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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:戦車の火力は万能です!島嶼部防衛に寄与する現代戦車の先端テクノロジー

2021-06-19 20:16:52 | 先端軍事テクノロジー
■戦車って思ったよりもスゴイ!
 聖女の魔力は万能ですとは無関係の話題ではあるのですけれども戦車の話題です。

 戦車の火力は万能です。聖女の魔力は万能です、というアニメが2021年春アニメにありまして良作、響き的に似ている戦車の火力について。2010年代から2020年代にかけての戦車の技術発展をみますと、戦車は島嶼部防衛を含め将来戦闘における重要性を再度高めつつあるのではないか、と認識せざるを得なくなりました。日本も戦車増勢を考えては、と。

 ナゴルノカラバフ戦争、2020年に発生した地域紛争ではアゼルバイジャン軍の無人攻撃機ハーピーが戦車に対する体当たり攻撃を繰り返し、徘徊式弾薬の強さを再認識させるとともに1973年の第四次中東戦争以来の常套句、戦車の時代は終わった、と再度叫ばれることとなりました。もっともアゼルバイジャン軍は攻撃部隊の主力に戦車を活用したけれども。

 ハーピーはイスラエル製無人機、体当たり攻撃を行いますが目標を発見するまでの数時間は戦場上空を飛行して索敵に徹します、体当たりするほどでない目標は画像情報を友軍砲兵隊に電送、戦車などの高付加価値目標を探します。人命損耗を回避したいイスラエルらしい装備といえる、そのイスラエルはトロフィー戦車防護装置を開発したのは有名ですね。

 トロフィー戦車防護装置は戦車に接近するミサイルを感知し擲弾を発射、撃墜する。つまり駆逐艦が対艦ミサイルに備えて個艦防衛用ミサイルを搭載したように、戦車もミサイルを打ち落とす時代となりました。徘徊式弾薬を開発した国ならではの、相手が同じものを装備した場合への備えで、メルカヴァ、エイブラムス、レオパルド2等が積む計画がある。

 戦車。さて、戦車に重大な脅威を及ぼしたミサイルへの対策目処が立ち初めまして、すると考えさせられるのは戦車は10名以下の兵員で運用できる装備としては事実上最強の装備である、ということです。10名居れば10式戦車ならば3両を動かすことが出来ます、もっとも戦車は3名乗りなので一人は軽装甲機動車にでも乗る必要が出てきますけれども。

 軽装甲機動車は例えば無人機や個人携行可能なスイッチブレード徘徊式弾薬の運用、牽引能力を活かして段列地区からの予備燃料の輸送、段列地区の自衛警備などに威力を発揮するでしょう、ミサイル防御装置を搭載し設計上配慮されているという戦車砲を換装した10式戦車2両と軽装甲機動車2両があれば10名、これで分散運用した場合は敵には手強い。

 分散運用。2020年にアメリカ国防総省と太平洋軍は台湾防衛に関する大規模図上演習を実施、2018年と2019年には敗北の結果を突きつけられましたが、分散運用の徹底と新世代装備の活用により優性を維持できることとなりました。想定ではヒッカム基地へのミサイル攻撃により指揮中枢が麻痺する想定でしたが、指揮系統を分散化し作戦を維持できた。

 アメリカ海兵隊などは戦車を廃止する方向に2019年より舵を切りましたが、戦車の火力はフランスが次世代戦車にテレスコープ弾薬の採用により140mm砲までの大口径化への目処を立てていますし、これまでの懸念であったミサイルに対しても防御の可能性を示している。すると、140mm砲であれば艦砲にも反撃できうるものですし、その他の機能も高い。

 戦車の火力は万能です、こう言いうるもう一つの要素は戦車の戦闘システムが自己完結型であるところです。直接照準戦闘を行う戦車ですので自己完結であるのは当然といえば当然ですが、あらゆる支援が途絶した場合でも元々通信能力は高いですし、戦車2両と支援する軽装甲機動車2両があれば、小さな離島でも充分防衛し得る、少なくとも出来うる。

 戦車を独立運用した場合は整備などはどうするのか、こう反論があるかもしれませんが、例えば整備小隊が行うC整備などは戦車乗員だけでは行えません、どうするのか。しかしこのC整備にしても離島ならではの利点がある、C整備は250km走行ごとに実施しますが離島ならば狭い故に、250kmも走り回ることはあまり考えられず済むかもしれません。

 分散運用などしたら各個撃破されるシロウトの運用だ、こう反論されるかもしれません。しかし重要なのは、安易に島嶼部を占領されないよう、また護衛艦部隊などの増援を受けるまでの数十時間、持久することに意味があります。すると集約した結果で部隊が全くいない離島を多数放置したままわけるほうが、むしろ問題といえるのではないでしょうか。

 離島への配備は、10式戦車2両と軽装甲機動車2両の分遣隊を多数配備する、こう仮定した場合、おおすみ型輸送艦を用いた場合は6個分遣隊を1隻で輸送可能です。もっとも整備支援にはUH-60JAで整備小隊を循環展開する必要が出てきますし、数十時間以上の戦闘は難しいですが、戦車300両体制を再検討し、戦車重視の島嶼部防衛も考えるべきと思う。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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