北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十六年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.08.24)

2014-08-21 23:52:06 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 はじめに。8.20広島県豪雨災害は同時多発土石流により死者行方不明者が70名に迫るものとなっています。

Himg_0254 第13旅団、中部方面混成団、中部方面航空隊、呉地方隊が昨日の時点で災害派遣に出動しており、被害の全容は未だ掴めず本日2100時の総務省報道発表の時点で更に数十名規模の行方不明者が追加されました。ただ、防衛省報道発表はHP反映に報道発表よりも確認時間を要する為、明日改めて掲載することとしましょう。

Aimg_4312 さて、今週末の自衛隊関連行事を掲載することとします。今週末最大の自衛隊関連行事は富士総合火力演習、日曜日が本番であり一般公開日です。日本で最大規模の公開実弾演習、毎回一般公募の競争率が増大し続けていますが、今回もYOUTUBE同時中継が行われるとのこと。

Aimg_4801 富士教導団を中心とした教育目的と広報を兼ねた実弾演習である富士総合火力演習は、主要装備品の射撃展示を前段演習で行い、実際の実任務を想定した一連の行動を後段演習として展示、近年は島嶼部防衛を念頭とした大規模着上陸対処等を後段演習の想定に加えています。

Mimg_7359 自衛隊関連行事ですが、自由に見学できる行事としましては、白老港まつりとして北海道にて掃海艇ながしま一般公開が日曜日に行われます。一般公開は0900時から1130時までと1300時から1500時までの時間に行われます、なお、体験航海は行われません。

Nimg_9031 東松島夏祭り、航空自衛隊関連行事ではなく一般の催事ですが、こちらに松島基地よりブルーインパルスが飛行展示を予定しています。羽田神輿練り歩きや八鷹神輿練り歩きに鼓笛隊演奏、模擬店など伝統的な夏祭りですが、土曜日の1330時から1400時までブルーインパルスが飛行展示を予定しており、この他自衛隊装備品展示なども行われるとのことでした。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

 

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シンガポール艦横須賀親善訪問、フリゲイト“イントレピッド”が親善訪問(8月20日~25日)

2014-08-20 23:53:38 | 世界の艦艇

◆ホストシップに護衛艦ゆうだち、親善訓練も予定

 海上自衛隊によれば本日、シンガポール艦が横須賀基地を親善訪問したとのこと。

Simg_2435 海上自衛隊は本日、シンガポール艦の親善訪問を発表しました。親善訪問は本日8月20日から25日までとのことで、横須賀入港は本日0900時とのことでした。入港したのはフォーミダブル級フリゲイトのイントレピッド、本稿では以前横須賀に入港した同型艦のステッドファストの写真を用いて紹介します。

Yimg_5348 海上自衛隊はホストシップとして護衛艦ゆうだち、を派遣しています。指揮官について。イントレピッド艦長はアーロンベンヤオチェン海軍中佐、護衛艦ゆうだち艦長は伊保之央2佐で、シンガポール海軍艦艇の我が国親善訪問は1986年の第一回から12回目となりました。

Simg_2517 シンガポール軍はアジア地域において比較的早い時期から早期警戒機や空中給油機の導入を進めるなど軍の近代化に熱心でしたが、2000年代より新たに海軍力の外洋海軍への転換を進めており、大型揚陸艦や欧州製中古潜水艦の導入を開始、同じ頃フランス製のステルスフリゲイトとしてフォーミダブル級の導入を始めています。

Simg_2666 フォーミダブル級は一番艦フォーミダブルが2002年より建造開始となり2007年に就役、その後イントレピッド、ステッドファスト、テネシャス、ストルワート、 シュープリームと2009年までに6隻が建造、我が国の護衛艦と比較すれば大きくはありませんが、従来はミサイル艇までしか有さないシンガポール海軍にとり大きな外洋への一歩となりました。

Mimg_5979 フォーミダブル級フリゲイト、満載排水量は3800tで、はつゆき型護衛艦4000t~4200tよりもやや小型ですが、小型護衛艦である護衛艦あぶくま型の2900tよりは大型で、全長114.8m、CODAD推進方式により18ノット航行時に4200浬の航続距離を有しています。また、フォーミダブル級フリゲイトはSH-60系統の哨戒ヘリコプター運用能力を有しているのも特色と言えるでしょう。

Simg_3079 本型はフランス海軍のアキテーヌ級防空駆逐艦にも搭載されているヘラクレスレーダーを搭載し、高空に対しては200km、低空小型目標でも20kmの距離で捕捉する能力を有し、艦隊防空用にも運用可能なアスター30艦対空ミサイル16発、個艦防空用のアスター15艦対空ミサイルと共にこの水準の水上戦闘艦としては充実した能力を有しています。

Simg_3089 このほか対艦ミサイルとしてハープーンを搭載、比較的充実した対空対艦能力を有していますが反面潜水艦に対処するソナーは船体に有さず、艦尾から数km圏内の潜水艦探知を想定した曳航式可変深度ソナーEDO980を必要に応じ展開させ、対潜捜索を行い対処する三連装短魚雷発射管を有し対処可能です。

Kuramaimg_8665 イントレピッドは25日月曜日の0900時に横須賀を出港予定で、今回は帰港中の一般公開は予定されていませんが横須賀軍港めぐり遊覧船などの船上からは見る事が出来るでしょう。出航後、ホストシップの護衛艦ゆうだち、とともに親善訓練の実施が予定されているとのことでした。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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榛名防衛備忘録:野党の集団的自衛権と徴兵制論争を結びつける論調への一視点

2014-08-19 23:48:17 | 国際・政治

◆そうした主張を行う政党が与党となれば現実に

 集団的自衛権と徴兵制論争を結びつける論調が一部野党やその連携する団体などで行われていますが。

Gimg_2330 我が国において徴兵制に軍事的経済的利点は無い、これは多くの識者の共通する視点です。長大な陸上国境を持つわけでもありませんし、口述しますが利点がない。しかし、それでは他の識者の方々の二番煎じです。それでは本当にまったくないのか、というところを本日は別の視点から見てみましょう。

