難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

【再】菅首相の原爆記念日挨拶 生字幕

2011年08月06日 23時00分50秒 | 放送・通信
今朝の広島の原爆記念式典で菅首相の挨拶が生放送だが字幕放送で放送された。
生放送の特別番組だ。

リアルタイム字幕制作か事前に入手したテキストかは分からない。この種の字幕制作の間違いにナーバスになっているNHKだから、事前かもしれない。

事前に分からなければできないというのでは生放送は全部できない。

気になることがある。皇室の挨拶等はリアルタイムの字幕放送はないようだ。あるとすればニュースのように事後放送の場合だ。
たぶん皇室の発言だけに間違えてはいけないと考えているのかも知れない。
しかしそう考えること自体がおかしい。聞こえない人から見れば誰の発言であっても保障すべきと思う。
マスコミ、言論機関が発言者の身分や立場で字幕放送をするしないを判断するのは自殺行為だ。
誰が主権者か、視聴者か考えるべきだ。

原爆記念式典での情報保障に要約筆記はどうなっていのか。
障害者基本法改正法は5日に発効したばかりだ。


ラビット 記
※首相の名前の訂正、番組の種類。

生活のしづらさ実態調査は難聴者の実態が分からない!

2011年08月06日 09時57分35秒 | 障がい者制度改革
全難聴は、生活のしづらさ実態調査について佐藤部会長に以下の要望を送った。
ラビット 記
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総合福祉法部会
座長  佐藤久夫先生
副座長 尾上浩二様

いつもお世話になります。
総合福祉法部会も骨格素案が提示され、大詰めになています。
この総合福祉法の施策の元になる実態調査ですが、先日の総合福祉法部会で提示された案が公表されています。

この内容は、当会が以前から問題としていたことが反映されていません。
佐藤久夫先生が実態調査に付いて、難病関係者に講演されていた講演録がありました。
http://kenkou.life.coocan.jp/siryoubox1/100425benkyokhokoku.pdf
これを読むと、どうして難聴者が漏れるような調査をするのか解せないです。

実態調査については、先の総合福祉法部会の資料に、「資料3生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)の基本骨格(修正案)について」
が出されています。
別添ファイルにあるように、「生活のしづらさ」を図るのに、「食事をする」、「食事のしたく、後片付けをする」、「衣服を脱いだり、着たりする」、「排泄をする」、「入浴をする」、「家の中を移動する」とか身辺的動作が出来るかどうかを具体的な場面をあげて問う他、洗濯、買い物、金銭管理まで問います。
しかし、難聴者やその他の障害者の「意志疎通」が「自分の意志を伝えることが出来る」、「相手の意志を理解できる」と言う設問になり、その回答の選択肢が「誰でも理解できる」、「家族や友人なら理解できる」とあるようにこれは聴覚障害者を想定した設問ではないです。
そこに「介助(手話通訳や機器の使用等)があれば出来る」と取って付けたような選択肢がありますが、聞こえない人がどのように困っているのか、どの程度の人が困っているのかがちっとも浮かび上がりません。
こんな設問では難聴者や聴覚障害者の日常生活における困難度は推し量れません。

私たち難聴者は、聞こえる人に取っては当たり前の「電話をかける」、「テレビを見る、ラジオを聞く」ことが困難です。「地域の集まりやPTAなど複数の人との会議、集まりの内容が分かる」、「集会や講義が分かる」、「街頭や車内のアナウンスが聞こえる」かどうかが重要です。
どういうことかと言うと、「意思の疎通」の具体的な場面を聞かなければ「生活の困難度」が分からないということです。
谷間の障害者である難聴者は、おそらく補聴器等は使っていないでしょう。
これらの人に「機器を使えば出来る」とは答えることはなく、では「誰にでも伝えることが出来る/誰の意志でも理解出来る」と選択するのかというと違います。つまり回答の選択肢がないのです。>難聴者、聴覚障害者のことを全く理解していない調査です。

生活実態調査を問う設問の中に、どうして聞こえの困難度を問うものがないのでしょうか。
ワシントングループの設問を参考にしたとあります。
当初の実態調査の設問には、「補聴器等を使っても聞くことが困難」でした。
これは、ワシントングループの設問の2番目に出てきます。
「②補聴器等の機器を使用しても、聞くことに困難を伴う」

なぜ、当会の佐野委員がこれに反対したか申し上げますと、「補聴器を使っても」とすれば、補聴器を使って聞こえる人が対象外になってしまうこと、眼鏡は装用することで網膜に結ばれる像が矯正されるので見えるようになりますが、補聴器の場合は装用してもすぐ聞こえる訳ではないからです。
補聴器を通した音が脳に届いて理解して初めて「聞こえ」ます。騒音環境下や反響などの影響を強く受けること、早口や一度に多くの言葉を処理できないことなど脳に届くまでと脳での情報処理に障害があるからです。眼鏡と補聴器では「機能障害」の補償の仕組みが違います。

なので、ワシントンレポートにも追加設問が用意されています。
そのワシントン・レポートですが、英語の原文を見たところ、資料には以下の補足質問があげられています。
 i. Do you have difficulty hearing someone talking on the other side of the room in a normal voice?
 部屋の反対側から誰かが普通の声で話して聞こえますか。
 ii. Do you have difficulty hearing what is said in a conversation with one other person in a quiet room?
 静かな部屋で一人の人と会話で言われたことが分かりますか。
http://www.cdc.gov/nchs/data/washington_group/meeting5/WG5_Appendix7.pdf

こうした質問で、聞こえの問題を調査をすることが必要ですが、この設問例が紹介されていません。
東大経済調査READの時も口を酸っぱくしてこういう調査項目では難聴者の実態は測れないということを指摘しましたが、また同じことを繰り返しています。

障害者に限らず人間の生活機能全体の理解のためには、ICFモデルが重要ですが、
これでは心身機能、構造に偏りすぎです。
活動、参加の障害の状況がどうなのか見えないです。

逆に、仕事が出来ずに収入がなく生活が困難という「参加障害」からその元になっている「活動」、「心身機能」、環境因子、個人因子を探っていく手法もあると思います。
ワシントングループの手法がICDHの時代で古いのではないでしょうか。

興味あるデータがあります。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1009.pdf
福祉先進国と言われるスウェーデンの難聴の統計上の定義が書いてあります。
ワシントングループの「補聴器等を使って聞こえが困難な人」と似ていますが「たとえ補聴器を使っても」という条件と「複数の人の間での会話を聞く」という場面設定で、なるほどと思いました。

スウェーデン
聴覚障害者:16歳以上のうち「たとえ補聴器を使っても複数の人の間での会話を聞くことが難しい」と答えた人
人数 1,040千人以上(資料4)
該当年齢の人口に占める割合 14.1%(資料6)

日本
聴覚障害者:18歳以上の「聴覚障害者」
※聴力が両耳70dB 以上(または、一方の耳が90dB 以上、もう一方の耳が50dB 以上)の人
人数  276千人(資料5)
該当年齢の人口に占める割合 0.3%(資料7)

もうひとつは、難聴であることを他人に打ち明けていないという人が多いことです。難聴を自覚していても打ち明けないという人です。
日本も同じと思いますが、どのくらいいるのかは把握出来ていません。