメカニズムはまだ正確にはわかっていませんが、鹿のCWDも同じメカニズムで母子感染、水平感染するものと思われます。

母子感染の原因として疑われるのは、母乳からの感染です。同じく農業情報研究所のサイトより――

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 研究者は100万頭以上の羊がいるサルジニア島に渡り、遺伝的にスクレイピーに罹りやすい261頭の羊を分析した。そのうち7頭はスクレイピーに罹っており、4頭は乳腺に炎症をもっていた。これら4頭のすべての乳腺に異常プリオン蛋白質が発見され、他の羊では発見されなかった。ネイチャー・ニュースは、これは感染動物の乳に異常プリオン蛋白質が存在する可能性を示唆すると言う。

 この研究では、乳自体は分析が難しく、異常プリオン蛋白質を発見できなかったが、Adriano Aguzzは発見されると予想している。彼は、「異常プリオン蛋白質が乳中に存在しないということはありそうにない」と言う。バンクーバー・ブリティッシュ・コロンビア大学のプリオン研究者であるNeil Cashmanもこれを恐れており、人々はBSEの牛の乳に異常プリオン蛋白質がないかどうか調べてきたが発見されていない、「しかし、乳腺に炎症をもつBSEの牛については調べてこなかった」と言う。

 もしも乳中に異常プリオン蛋白質が存在するとすれば、異常プリオン蛋白質に汚染された牛肉だけでなく、汚染牛乳の消費により人間がBSEの人間版である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)になるのではないかという懸念が生じる。Cashman氏は、「これは深刻な問題を提起する」と言う。
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05110401.htm

スクレイピー羊の乳腺の中にプリオンがあれば、母乳の中にもそれが含まれている可能性があります。「異常プリオン蛋白質が乳中に存在しないということはありそうにない」。スクレイピー羊の母乳にプリオンが存在するとすれば、BSE牛の乳、すなわち牛乳にもプリオンが含まれる可能性が出てきます。日本で見つかった大部分のBSE牛は、雌のホルスタイン種、すなわち乳牛です。牛肉を食べなければ安全、ということにはなりません。まさに「これは深刻な問題を提起する」と言わざるをえません。


認知症(2006年1月)

2006年02月01日 | バックナンバー
 社会の高齢化が進む中、認知症患者が増えている。以前は痴呆症と呼ばれていたが、その言葉はよくないということで、最近では認知症という言葉が用いられる。筆者の周囲にも、認知症の家族をかかえて、苦労している知人がいる。

 人間は年齢とともに自然に肉体諸器官が老化し、衰え、やがて死亡する。これは、人間も生物の一種である以上、避けられない運命である。脳も肉体器官の一部であるから、やはり加齢とともに衰える。それが極度に進んだ状態が認知症である。最近では、まだそれほどの年齢でないにもかかわらず、認知症になる人もいるという。それは、車やコンピュータや電化製品などの文明の利器に依存しすぎた、不自然な生活に起因しているのかもしれない。

 多くのお年寄りの願いは、「家族に迷惑をかけずに、ぽっくり死にたい」ということである。その願いを叶える「ぽっくり寺」や「ぽっくり地蔵」なるものまで存在するという。認知症になって自分の人格が崩壊し、家族や周囲の人々に大きな迷惑をかけることは、誰しも避けたい。また社会全体としても、認知症患者が増えることは、介護のための経済負担が増大することを意味する。

 昨年十一月二十六日のNHK教育テレビは、脳科学者・川島隆太教授(東北大学)の認知症研究について報道していた。川島教授の研究によると、文章の音読や簡単な計算を毎日、短時間でも続けると、大脳前頭前野の血流が増大し、脳機能が回復し、認知症が大きく改善するという。いくつかの具体的なケースも報告されていた。川島教授は、「脳は鍛えることができる」と述べている。筋肉は使わなければ衰えるし、使えば鍛えることができるが、脳も同じなのである。それが、音読と計算という簡単な訓練でできるというのが、ありがたい。この事実は、認知症患者をかかえる家族ばかりではなく、いずれは認知症になるかもしれない可能性がある老年世代にとっても、大きな福音であろう。

 長年、修行を積んでいる仏教僧の中には、高齢になっても驚くほど健康で、頭脳明晰な方が見うけられる。規則正しい生活と質素な食事のほかに、読経や瞑想もよい影響を与えているのだろう。読経はまさに、脳を鍛える音読の一種であるし、坐禅などの瞑想も、大脳前頭葉の活動を活発化させることが知られている。

 私たちは、老化による病気や認知症の発生をいたずらに恐れる必要はない。日頃の生活習慣と努力によって、死ぬまで健康を保ち、脳の力を維持することができるのである。筆者もそろそろ若いとは言えない年齢になったが、肉体と脳を健全に鍛え、他人に依存することのない老年を迎えたいと思っている。