Img_3613  まず、現代戦を念頭に置いた場合、徴兵制は逆効果です。現代の陸上戦闘は高度に専門化されており、例えば小銃手といっても小銃だけを扱えればよい訳ではありません、小銃に加え通信機や暗視装置を駆使し、装甲車両の運用や整備、脅威対象の装備も高度化しているため、訓練度合が低ければ使い物になりません。

Img_9377 更に経済的にも、例えば日本の人口の三分の一である韓国が徴兵により50万の兵員を維持していますので、韓国並の徴兵制度を敷けば150万と現在の10倍の陸上戦力を持つことが出来ますが、それに合わせ各種装備を十倍に拡大することは現実的ではない。

Abimg_0906 例えば戦車を3000両に、装甲車両を25000両に、火砲を3000門に、迫撃砲を15000門に、ヘリコプターを4000機に拡大できなければ部隊当たりの火力は大幅に下がり、拡大すれば経済的にもちません。そして地形上展開可能な部隊規模は限られていますから、質的に劣る部隊は全ての局面で不利を強いられる。

Himg_6440 自衛隊では自衛官としての基礎的な教育として三ヶ月間の前期教育、部隊での職種専門教育の三ヶ月間を後期教育として、部隊に配置されるまでの教育で六か月間を要しています。欧州で最後まで制度として徴兵制を維持した諸国の徴兵期間は半年間でした。

Img_9120  これでは予備役兵の訓練も厳しいといえ、特に自衛隊では半年程度の徴兵では教育だけに全力を投じる事となり、実戦では使えない弱体化となります。若者を鍛えるために徴兵制を、という視点もあるようですが、鍛えるならば教育で行うべきで自衛隊の第一任務である国土防衛を蔑ろとするべきではありません。

Abimg_5446 日本の技術力があれば教育期間を半減できるという論調を聞いたことがありますが、根拠は無く、そんなことが出来るならば義務教育水準を四年半に圧縮できるカリキュラムとして先に示してほしい、とも思うところ。結局、軍事面と経済面で徴兵制は時代錯誤と言わざるを得ないのです。

Img_6979 ですから、軍事面で多少なりとも知識がある方からは、徴兵制の必要性という視点は聞きません。そして自衛官そのものの競争倍率は一般幹部候補生で100倍以上の水準となっており、人は充分足りています。しかし、日本が将来的に徴兵制を採らない保証があるのか、と問われれば、軍事を理解しない方々が政治的に導入する場合ならばある、といえるわけです。

G12img_1250 現在の一部野党で、集団的自衛権が行使されるならば徴兵制が導入される、という主張を行う勢力が政権を採ったならば、徴兵制を行うことによる防衛力へのマイナス要素を理解していないということに他ならず、結局こうした無理解な政党だけが徴兵制を政治的に導入する可能性がある、ということ。

Aimg_2533 また、外国で戦争させる国に反対、という野党がありますが、明らかに外国以外、つまり本土での戦闘を志向しています。この場合、本土での戦闘となれば我が航空及び艦艇基地が機能不随となり、陸上防衛力も空と海との機動力を喪失することなります。

Diimg_9021  海洋国家にとり海が防衛線であり揚がられないという利点と上陸半渡を狙うという利点を喪失しかねないこの状況は手遅れというべき状況ですので、手遅れとなれば非合理ですが、各地に一定規模の部隊を張り付ける必要が生じ、大兵力が必要となります。これは結果的に徴兵制以外ない状況に追い込まれるというもの。

Img_2200 更に東日本大震災では当時の与党民主党が原子力災害へ防護策を準備する東京消防庁に対し担当大臣が恫喝し不十分な状況での原発への展開を強いました。こうした追い込まれるまで無策を強い、結局選択肢が無くなる状況に陥れば、非合理を強いることがある。

Gimg_2585 集団的自衛権行使容認が徴兵制に展開する可能性があるのか、こうした問いを受けた場合当方はこう答えます。現在の自民党政権では有り得ません、しかし、集団的自衛権を容認すれば徴兵制に繋がると主張する野党に政権を任せる事となれば、彼らはそれをやるといっています、というべきでしょうか。

Gimg_8067 そして徴兵制を我が国が導入する軍事的および政治的利点は無いが、軍事的経済的な理解を行わず徴兵制を行う可能性を示唆している野党ならば、政治的に行いかねない危険がある。我が国は民主主義国家であるため、選挙民の判断にゆだねられており、こうした野党の主張を理解し投票行動を行う必要がある、というのは当方なりの理解です。

北大路機関:はるな

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8.16豪雨災害の京都府福知山市と兵庫県丹波市へ第3師団・中方部隊災害派遣

2014-08-18 22:59:15 | 防災・災害派遣

◆第7普通科連隊・第3特科隊・第8高射特科群

 8月16日より続く記録的な降雨量に端を発する豪雨災害へ自衛隊が京都府知事と兵庫県知事からの要請に応じ災害派遣しました。

Simg_1733  自衛隊は平時から防衛出動命令や災害派遣要請を想定し即応体制を採っており、部隊運用計画に応急出動などへの初動部隊を常時編成可能な体制に置くと共に2013年9月1日より災害派遣については初動部隊をFAST-Forceと改め、駐屯地に車両部隊が即応態勢を採っています。

Simg_9650  また、陸上自衛隊は連隊などの主要部隊に都道府県各地域ごとの警備管区を置き、防衛及び災害等に駐屯部隊が即応する全国への部隊配置を展開、これを基盤的防衛力として災害や武力攻撃などの有事に備えており、特に災害派遣の迅速な対応に寄与してきました。

