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F-22戦闘機再生産計画!【後篇】 ラプター航空自衛隊次期戦闘機採用や海外供与の可能性

2016-05-23 22:19:34 | 先端軍事テクノロジー
■自衛隊F-X,X-2/F-3 vs F-22
 F-22戦闘機再生産計画特集の最終回、今回の報道では第三国への供与をかなり意識した報道となっています、そうした場合、やはり気になるのは航空自衛隊がF-22戦闘機を配備する可能性でしょう。

 我が国防衛装備庁は現在X-2技術実証機を飛行させ将来戦闘機への技術開発を大きく進めていますが、これがF-22により状況が変更される可能性があるのか、という視点は大きな関心事となるでしょう。こういうのも、元々国産戦闘機は現在のF-2支援戦闘機開発の際に独自戦闘機計画として進められた計画が、F-16戦闘機の改良型とするようアメリカからの大きな圧力があったことで、日米共同開発となった過去の歴史と無関係ではありません。

 他方で、F-22のステルス性はアメリカ議会が定める第三国供与定義を満たさない高度国防技術が応用されている為、輸出型はステルス性の低減などの措置を行うか、従来では許可されなかった水準の装備品供与を行うこととなり、基本的に第三国への供給を念頭としてステルス性を計算したF-35Aとは異なる航空機です、このため、輸出型を構想する場合、更に改良型、とする必要もあるでしょう。

 航空自衛隊は旧式化が進むF-4EJ戦闘機の後継機としてF-35を選定しましたが取得計画は40機、同じく1981年から導入を開始したF-15J戦闘機も老朽化が進んでおり、アメリカでのF-22生産再開が本格化し、取得費用が現実的な範囲内に収まった場合、F-15J後継機としてF-22の採用が検討される可能性があります、ただ、航空自衛隊ではF-2支援戦闘機の後継機として、X-2実証機による技術開発成果を応用し、将来戦闘機を開発する方針で進むというものが現在の砲身です。

 航空自衛隊のF-2後継機にF-22、という可能性は、少なくともF-2の担う対艦攻撃能力をF-22は想定していない為、ありません。F-2は対艦攻撃に重点を置いた戦闘機で、XASM-3の運用能力が後継機の基本要求となりますが、F-22を見ますと、ステルス性の観点からミサイルは基本的に機内へ格納する方式を採用しており、XASM-3は新たに胴体を延長するか外装ステルスポッド等を開発しない限り搭載出来ません。

 F-3に対抗しF-22が提示された場合の、特に対艦攻撃能力という意味で優位性はありません、ただ、アメリカはF-22を原型としてF-15E戦闘爆撃機の後継にFB-22を過去に構想しており、もし仮にFB-22が具体化する場合、F-2後継機選定に国産機かFB-22かが討議される可能性も出てくるでしょう。他方、アメリカ空軍の場合ですが、アメリカ国内では既にF-35に続く次世代戦闘機F-22やF-35の第五世代戦闘機を越える第六世代戦闘機開発が開始と報じられました。

 国防総省、特に空軍当局としてはF-22の生産再開に伴う調達予算がそのままF-35生産費用と第六世代戦闘機開発への悪影響を及ぼす事は難色を示すことが確実と見られ、この場合、国防費の更なる増額を期するのか、もしくは第六世代戦闘機開発計画を遅延させF-22を取得するという選択肢、どちらかを突き付けられることとなります。

 1機当たり4億1200万ドルというF-22の費用のため生産は当初計画の四分の一まで縮小、その分の費用をF-35の強化に充てる、という構想でした、これを受けF-35は当初取得費用構想の四倍まで価格が高騰するまで高性能化しましたが、なかなか初期不具合の連鎖から抜け出せません、ただ、費用が高すぎ、F-22は1機2億ドル時代に豪州空軍とイスラエル空軍が十数機程度の取得を打診しましたが実現しませんでした。

