平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

(15)母子感染と水平感染

2006年02月02日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (15)

羊のプリオン病スクレイピーの名称は、scrape(こする)に由来します。この病気にかかると、羊が体にかゆみを覚え、体を木や柵などにこすりつけるからだそうです。

羊の間ではスクレイピーが母子感染、水平感染するようです。

農業情報研究所のサイトより――

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 英国政府実験農場で、狂牛病(BSE)に感染させた羊が生んだ子羊のBSE感染が確認された(S. J. Bellworthy et al.,Natural transmission of BSE between sheep within an experimental flock,Veterinary Record, 2005 157-7;http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/reprint/157/7/206)。これは、自然の条件の下で(羊にBSE感染物質を食べさせる、あるいは接種する実験によってではなく)、BSEが羊の間で伝達することを初めて実証したものだ。

 政府の獣医試験機関研究者は、BSE感染物質5mgを食べさせた2頭の雌羊が生んだ子羊が、出生から546日後、扁桃に感染の兆候を示した後に死んだことを明らかにした。母羊たちは、出産時には病気の症候を示さなかったが、その後、それぞれ73日、198日後に発症した。子羊は母親の子宮のなかで感染したのか、出生の直前または直後に感染したのかはわからない。出産時に出る分泌液を通してか、別のルートでの感染も考えられる。ただ、いままでのところ、外見上感染していない他の羊(つまり母親)から病気が移った可能性が非常に高いという。

 これまで疑いはあった(牛のBSE発生率は、感染牛の子において僅かながら高い)ものの確証はなかった母子感染、あるいは水平感染の可能性が示されたわけだ。

 ということは、羊群のなかにBSE感染羊が存在した(する)とすれば、羊のBSEが広く拡散している(拡散する)可能性があるということだ。羊や山羊では、BSE感染性を持つ部位は牛より広範囲に広がっており、大容量での実験的感染では血液やリンパ組織にも感染性が認められている。従って、感染羊1頭のがもつ危険性は、牛1頭よりもはるかに大きい。もし羊のBSEが拡散しているとすれば、人間のBSE感染リスクは大きく膨らむだろう。
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05081801.htm

羊の母子感染、水平感染のメカニズムはまだ正確にはわかっていませんが、鹿のCWDも同じメカニズムで母子感染、水平感染するものと思われます。

母子感染の原因として疑われるのは、母乳からの感染です。同じく農業情報研究所のサイトより――

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 研究者は100万頭以上の羊がいるサルジニア島に渡り、遺伝的にスクレイピーに罹りやすい261頭の羊を分析した。そのうち7頭はスクレイピーに罹っており、4頭は乳腺に炎症をもっていた。これら4頭のすべての乳腺に異常プリオン蛋白質が発見され、他の羊では発見されなかった。ネイチャー・ニュースは、これは感染動物の乳に異常プリオン蛋白質が存在する可能性を示唆すると言う。

 この研究では、乳自体は分析が難しく、異常プリオン蛋白質を発見できなかったが、Adriano Aguzzは発見されると予想している。彼は、「異常プリオン蛋白質が乳中に存在しないということはありそうにない」と言う。バンクーバー・ブリティッシュ・コロンビア大学のプリオン研究者であるNeil Cashmanもこれを恐れており、人々はBSEの牛の乳に異常プリオン蛋白質がないかどうか調べてきたが発見されていない、「しかし、乳腺に炎症をもつBSEの牛については調べてこなかった」と言う。

 もしも乳中に異常プリオン蛋白質が存在するとすれば、異常プリオン蛋白質に汚染された牛肉だけでなく、汚染牛乳の消費により人間がBSEの人間版である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)になるのではないかという懸念が生じる。Cashman氏は、「これは深刻な問題を提起する」と言う。
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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05110401.htm

スクレイピー羊の乳腺の中にプリオンがあれば、母乳の中にもそれが含まれている可能性があります。「異常プリオン蛋白質が乳中に存在しないということはありそうにない」。スクレイピー羊の母乳にプリオンが存在するとすれば、BSE牛の乳、すなわち牛乳にもプリオンが含まれる可能性が出てきます。日本で見つかった大部分のBSE牛は、雌のホルスタイン種、すなわち乳牛です。牛肉を食べなければ安全、ということにはなりません。まさに「これは深刻な問題を提起する」と言わざるをえません。