Simg_1446 京都府福知山市における人命救助のための災害派遣要請が京都府知事より第7普通科連隊長へ出されたのは17日0705時、兵庫県丹波市における人命救助のための災害派遣要請が兵庫県知事より第3特科隊へ出されたのは0335時で、自衛隊は即時受理し、災害派遣が開始されています。

Simg_1466 第7普通科連隊は人員40名、車両15両、ボ ート5隻を以て0835時に福知山駐屯地を出発、孤立地域における住民の救助などを実施しました。部隊への災害派遣要請は1650時までに所要の救助が完了したことから撤収要請が出され、災害派遣は完了しました。

Simg_9531 兵庫県丹波市への派遣は警備管区の姫路駐屯地第3特科隊長へ要請が出され開始、兵庫県丹波市市島町のキャンプリゾート施設が豪雨による道路寸断により孤立したことを受けての道路啓かいが必要となり、派遣されました。併せて丹波市市島町徳尾において行方不明者捜索要請があり、こちらにも派遣されることとなります。

Simg_8005 青野原駐屯地が姫路駐屯地よりも被災地に近傍であったため、駐屯する第8高射特科群が災害派遣部隊を編成、0524時に人員20名と車両5両を以て青野原駐屯地を出発しました。派遣部隊は孤立地域対処の目処がついたため、行方不明者に重点を置くこととなります。

Simg_4428  派遣部隊は捜索を0856時より丹波市市島町徳尾において行方不明者捜索を開始し、1526時に災害派遣要請は1650時までに所要の捜索が完了したことから撤収要請が出され、任務は完了となりました。当初要請された道路啓かいは県と市により対処可能であることが判明し、こちらの派遣は行われていません。

Simg_9579 お盆の時期、派遣規模は京都府福知山市と兵庫県丹波市との派遣を併せ、第7普通科連隊、第3特科隊、第8高射特科群、併せて人員60名と車両20両という規模ではありましたが、即応できています。なお、岐阜県山間部においても記録的豪雨と橋梁流失などの災害が発生しましたが、こちらは災害派遣要請を出さず対応できたようです。

北大路機関:はるな

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自衛隊、カカドゥ14(豪州軍主催多国間訓練)・南十字星14(仏軍主催多国間訓練)へ派遣

2014-08-17 23:48:00 | 防衛・安全保障

◆ミサイル護衛艦はたかぜ等、南太平洋へ派遣

 カカドゥ14は豪州海軍主催多国間海上共同訓練で、ダーウィン周辺海空域において実施されます。

Img_9313 また、カカドゥ14への派遣と同時期、ニューカレドニアにおいて仏軍主催多国間訓練南十字星14が実施され、こちらにも派遣されます。カカドゥ14への参加は我が国を含め14カ国が参加、既に派遣護衛艦はオーストラリアに向け横須賀基地を出航しました。

Img_9566_1p 参加部隊はミサイル護衛艦はたかぜ、艦長梅崎時彦1佐以下180名と、第22飛行隊のP-3C哨戒機2機が第22飛行隊長山本貴文2佐以下40名が参加、で護衛艦派遣は8月11日から9月30日まで、航空部隊は8月25日から9月12日までの期間、派遣されるとのこと。

Img_6672  ミサイル護衛艦はたかぜ、はターターシステム艦でP-3Cは広域運用が可能な哨戒機で、この派遣部隊が参加する訓練内容は対空戦闘、対潜戦闘、対水上戦闘、戦術運動、通信訓練などが行われるとのことで、所謂親善訓練の域にとどまらず一歩踏み込んだ訓練ということがいえるでしょう。

Img_4531 仏軍主催多国間訓練南十字星14は、8月25日から9月5日まで参加、ニューカレドニア駐留フランス軍が実施する訓練で、自衛隊は統合幕僚監部より3名と陸上自衛隊より1名、司令部要員として参加、非常に限られた人員ですが派遣されます。訓練概要は島嶼部における災害救援活動を通じた多国間調整とのことで、自衛隊の参加は初と発表されました。

Img_4357 ニューカレドニアにはフランス太平洋艦隊や陸軍海兵隊駐留部隊等が展開、南十字星14への訓練参加は主催国フランスや初参加の日本以外に、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、パプアニューギニア、トンガ、バツアツが参加します。 今回は連絡要員派遣程度ですが、過去の事例などから来年度以降はもう少し大規模な部隊派遣を行う事となる可能性があります。

Limg_8111 自衛隊が南太平洋地域においてオーストラリア軍主催多国間訓練、フランス軍主催多国間訓練へ同時期に参加することは非常に稀有な事例です。多国間協力の増進と共に信頼醸成の前進なども目的とされていますので諸国間との協力体制へ、平時からの実績づくりへ寄与することが期待できます。

北大路機関:はるな

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日本と中国 将来の日中友好最大の弊害、何故中国は日本を過度に脅威視するのか

2014-08-16 23:56:02 | 国際・政治

◆中国の歪曲した歴史事実が生んだ対日脅威論

 我が国が防衛力を中国の領域拡大を期した海洋進出に合わせ対応しますと、中国側は必ず反発します、それは何故か。

G12img_9609 有りもしない脅威を中国は勝手に醸成していないか。将来の日中友好最大の弊害となり得る命題故に関心を強く持つところではありますが、多くの留学生とその昔対話し気付いたことなのですが、日本の軍事力を過度に恐れる背景、それは中国共産党の歴史観に影響された教科書により、日本の軍事力を余りに過大評価してる、という部分が大きい。

G12img_4914  具体的には、中国の教科書において日本の支那派遣軍に対し、兵員数や装備水準や兵員練度といった軍事力全般で優位に立っていたとする八路軍、今の人民解放軍ですが、こちらが教科書毎の記述では八路軍連戦連勝を記しながら、日本軍が全般では優位に立っていたため、実は日本軍が物凄く強いのではないか、という行間の読みがあるという事でした。