 航空自衛隊が次期戦闘機選定を本格化させた時にはすでに生産終了が決定しています 。F-22について、空軍では後発となる統合打撃戦闘機、F-35を優先に新技術開発を行った結果、F-35と比較し現行のF-22は将来発展性に限界があるとの指摘があり、生産再開を行う場合は統合光学照準器や複合索敵装置及びヘルメット型表示装置等新規技術を盛り込む必要があるとされ、もちろん簡単ではありません。

 しかし、仮に実現した場合、F-22B,もしくは既存機F-22をF-22A,その上で改良型にF-22Bを当て新規製造分にはF-22C、という位置づけとなる可能性があります。最新鋭戦闘機であるため、その導入を求める国は多少は考えられます、が、飛行隊規模で維持するには相当の財政負担が必要となります。唯一の楽観要素は、今回の増産計画が具体化した場合、状況は大きく変わる運用基盤の強化というものでしょう。

 アメリカ空軍が運用するF-22は約400機と倍増するため、予備部品調達や近代化計画等の費用がその分安く、予備部品備蓄なども増大し稼働率を向上させることができるでしょう。F-22はF-35と比較し空対空戦闘へ特化した航空機であることから多用途性を求めるアメリカ空軍からは評価が異なるようですが、即座に戦力化出来る最強の制空戦闘機としてF-22が挙げられるのは間違いないため、そのポテンシャルの評価をどう見るか、と。

 国際情勢の変化はアメリカ政府としてF-22の能力が持つ選択肢の増大を必要としています。ただ、F-22はアメリカにとっても調達に非常に奥の予算を必要とする航空機です、家電量販店の様に型落ちであっても割り引かれるものではなく、特に生産に必要な治具は残っていても生産ラインがF-35戦闘機用へ転用されているものも少なくなく、F-22を調達するならば、他の何らかの将来装備調達を縮小しなければなりません。

 アメリカ空軍は、F-35戦闘機の計画や、C-130輸送機後継機に将来練習機計画と将来早期警戒管制機計画など多くの計画、後継機を必要とする航空機が控えており、例えば代えてF-35の開発費用等が削られるならば、F-35開発計画の更なる遅延やキャンセルの増大により全体の装備計画が停滞する事にもなりかねません、こうした視点から、今回の提案がどの方向へ展開するのか、注視してゆきたいですね。

北大路機関:はるな くらま
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6 コメント

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誤記では? (DDH)
2016-05-24 02:49:59
いつも揚げ足取りのようですみません。
今回は前回と異なり、考え方の違いでは無く、単純に誤記だと思います。

>現在の砲身です。
現在の方針です。

>非常に奥の予算を
非常に多くの予算を

御確認ください。


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誤変換でした (はるな)
2016-05-25 12:03:16
DDH 様 こんにちは

ご指摘ありがとうございます、その通り誤変換でした

早速訂正記事を作成しました

なかなか気づかず掲載してしまうものが多く、今後もお気づきの点がありましたらば、ご指摘いただけるとありがたいです
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F-35調達数 ()
2016-06-20 13:58:47
日本が調達するF-35は当面42機ですよ。
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2014/07/09.html
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約、という (はるな)
2016-06-20 23:21:08
爺 様 コメントありがとうございます

約40、とするべきでしたでしょうか

実は古くからお読みの場合は思い出されるかもしれませんが、欧州のとある空軍の装備予定数で37機、としたところ、38が正しい、いや35だ、とかなり大きなやり取りがありまして、端数を省いて記載しています

ご指摘ありがとうございました
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日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事 (アッキードF19で小沢一郎を撃退希望)
2018-08-23 06:41:41
日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事におけるJAL123便の元気な生存者が、日本の埼玉県警察の警察官(日本語で おまわりさん?)らの手により
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/ainugakuin/e0011938_16494167[1].jpg
といった惨憺たる虐殺死体と化した

一方、救助に奔走したのは米国のみであった
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こうしたコメントは (はるな)
2018-08-23 07:38:05
こうしたコメントは差し控えて下さい

陰謀論の前に事故報告書をしっかり調べて下さい
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