韓国文政権、支持率急落 セクハラ疑惑で女性離反
朝鮮半島 2020/7/22 18:41日本経済新聞 電子版
【ソウル=鈴木壮太郎】
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持率が急落している。
死去した朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のセクハラ疑惑への対応や不動産の高騰に女性や若者が不満を募らせる。
次期大統領選にも影響が出かねないとして、文政権は財政出動や幹部人事刷新などの対応を迫られている。
「被害者はソウル市の人事担当者に何度も被害を訴えたが無視された」。
朴氏からのセクハラ被害を訴えた元秘書の弁護士らは22日に記者会見を開き、市関係者によるほう助疑惑を提起した。
朴氏のセクハラ疑惑の波紋は広がっている。
世論調査会社リアルメーターが20日発表した7月第3週の支持率は45%と、2カ月前の62%から17ポイント下がった。
不支持率は51%となり、新型コロナウイルスの感染拡大で政権批判が強まった3月第2週以来、ほぼ4カ月ぶりに支持率を上回った。
特に文政権の中心支持層だった女性と若者の離反が鮮明だ。女性の支持率は前週から7ポイント下落して44%となり、不支持率(51%)が上回った。
年代別では30歳代の支持率が14ポイント急落して43%となり、不支持率(54%)が上回った。20歳代も不支持が支持を上回る。
支持率急落の背景には文政権が「正義」や「公正」を標榜しながら、身内の不祥事には甘いとの失望がある。
「最低限の礼儀もわきまえないのか」。
朴氏のセクハラ疑惑が大きくなった一因は、与党「共に民主党」の李海●(たまへんに贊)(イ・ヘチャン)代表が10日、記者団に対してとった態度にあった。
朴氏の弔問に訪れた李氏に記者がセクハラ疑惑への党の対応を尋ねると、怒りをあらわにしたのだ。
民主化運動を共に闘った同志の死を悼む思いを抑えられなかったとみられるが、世論は李氏が身内をかばい、被害女性への配慮がないと受け止めた。
李氏は謝罪に追い込まれた。セクハラ疑惑に向き合わず死去した朴氏に向ける女性のまなざしは厳しいが、文大統領も疑惑に沈黙を守る。
不動産対策への不満も募る。
「文在寅にだまされた」。
17日、韓国最大のポータルサイト「ネイバー」でこんなフレーズが検索語第1位になった。
文政権発足から3年でソウルのマンションの平均価格は5割も上昇し、10億ウォン(約9000万円)に迫る。
政府は急騰を抑えようと、金融機関から借りられる上限額を引き下げたが、それによって住宅の購入資金を払えなくなった人が続出した。
30~40歳代を中心とする人が示し合わせて文大統領への不満を書き込んだとされる。
政府は不動産に重税を課し、複数の不動産を所有する人に売却を迫ったが、高騰は止まらない。
市民団体「経済正義実践市民連合」の調査で、大統領府の高官10人、与党議員43人が複数の不動産を持っていたことも判明し、不満が増幅した。
韓国ギャラップの調査によると、文政権を支持しない理由は「不動産政策」が23%でトップ。「経済・民生」(11%)、「南北関係」(6%)と続く。
文政権は強力な不動産規制で価格抑え込みを狙う一方、巨額の財政出動で新型コロナで冷え込んだ景気の回復をめざす。
外交・安全保障ラインの人事交代で膠着した南北関係もテコ入れする。
人心を一新するため、大統領府の幹部人事の刷新も検討しているもようだ。
政権浮揚の決め手を欠くなか、2021年4月には首都ソウルと第2の都市、釜山の市長を選ぶ選挙が控える。
釜山市でも民主党の市長が今年4月、セクハラで辞任した。
民主党には党所属の公職者が不正や腐敗など重大な過ちで失職した場合、選挙に候補を出さない規定がある。党代表だった文氏が15年につくった。
市長選は22年3月の次期大統領選を占う「前哨戦」。
与党からは「党規を変えてでも候補を出すべきだ」との声が上がりはじめた。だが、ルールを自ら破れば「ご都合主義」と批判され、有権者のさらなる失望を買うリスクもある。