G12img_8403 もちろん、領土気野心達成に対して、つまり日本の領域を制圧するために日本防衛力が大きくては実行できなくなります。中国は建国以来、東トルキスタン、チベット、インド、ソ連、ヴェトナム、フィリピン、とほぼすべての隣国に侵攻してきましたが、1950年代後半から、達成できていません。

G12img_1048 そもそも中国側がアメリカに対し西太平洋の中国側への割譲を求め、海洋そのものが自由で誰のものでもないとした海洋国家観と対立している昨今の背景は、西太平洋程度を聖域化し日本を含め影響下に置かなければ、中国の防衛線を維持できない、という強迫観念に基づくもの。

G12img_6863 例えば、2000年代初頭における中国の歴史教科書では、南京事件について中国側の圧倒的優位にあったものの日本側が八路軍を制圧できない事に業を煮やして、首都南京を制圧し人口の五倍以上の市民を虐殺した、としています。第二次上海事変以降の軍民犠牲者を包含し犠牲者数を算出したといわれるのですが、こう記述しているとのことでした。

G12img_6221 しかし、戦闘詳報などを読み解けば、日本側が包囲時には兵員数で圧倒しており、そもそも発端の第二次上海事変そのものが中国軍の外国人居住区への攻撃が発端となったことは記されていません。この点で開戦の意図が中国側の教科書では読み取りにくく、更に、何故優位な中国軍が自国民を守らなかったのか、という視点に繋がってしまう、ということ。

G12img_3747 中国側は日本軍の十倍以上の兵力を以て対峙し、個々の戦闘では日本軍に大打撃を与えていて快勝の連続であったが、日本軍の前進を結果的に阻めていなかった、何故か、と留学生に問われたことがありました。幸い、戦闘詳報は大学図書館書庫にもありましたので、日本側の配置は防衛庁防衛研究所の戦史研究ではこうなっている、と示すと納得されたものです。

G12img_9145 言い換えれば、十倍の戦力を持ちながら勝った勝ったと記しつつ全般では圧されていた中国軍と教科書に記されているため、中国の教科書を正直に理解するならば、人民解放軍地上軍150万と陸上自衛隊14万が全面衝突した場合、人民解放軍が敗北し北京や南京に上海といった主要都市を抑えられるのではないか、という不安があるそうでした。

G12img_0233 日本では小説に仕上げてもリアリティが無さ過ぎて出版さえも成り立たないでしょうが、自衛隊が全力で中国大陸に進出し、人民解放軍と十数万対数十万の大会戦を展開、陸上決戦で人民解放軍を自衛隊が破り、結果大陸各地で散発的なゲリラ戦を挑む人民解放軍を自衛隊が掃討する、主要都市は自衛隊に占領され軍政下に置かれる、こうした現実の恐怖感が中国にはある、ということ。

G12img_0276  正しい歴史観を、と我が国に求める中国は、実のところ矛盾点、連戦連勝なのに敗走を続ける、という矛盾点を共産党の歴史教科書として国民に押し付け続けてきました、そして日本に対する有り得ない恐怖感を国民全体が共有知として醸成させてしまったわけです。

G12img_3624 中国側としては歴史の事実、八路軍は志願した低練度の軽歩兵主体であり、正規軍である国民党軍は指揮系統と練度が稚拙であり、未整備道路に強く砲兵を有し半機械化された日本軍の歩兵師団に兵力で圧倒されていたこと、中国側が遅滞戦術に焦土作戦を用いていたため、逆に民心が親日的となった地域がある事、これを共産党統治の維持という視点から教えられないため、現状に陥ってしまった。

G12img_6388 結果的に歴史と向き合えという言葉は、史実と向き合う日本と統治上必要な虚構に付き合うよう主張する中国、これでは平行線を辿る事となります。しかし、日本に対する過度な脅威と恐怖を、中国共産党は自ら構築してしまい、統治の都合上これは是正出来そうにありません。

G12img_1234  我が国としては、主たる任務が国土防衛と主権維持であるため、大陸に攻め込む意図は国民の総意として本当に皆無である。境界線と領域はサンフランシスコ平和条約により定められたもので中国側が奪取をもくろむ島嶼部領域は日清戦争以前の日清間で合意が成立しているため、それ以上領域を拡大する意図はない、このあたりの意図が伝わらない。

G12img_4725  逆に、中国側にとっての悲劇は日本の軍事力を過剰評価し、結果的に一人相撲というべき軍拡を続け、特に人民解放軍が有事の際に日本の大陸侵攻を防げないのではないか、という恐怖を実力で抑えなければならず、具体的には中国側の教科書にある十倍の戦力で敗北という歴史を直視し、辛うじて経済力で日本に対抗し得る水準の中国に日本と比較し十倍の軍事力を求める無言の世論がある。

G12img_2602  その軍事費が中国にとっての大きな枷となって負担を与えています。このあたり、歴史を政治都合ではなく研究により支え観念的な加筆を抑えれば払拭できる一方、共産党統治維持には都合が悪いため負担に耐え続けなければならないという二つの両立できない難題が、自ら生み出した日本への恐怖を醸成し、在りもしない脅威への軍事的備えが両国の友好を阻み続けているという印象を受けました。

北大路機関:はるな

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8.15終戦記念日 敢えて問い戦争について考える、不戦と平和の一方を選ぶ瞬間

2014-08-15 23:57:04 | 北大路機関特別企画

◆視野狭窄な集団的自衛権論争とともに

 本日は8月15日、終戦記念日です。我が国は1945年8月15日、ポツダム宣言受諾を公表し第二次世界大戦が終結しました。 

Img_5315a 例年、この8月15日は鎮魂の日として不戦の誓いを新たにする世論が醸成されていまして、戦死者と非戦闘員犠牲者併せて350万、罹災者1000万、非常におおきな戦争でした。一方で、本年は政府の集団的自衛権論争とこの鎮魂の日を絡めた論調が多く、本日はこの点について終戦記念日だからこその視点で論理を広めましょう。

