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【くらま】日本DDH物語 《第四〇回》F-4高速対潜機が目指すは空母構想か対艦哨戒機か

2018-04-14 20:14:20 | 先端軍事テクノロジー
■野心的F-4高速対潜機研究
 未成のF-4高速対潜機、敢えて海上自衛隊が当時最先端のF-4ファントム導入を研究する以上、対潜哨戒機の次の段階をも俯瞰していたのでしょう。

 F-4高速対潜機、海上自衛隊は赤外線探知装置と高性能カメラを搭載し洋上敵艦隊探知や潜水艦の偵察及び対潜掃討任務へ運用するべく、第四次防衛力整備計画当時に検討を進めていたようです。第四次防衛力整備計画には10機程度を導入、最初の航空隊を編成する構想があったといい、ここで考えるのは海上自衛隊はF-4を導入した場合の本来の用途です。

 もし、1970年代後半の第四次防衛力整備計画において海上自衛隊がF-4高速対潜機の導入を開始した場合、続くポスト四次防、当時は第五次防衛力整備計画と称されていましたが、この際に次のF-4航空隊が編成される可能性も考えられたのでしょう。この際に海上自衛隊は本当にF-4戦闘機を高速対潜機として運用するだけに留めたのだろうか、ということ。

 海上自衛隊がミッドウェー級航空母艦をアメリカから取得し、F-4戦闘機を艦載機として運用する、という可能性は、海上自衛隊の人員規模からしてミッドウェー級航空母艦を維持するための乗員も予算もねん出する事は不可能であり、当然、考えられなかったでしょう。したがってF-4を導入した場合でも航空母艦導入の布石とするとは考えにくいでしょう。

 考えられるのは、対艦攻撃任務へ解除自衛隊が本格的に参画する、という事です。当時、対艦攻撃任務は海上自衛隊と航空自衛隊が分担していました。しかし、第四次防衛力整備計画当時はまだ海上自衛隊に対艦ミサイルは無く、初の対艦ミサイルとなるハープーンミサイル配備は、護衛艦いしかり建造を待たなければなりません、長魚雷が当時の主力です。

 支援戦闘機という区分が当時航空自衛隊に誕生しており、これは超音速戦闘機であるF-104戦闘機の配備開始により昼間戦闘機F-86の運用に余裕が生じた事で考えられた新区分です。昼間戦闘機の名の通り、F-86は搭載する12.7mm機銃の照準用に測距レーダーは搭載していましたが、索敵を夜間に行うレーダーはまだ搭載しておらず、夜間運用は難しかった。

 F-104はこの部分を一挙に近代化した超音速戦闘機であった訳ですが、航空自衛隊は草創期から供与機、そして三菱重工での、当時は新日本重工と社名を変更していたのですが、ライセンス生産を行い、実に420機ものF-86戦闘機を保有していました。性能面では陳腐化が始まっていましたが、機体寿命が残っていた為、新用途を考えた結果が支援戦闘機です。

 F-86支援戦闘機は500ポンド爆弾を搭載し、近接航空支援に用いられると共にロケット弾攻撃等様々な用途に充当していましたが、その一つに対艦攻撃任務があったのです。勿論、対艦ミサイルはありませんので伝統的な500ポンド爆弾を用いる対艦攻撃で、海面に跳飛させ艦船に命中させる反跳爆撃訓練を実際に行っていました、この方式は馬鹿にできない。

 実は1982年のフォークランド紛争においてアルゼンチン空軍がイギリス艦隊攻撃に多用したのが従来型の爆弾による攻撃です。フォークランド紛争ではアルゼンチン空軍がフランス製エクゾセ対艦ミサイルにより防空用ミサイル駆逐艦シェフィールドを撃沈し有名ですが、輸入できたエクゾセは4発のみ、イギリス海軍の脅威は爆弾搭載のA-4攻撃機でした。

 高速対潜機として海上自衛隊がF-4の導入を希望した背景には、艦砲と長魚雷と共にF-4を導入する事で航空自衛隊へ依存していた対艦攻撃任務についての主導権を考えていたのかもしれません。他方で海上自衛隊がこの時に戦闘機の運用能力を有していたならば、海上自衛隊航空集団の運用体系も大きく現在とは異なるものとなった可能性、あるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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