平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

(17)炎症部位にプリオン

2006年02月04日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (17)

最初に昨日のニュースから――

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【ワシントン2日時事】米農務省監査局(OIG)は2日、米国のBSE(牛海綿状脳症)対策の柱である脳や脊髄(せきずい)など特定危険部位除去の検査態勢について、「調査対象の12施設のうち9施設で適当かどうか判定できなかった」とする監査報告書を発表した。
 日本は特定危険部位に指定している脊柱(せきちゅう)の混入を受けて米国産牛肉の輸入を1月20日から再停止している。ジョハンズ農務長官は牛肉処理の安全性を強調しているが、「身内」の監査局からの報告で日本で米国の検査態勢に対する不安が高まりそうだ。 (時事通信) - 2月3日15時1分更新
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アメリカ自身が、自国の検査態勢が杜撰だ、と認めているわけです。ジョハンズ氏は嘘をついていたことになります。

さて(15)で、炎症を起こした羊の乳腺にプリオンが見つかったことを述べました。炎症を起こすと、その場所にプリオンが蓄積される生体メカニズムがあるようです。やはり農業情報研究所のサイトから――

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 BSE、vCJD等の海綿状脳症を引き起こすとされる異常プリオン蛋白質は、典型的には神経組織・リンパ組織に蓄積する。我々は、これが蓄積するのは脳・脊髄や一定の免疫組織などだから、仮に牛がBSEに感染していても、これら特定危険部位(SRM)と呼ばれる組織を食べなければ病気が移ることはない、牛肉は食べても安全だなどと信じ込まされている。これを胡散臭くさせる知見がまったくなかったわけではない。最近、日本でも高齢感染牛の末梢神経組織への蓄積が発見されたばかりだ。肉を含むほかの部位だって安全とはいえないのではないかという懸念はあった。この懸念をさらに高めるような新たな研究が発表された(Adriano Aguzzi et al,Chronic Lymphocytic Inflammation Specifies the Organ Tropism of Prions,Science:express,05.1.20)。 

 この研究を発表したのは、03年、vCJDで亡くなった人の筋肉に微量の異常プリオン蛋白質を検出、感染動物の肉もこれを含む可能性を示唆した病理学者・Adriano Aguzziを含むスイス・チューリッヒ大学病院、英国・神経病研究所、米国・エール大学医学校の国際研究チームである。腎臓、膵臓、肝臓の五つの炎症を持つマウスに異常プリオンを投与し、すべてのケースで、これら異常プリオン蛋白質が蓄積されるはずのない器官にそれが蓄積することを発見した。研究者は、その理由は確かではないが、免疫反応が関係していると見る。慢性的リンパ球炎症がこの蓄積を可能にしたと言う。器官に炎症があれば免疫システムが病気と闘うためのリンパ球と呼ばれる血液細胞を生産する。これらの細胞がリンフォトキシンなる物質を生産、正常な細胞を異常プリオン複製が可能な細胞に変える反応の引き金になるのではないか。リンフォトキシン受容体を欠くマウスでは炎症を起こした器官に異常プリオンは見つからなかった。

 これはマウスで確認されたことだが、牛についても同様なことが考えられる。もしそうだとすると、感染牛のこれら組織は食べられないことになる。悪いことに、これらの組織では脳よりも先に異常プリオン蛋白質の蓄積が始まった。従って、現在の脳を対象とするBSEスクリーニング検査では、このような形で異常プリオン蛋白質を既に多量に蓄積しているかもしれない牛を発見できないことになる。 
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05012101.htm

現在は、BSE牛でも、特定危険部位を取り除けば、その他の牛肉部分は安全、と言われてきました。しかし、炎症を持った牛は、炎症部にもプリオンが蓄積される可能性があるというのです。それどころか、現在のように脳を検査してもわからない、というのです。それでは、いくら脊柱を取り除いても、その牛肉が安全ということにはなりません。ところがアメリカでは、へたり牛まで食用にされていたのです。