Img_7039 戦争を仕掛けられる側にも問題がある、非戦を貫けば戦争にならない、こうした視点が昨今の集団的自衛権論争への反論としてあります。しかし、この視点は攻められる側の視点を必ずしも反映するものでは無いものではないか、として、終戦記念日の集団的自衛権論争を絡めることへの懐疑点として考えるところ。

Iimg_0935 日中戦争は中国側が過剰反応したことで勃発したのだから中国側に責任の一部があり中国が防戦しなければ日中戦争は無かった、真珠湾攻撃の後もアメリカが反撃に訴えなければそもそも太平洋戦争は起きなかった。これが戦争を仕掛けられる側にも問題がある、非戦を貫けば戦争にならない、とする視点の論理でして、当方としては全く賛同できません。

Img_2923  ここで一つの質問を。不戦と平和の一方を選ぶ瞬間、不戦と平和のどちらかしか選べないとすれば、皆様はどちらを選ぶのでしょうか。不戦とは蹂躙され隷属を強いられ自由意志を奪われる可能性を含み、平和とはその維持のために実力行使の覚悟と実行動を伴う可能性を示します。

Mimg_6916_1  もう少しまともな選択肢を要望したいところですが、究極的な段階まで判断を留保したならば、結局は不戦と平和を両立することが出来なくなり、どちらにするのか、という判断を迫られることとなります。無論生活資産安定平安全てを捨てて第三国に離脱し、一からの再構築、という選択肢はあるにはありますが。

Img_0355 我が国は非戦を国是として、不戦の誓いを事あるごとに再確認し続けてきましたが、軍事力の抑止力や軍事力に対峙することに拠っての武力紛争抑止の努力という選択肢の意味を不戦という言葉で曖昧に扱い続け、結局は半世紀以上を以て自ら選択肢を狭めてきました。

Mimg_2014 国家間の武力紛争は少なくとも複数の国家間の政治関係の延長として、政治関係の延長という表現の背景は、少なくとも講和条件の提示が条約の形を採るため政治の延長という意味なのですが、締結されるため、一国のみの一方的な不戦の誓いはなんともならないところ。

Gimg_8761 故に戦争を起こす一方の意思を持った国家との対峙は、戦争回避の努力を行わなければ結果は変化しません。その回避努力が国家主権を蔑ろにする要求であれば、併合か蹂躙か防衛という選択肢を迫られるものとなり、併合となれば主権は失われその後我が国力が併合した主体の意思の下での他国との戦争に、蹂躙ならば犠牲の後に上記選択肢と同じ結果に、防衛ならば上記選択肢回避の可能性が出てくる。

Abimg_7395 結果的に悲劇を避けるのか受け入れるのか、という選択肢に転換するわけなのですが、悲劇を避ける選択肢を達成する手段が悲劇であり、悲劇を受け入れる選択肢は結果的に悲劇と繋がり、経由地か終着に悲劇が介在する、という非常に厳しい現実があります。

Img_2713 一方で、非戦や不戦が安定に繋がるのかという懐疑点は、現在の中東情勢等を見ますと改めて再認識させられるものがあります。例の一つはシリア情勢、シリアへの軍事介入を躊躇したアメリカはシリア内戦が長期化しシリア反政府勢力を差し置きイスラム武装勢力ISILの跳梁を許しました。

88img_2287_1 不戦非戦を国是とする我が国からはアメリカの姿勢は価値観として歓迎されるものなのでしょうが、ISILはその後イラクに侵攻、対中国武装闘争宣言やロシアの一部を含む中央アジアやアフリカへの勢力圏拡大とイスラム原理主義国家樹立を宣言しており、下手をすれば世界大戦への導火線に着火させかねない状況まで放置しています。

Img_480700 非戦不戦を貫いた結果、第三次世界大戦の脅威が芽生えるのを放置したことになるのですが、非戦を貫けるならば戦争が起こっても放置するのか、戦争が起こっても拡大し自らに影響が及ぶまで放置するのは非戦不戦の目的なのか、このあたりまで考える必要があります。

Img_1714 すると、そもそも非戦不戦は平和のための手段であって、非戦不戦が目的ではないという事に気づかされます。平和を維持するための厳しい判断が求められ、その一手段に非戦不戦があるのですが、このあたりを無視し、形而的に維持していることで最も回避しなければならない結果に続いているという。

Iimg_5660 集団的自衛権論争は、まず第一に平和憲法下でアメリカは日本の同盟国であり同盟に基づく行動を行う必要がある、という日米安全保障条約締結時点で確認すべきところを再確認したもの。積極的平和主義とは手段としての平和から目的としての平和に転換しただけに他なりません。

09thimg_1242_1 しかし、戦争への恐怖心だけをことさら煽り、毛科的に手段と目的をはき違えたまま論争を展開し続けるならば、手段と目的の履き違えは非戦不戦と平和が両立できない選択肢を国民に突き付けるところまで放置しかねないところがあります。当方としては手段ではなく目的としての平和や不戦を目指す道を模索するべきだろう、終戦記念日に敢えてそう考えたところでした。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

 

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平成二十六年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.08.16・08.17)

2014-08-14 23:06:27 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末の自衛隊関連行事ですが、基本的にお盆期間中にて実施されません。

Aimg_2235 ただ、海上自衛隊基地の一般公開は行われます。大湊基地では土曜日と日曜日、1330時から1430時の間護衛艦ちくま一般公開が行われます。このほかお盆の時期は横須賀遊覧船で多くの帰港している艦艇を見る事が出来るでしょう、横須賀基地は個人見学は受け付けていません。

Gimg_4575 舞鶴基地は土曜日と日曜日、桟橋からの艦艇見学が可能です。桟橋の一般公開の他に総監部と海軍記念館の見学が可能です。 舞鶴航空基地も土曜日と日曜日一般公開されており1400時から1500時まで、格納庫内の哨戒ヘリコプター等を見る事が出来ます。