朝鮮半島 2020/7/22 18:41日本経済新聞 電子版
【ソウル=鈴木壮太郎】
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持率が急落している。
死去した朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のセクハラ疑惑への対応や不動産の高騰に女性や若者が不満を募らせる。
次期大統領選にも影響が出かねないとして、文政権は財政出動や幹部人事刷新などの対応を迫られている。
「被害者はソウル市の人事担当者に何度も被害を訴えたが無視された」。
朴氏からのセクハラ被害を訴えた元秘書の弁護士らは22日に記者会見を開き、市関係者によるほう助疑惑を提起した。
朴氏のセクハラ疑惑の波紋は広がっている。
世論調査会社リアルメーターが20日発表した7月第3週の支持率は45%と、2カ月前の62%から17ポイント下がった。
不支持率は51%となり、新型コロナウイルスの感染拡大で政権批判が強まった3月第2週以来、ほぼ4カ月ぶりに支持率を上回った。
特に文政権の中心支持層だった女性と若者の離反が鮮明だ。女性の支持率は前週から7ポイント下落して44%となり、不支持率(51%)が上回った。
年代別では30歳代の支持率が14ポイント急落して43%となり、不支持率(54%)が上回った。20歳代も不支持が支持を上回る。
支持率急落の背景には文政権が「正義」や「公正」を標榜しながら、身内の不祥事には甘いとの失望がある。
「最低限の礼儀もわきまえないのか」。
朴氏のセクハラ疑惑が大きくなった一因は、与党「共に民主党」の李海●(たまへんに贊)(イ・ヘチャン)代表が10日、記者団に対してとった態度にあった。
朴氏の弔問に訪れた李氏に記者がセクハラ疑惑への党の対応を尋ねると、怒りをあらわにしたのだ。
民主化運動を共に闘った同志の死を悼む思いを抑えられなかったとみられるが、世論は李氏が身内をかばい、被害女性への配慮がないと受け止めた。
李氏は謝罪に追い込まれた。セクハラ疑惑に向き合わず死去した朴氏に向ける女性のまなざしは厳しいが、文大統領も疑惑に沈黙を守る。
不動産対策への不満も募る。
「文在寅にだまされた」。
17日、韓国最大のポータルサイト「ネイバー」でこんなフレーズが検索語第1位になった。
文政権発足から3年でソウルのマンションの平均価格は5割も上昇し、10億ウォン(約9000万円)に迫る。
政府は急騰を抑えようと、金融機関から借りられる上限額を引き下げたが、それによって住宅の購入資金を払えなくなった人が続出した。
30~40歳代を中心とする人が示し合わせて文大統領への不満を書き込んだとされる。
政府は不動産に重税を課し、複数の不動産を所有する人に売却を迫ったが、高騰は止まらない。
市民団体「経済正義実践市民連合」の調査で、大統領府の高官10人、与党議員43人が複数の不動産を持っていたことも判明し、不満が増幅した。
韓国ギャラップの調査によると、文政権を支持しない理由は「不動産政策」が23%でトップ。「経済・民生」(11%)、「南北関係」(6%)と続く。
文政権は強力な不動産規制で価格抑え込みを狙う一方、巨額の財政出動で新型コロナで冷え込んだ景気の回復をめざす。
外交・安全保障ラインの人事交代で膠着した南北関係もテコ入れする。
人心を一新するため、大統領府の幹部人事の刷新も検討しているもようだ。
政権浮揚の決め手を欠くなか、2021年4月には首都ソウルと第2の都市、釜山の市長を選ぶ選挙が控える。
釜山市でも民主党の市長が今年4月、セクハラで辞任した。
民主党には党所属の公職者が不正や腐敗など重大な過ちで失職した場合、選挙に候補を出さない規定がある。党代表だった文氏が15年につくった。
市長選は22年3月の次期大統領選を占う「前哨戦」。
与党からは「党規を変えてでも候補を出すべきだ」との声が上がりはじめた。だが、ルールを自ら破れば「ご都合主義」と批判され、有権者のさらなる失望を買うリスクもある。