Gimg_4829 呉基地の一般公開は日曜日のみ、1030時から1130時までと1300時から1400時までの時間に総監部庁舎が一般公開、 艦艇一般公開は訓練支援艦てんりゅう一般公開で1000時から1100時、1300時から1400時、1500時から1600時まで予定されています。

Kurama1dimg_8659_2 佐世保基地一般公開は土曜日と日曜日、倉島桟橋が一般公開され、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、上甲板が一般公開されます。0900時から1100時まで、1300時から1530時まで、一般公開されるとのことでした、お近くの方は是非どうぞ。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
?自衛隊関連行事はなし

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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奄美大島自衛隊駐屯計画、警備隊に加え地対艦ミサイル・中距離地対空誘導弾配備方針

2014-08-13 23:44:55 | 防衛・安全保障

◆実現すれば鹿児島沖縄間防備抜本強化

 防衛省は新防衛大綱に基づく南西諸島防備強化の一環として警備部隊の新編を計画していましたが、こちらに動きがありました。

Fimg_5380 防衛省の武田良太副大臣は鹿児島県奄美大島を訪問、奄美市の朝山毅市長と瀬戸内町の房克臣町長と12日に会合し自衛隊配備の理解を求めたとのことで、両首長は地元理解が十分集まっており今回の防衛副大臣の申し出を歓迎したい、との見解を表明しました。

Aimg_0625  そして、具体的な奄美大島への自衛隊配備計画として、奄美市に警備隊と中距離地対空誘導弾、瀬戸内町に地対艦ミサイル部隊を駐屯させる計画が示されています。詳しくは後述しますが、警備隊の駐屯程度と当方は考えていたため、地対艦誘導弾や中距離地対空誘導弾部隊の駐屯計画、かなり驚きました。

Eimg_2345  現在、奄美大島には海上自衛隊佐世保地方隊奄美基地が置かれ艦船寄港に対応する奄美基地分遣隊が置かれているほか、航空自衛隊奄美大島分屯基地が置かれ、沖縄の南西航空混成団南西航空警戒管制隊奄美通信隊が置かれ、沖縄と九州の通信中継任務に当たっているのみ。

Gimg_0672  沖縄と九州を結ぶ鹿児島県島嶼部の重要性は大きく、一方で防衛力空白地帯となっていたわけです。奄美市では、南西諸島への軍事強化と共に防衛力強化を求める声が根強く、奄美基地への艦艇常駐化や陸上自衛隊警備部隊配備などが求められてきました。

Kimg_9503  加えて2010年10月の奄美大島豪雨水害では、自衛隊災害派遣に際し、輸送能力が充分ではなく鹿屋航空基地より海上自衛隊ヘリコプターにより第8師団が展開したのち、主力は民間フェリーを待って翌日以降に出発するなど、防衛力の空白は災害時にも大きな脆弱性を示しており、この課題から自衛隊の常駐が求められてきたわけです。

Gimg_5925  中距離地対空誘導弾は射程60km程度の地対空誘導弾、03式中距離地対空誘導弾で垂直発射方式により発射陣地の自由度が高まると共にレーダーによる捕捉と対処までの自動化が従来装備と比較し大幅に向上、巡航ミサイルや超音速航空機への複数同時対処が可能です。

Kimg_6698 地対艦誘導弾は新型の12式地対艦誘導弾か88式地対艦誘導弾の何れかを想定しているものと考えられます。本装備は標定車両と管制車両との連携により内陸部から200km前後の目標を対処可能、一個連隊あたり96発の同時発射が可能で大規模な上陸部隊であっても海上で撃破出来、射程は奄美大島より北は薩南諸島、南は与論島付近まで防衛可能となる。

Amimg_1625  警備部隊と共に奄美大島に装備されるこれら装備群により、奄美大島は沖縄県と九州との中間に位置し、沖縄県への武力攻撃に際して本土との連絡を維持する要衝となるのですが、航空攻撃及び海上攻撃に対し、非常に高い防衛力を持つこととなり、即ち南西諸島全体に対する武力攻撃への着手を相手に思いとどまらせる要衝となるわけです。

Img_7102 近年、南西諸島防備強化は大車輪で進んでおり、最たるものは那覇駐屯地の第15旅団隷下に第15飛行隊を拡大改編し2013年に創設された第15ヘリコプター隊で、UH-60JA多用途ヘリコプター8機、CH-47J/JA輸送ヘリコプター8機とLR-2連絡偵察機を装備、これにより空中機動力を大幅強化した能力を有するに至りました。

Aimg_159_2 一方、新防衛大綱では奄美大島と宮古諸島に警備部隊の新編が盛り込まれており、これは当初、対馬警備隊型の350名規模の部隊、本部管理中隊と一個普通科中隊を持ち必要に応じ本土より普通科部隊を急速展開し本部機能が受け入れられる態勢を持つ警備部隊の新設が、重装備は迫撃砲と対戦車ミサイル程度の部隊と考えられたのですが、今回、かなり有力な部隊の配置が明示されたわけです。

Img_9725_1 奄美市に警備隊と中距離地対空誘導弾、瀬戸内町に地対艦ミサイル部隊を配置し、全体規模は550名規模、この水準から考えますと、中距離地対空誘導弾部隊は高射中隊規模、地対艦ミサイル連隊は定員400名規模であるため、富士教導団特科教導隊第6中隊のように中隊規模で配備する部隊となるのかもしれません。

Gimg_2000 今後、那覇の第15旅団は現在、普通科連隊一個の体制に高射特科連隊とヘリコプター隊を持つ編成を採っていますが、更に一個普通科連隊の増勢や与那国島などへの沿岸監視隊新編、機動旅団への改編に際し105mm砲を搭載する機動戦闘車の配備も念頭に部隊改編が行われる方針で、南西諸島全体の防衛力は奄美大島配備部隊と併せ抜本的に強化されることとなるでしょう。

Gimg_9492  一方で、地対艦ミサイル連隊から部分抽出を行うのか、廃止予定部隊装備を中隊規模で分散運用するのか、中距離地対空誘導弾部隊は飯塚駐屯地の高射特科団より群規模で抽出するのか、九州の防備を維持するべく新編するのか、このあたりについては定かではありません。

Fimg_6681  特に陸上自衛隊において西部方面隊は比較的重要視され、現在でも地対艦ミサイル連隊や高射特科団に方面特科隊を置いている背景には、西部方面隊管区は朝鮮半島に隣接しており、南北朝鮮において現在の停戦状態が破れ朝鮮半島有事が発生した際には大きな圧力を受ける地域として装備体系を固めてきました。

Img_2617  九州から安易に部隊を抽出することは難しく、加えて陸上自衛隊の重装備部隊が集中する北部方面隊管区の北海道からの距離も大きいため、有事の際に部隊を集中させるには九州へ一定規模の部隊を置くか、海上自衛隊輸送艦及び航空自衛隊輸送機の増勢を受けるほか対処方法がありません。このため、新部隊を何処から抽出し編成するのか、非常に興味の持たれるところです。

北大路機関:はるな

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日本航空123便ジャンボ機墜落事故(1985.08.12)と陸上自衛隊災害派遣の初動

2014-08-12 23:54:35 | 防災・災害派遣

◆未曽有の墜落現場へ展開した空挺部隊・山岳連隊

 本日は日本航空123便ボーイング747墜落事故より29年目の追悼の日です。

Aimg_2434  ジャンボ機墜落、我が国民間航空からボーイング747が完全に廃止された今年ではありますが、この追悼の日、フライトレコーダーの分析等多くのメディアで触れられているところではありますが、本日は、あまりマスコミなどでは触れられない視点から、この墜落事故についてみてゆきたいと思います。それは未曽有の犠牲者を出した事故の現場が首都圏に隣接しながら険しく人を寄せ付けない山間部で発生した状況に際しての、陸上自衛隊の日本航空123便ジャンボ機墜落事故対処について。

Aimg_9773  1985年8月12日、日本航空123便は羽田空港を1812時に伊丹空港に向け離陸、お盆の帰省客を乗せ満員での離陸から12分後、相模湾上空において上昇中、後部圧力隔壁の破損に端を発し油圧系統収束区画ごと垂直尾翼が喪失、完全に操縦不能となり、羽田へエンジン出力変化等僅かな選択肢を駆使しての乗員の努力も実らず1856時、群馬県御巣鷹山の山中に墜落しました。なお、油圧喪失は致命的で、この困難を前に最後まで乗員は機体の維持に努力したことは忘れてはなりません。

Gimg_9490  航空自衛隊は多くのメディアで紹介され知られているように1828時、日本航空123便の非常事態宣言を峯岡山分屯基地の中部航空警戒管制団第44警戒群が探知、松永貞昭空将が指揮する中部航空方面隊は第44警戒群より当該機がレーダーより機影が消失したことを報告され、独断で情報収集及び救援へ緊急発進を命令、百里基地の第7航空団よりスクランブル待機中のF-4EJ二機が、続いて情報収集として航空救難団百里救難隊のV-107が緊急離陸しています。

Hbimg_7945 陸上自衛隊は、東部方面隊の第1師団と第12師団に対し、2000時頃、防衛庁より待機命令が掛かりました。この待機命令について、当時は墜落箇所が不明であり長野県山間部か群馬県山間部若しくは埼玉県山間部と、広い空域を捜索する必要がありました。当時自衛隊には夜間飛行が可能な航空機は多数装備されていましたが、夜間捜索救難任務に充てられる機体は航空救難団の装備する機体等一部で、この中には夜間海上での救難は可能でも山間部に夜間救難可能な機体は存在しません。

Gimg_6136  第12師団長合原博見陸将は隷下部隊へ待機命令を発令、松本駐屯地の第13普通科連隊は連隊長川名正弘1佐が独断で情報収集を決断、本部管理中隊情報小隊の派遣を開始しました。第13普通科連隊は山岳レンジャー教育の拠点で、一人一人が高度な産学技術を身につけるといわれるほど、日本アルプスを警備管区とする日本最強の山岳連隊の一つに挙げられ、情報小隊は73式小型トラックで可能な限り前進し、それ以上の未踏破地域へは徒歩で展開してゆきます。

Aimg_1842  事故が発生した8月12日は盆休みの時期であり、陸上自衛隊も例外ではなく例年15日前後、3日から4日の休暇を分けて取得するよう部隊では訓練運用を調整しているとのことで、各部隊は半数程度が休暇を、半数が勤務を採り待機態勢を維持していました。事故発生地域が北関東山間部であることから、翌13日0500時頃、第1空挺団、第1ヘリコプター団へも待機命令が東部方面総監部より下令され、指揮官が待機態勢を採る第Ⅰ種勤務令が発令、同時に団長命令でヘリボーン部隊編成が命じられました。

Aimg_2875  第1空挺団長小林英雄陸将補は、空挺団普通科群長重高昭教1佐を派遣部隊指揮官とし、ヘリボーン部隊編成を下令します。重高1佐は災害派遣計画に基づき、木更津第1ヘリコプター団よりV-107輸送ヘリコプター6機を指揮下に加入させ、初動部隊を編成します。初動部隊は、普通科群、施設隊、衛生隊、より本部班と5個班の73名により編成完結し、各班に降下用のザイル二本と各個にリぺリング降下用の皮手袋及びナス環を装備、携帯糧食三食分と水筒に小縄のみの軽装備とし出動態勢を固めます。

Img_9639  第1空挺団の任務は事故現場の地域把握と生存者救出です。情報収集ですが、文字通り人跡未踏の地形での大規模な航空機事故ではヘリコプターの展開や地上からの大規模部隊の展開に必要な地形に関する状況を把握しなければなりません。空中機動により投入できる人員には限界がありますし、救急救命装備などもヘリコプターで過半するには限界がありますが、ここで情報収集と救助計画を固め、如何に初動を固めるかが、続く災害派遣を大きく左右させることとなるのです。

Aimg_9719  V-107は現行のCH-47とUH-60の中間規模の機体で陸海空自衛隊に装備された主力機種の一つでした。第1空挺団派遣部隊は第12師団長隷下に配属されることとなり、0730時、第12師団が前進基地とした師団司令部が置かれる相馬原駐屯地向かう途上、師団長より大まかな墜落事故現場が把握できたとし、当初は6機が一旦相馬原駐屯地に着陸する計画を、指揮官機を含む3機がそのまま事故現場へ展開させることとなり、0840時に3機のV-107は現場上空へ到着しています。

Himg_3853  しかし、事故現場は山間部の中でも林道や登山道からもかなりの距離を隔てている奥地で、機体が散乱する事故現場付近では急斜面が続いており、崖のような地形が続くことからなかなか着陸地が見つかりません。そこで現場から若干離れた地域にリぺリング降下可能な尾根を発見、降下長が降下すると斜度45°近い崖のような地形でしたが、各機12名が降下するのに10分、3機が併せ30分もの時間を要し、降下した総員は1000時頃まで捜索を継続します。機体の状況は様々なメディアにより抑えた表現で説明され、そちらに譲る事としましょう。

Img_1381 第1空挺団先遣部隊は第12師団司令部へ無線連絡を試みますが地形上電波を遮蔽する為携行するFM無線機では相馬原駐屯地や松本駐屯地と繋ぐことが出来ず、やむなく万一のために携行したAM無線機により直接習志野駐屯地の第1空挺団本部と交信、情報を空挺団から師団司令部へあげる事としました。続いて上空のヘリコプターを空中中継として第12師団司令部との連絡体制を確立しました。同時刻、相馬原駐屯地へ待機していたV-107のうち2機が現場に到着、支援体制を確立しました。

Cimg_8028 第13普通科連隊本部管理中隊情報小隊は第1空挺団がリぺリング降下を開始した同じ頃に、事故現場の端部へ漸く到達しました。夜通し徒歩で山間部を踏破しての展開で、実のところ山岳連隊は空挺部隊のヘリボーン展開に脚力で同着を果たしたわけですが、第1空挺団任務は地形把握、即ち後続の災害派遣主力部隊の根拠となる情報収集を行いました。13連隊長川名正弘1佐も1130時には現場まで進出、空挺団普通科群長重高昭教1佐と合流、先任の川名1佐指揮下に空挺団派遣部隊が加入しました。

Aimg_2076 空挺団災害派遣部隊は、現場の北側谷底に機体の尾部が落下しており、一つの班が捜索中この残骸を発見しました。同じころ、地元上野村消防団が先導し、警察からの派遣部隊と合流しています。生存者は消防団が発見しましたが、尾部は九割の犠牲者に生存者が残る状態で、空挺団員は犠牲者溢れる機内へ合掌しながら踏み入り、生存者を一人一人引き出し、実に4名もの生存者が此処にいたことが判明しました。兎に角空中搬送を、決定します。

Uhimg_3671  ただ、ヘリコプター発着可能点は空挺団がリぺリング降下した崖のような尾根、標高にして100m以上もの高度差を越えたところまで運ばなければなりません、そこで消防団員と協同し、担架は携行していないためレンジャー訓練などで仮設する応急担架を構築し、尾根まで担ぎ上げる事となりました、人跡未踏の鬱蒼とした木々が生い茂る急斜面を人力搬送するのは厳しいですが、前後して空挺団派遣部隊が相馬原経由で2個班増強展開しているため、彼らとも協力し、兎に角尾根まで、そしてヘリコプターにロープにて収容しました。

Amimg_1713 川名1佐指揮下、空挺団派遣部隊と第13普通科連隊と共に徒歩にて消防団や警察の踏破した応急山道を第12施設大隊など第12師団主力部隊が到着、V-107とUH-1による毛布や土工具及び水缶の投下支援を受け、夜営と可能な限りの徹夜作業を決意します。群馬県警と警視庁機動隊に地元消防団は夜間一旦麓までの撤収を予定していたものの、警視庁機動隊は自衛隊と共に残る決心へ切り替え、自衛隊の物資を分配し作業を続行しています。

Gimg_8753 月齢27、星空の下携行する懐中電灯に余裕があったため、第12師団司令部との連絡協議の結果、喫緊の課題は徒歩4時間を要する麓からの参道とヘリコプターの着陸を許さない地形を如何に克服するかが課題となりました。そこで、第12施設大隊と空挺施設隊の隊員が夜間、携帯する懐中電灯だけを用いて、現場にたおれている倒木とロープなどの限られた資材を駆使し、応急ヘリコプター発着上の設営を決意します。斜面を円ぴで掘削し丸太を敷き詰め土台とする、応急ですがUH-1が離着陸可能な発着場、夜明けまでに完成しました。

Aimg_24370 非常に残念なことではありますが、生存者は4名を以て最後となり、520名もの犠牲者を生む我が国最大の航空機事故となりました、陸上自衛隊は増援の警察消防及び消防団や航空自衛隊災害派遣部隊と協同、14日から御遺体の収容作業へと転換してゆきます。なお、壮絶な現場は当事者の口からも厳しい記憶を刻み付けたという声を聴きます。巨大な事故ではありましたが、事後即応した自衛隊の対応は何故か報じられることは近年まで稀有でしたので、今回特集することとしました次第です。最後となりましたが、事故で犠牲となりました方々のご冥福を祈り、末尾とさせていただきます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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