北大路機関

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台風18号北関東豪雨災害、栃木・茨城両県へ大雨特別警報発令と鬼怒川堤防決壊水害発生

2015-09-10 22:45:01 | 防災・災害派遣
■台風18号北関東豪雨災害
 台風18号が昨日、伊勢湾から愛知県に上陸し東海北陸地方を蹂躙しましたが、これに伴う豪雨災害が北関東一帯で発生し非常に危険な状況となっています。

 第二北大路機関において既報の通り、鬼怒川堤防が決壊、自衛隊が出動しています。栃木と茨城に大雨特別警報 福島でも厳重警戒が呼びかけられていた最中、茨城県内利根川水系鬼怒川が常総市新石下付近で1250時頃堤防が決壊し、堤防付近の住宅地が濁流に押し流されました、孤立者が多く茨城県知事は自衛隊へ人命救助に関する災害派遣を要請し、自衛隊は初動として東部方面航空隊、第12ヘリコプター隊、百里救難隊、以上から8機を派遣し孤立者の救助に当たりました。

 東日本大震災の教訓が生かされ、自衛隊と警察消防自治体に海上保安庁のヘリコプターが狭い地域に集中投入され、100名以上をホイスト救助しましたが、この水害の背景を見てみましょう。気象庁は本日0020時、栃木県に大雨特別警報を発表しました。栃木県日光市土呂部で24時間雨量が400mmを超え、気象庁は数十年に一度の規模の豪雨が発生しているとの判断から特別警報発令に踏み切りました、大雨警報の一段上として大規模な災害が切迫している状況で発令され、本日午後には鬼怒川堤防決壊水害が発生してしまいましたのは上記の通り。

 大雨特別警報発令の背景には、日本海上の温帯低気圧となった台風18号と太平洋上を進む台風17号の二つの台風と元台風が、その二つを結ぶ線上に位置する北関東南東北地方へ湿った空気の流れを構成し、山間部で次々と積乱雲が発生し豪雨をもたらす線上豪雨により栃木県が歴史的豪雨に見舞われた事に起因します。重ねて、山形県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、香川県、徳島県、以上10都県に土砂災害警戒情報が発令され、厳重な警戒が呼びかけられています。

 報道引用ですが、宇都宮市中心部 約8000人に避難勧告 (9月10日 2時35分)、栃木 渡良瀬川の下流が氾濫危険水位に (9月10日 2時32分)、栃木 鹿沼市 2万3000人余に避難指示 (9月10日 2時16分)、茨城 常総市 7000人余に避難指示 (9月10日 2時39分)、栃木 塩谷町の一部に避難指示 (9月10日 2時38分)、茨城 常総市 7000人余に避難指示 (9月10日 2時39分)、次々と避難勧告が発令されました。政府はこれを受け、官邸対策室を設置、安倍総理大臣は関係各省庁へ全力で対応するよう命じています。そして続くように、気象庁は0745時、新たに茨城県へ大雨特別警報を発令しました。 

 茨城県知事は0950時、陸上自衛隊勝田駐屯地の施設学校へ、孤立者の救助とボートによる避難支援及び土嚢による水防活動等に係る災害派遣要請を出し、自衛隊は施設教導隊より災害派遣部隊の派遣を開始し、同時に東部方面航空隊と百里救難隊が航空機による情報収集を開始しました、しかし茨城県常総市にて鬼怒川の水位が堤防を越え越水し、相次ぐ救助要請が通報されました、この時点で80名以上が身動きをとれ無い状況となり、茨城県内利根川水系鬼怒川が常総市新石下付近で1250時頃堤防が決壊して氾濫しました、国土交通省によれば首都圏での大規模な堤防決壊は1986年以来とのこと。

 鬼怒川堤防決壊水害は堤防の太陽光発電所と思われる区画を押し流したまま濁流が住宅街に流れ込み、堤防と県道の避難路を押し流すと共に木造家屋が次々と押し潰され、逃げ遅れた人々を襲いました、屋上に逃げた住民に危機が迫る中、自治体の防災ヘリコプター、続いて陸上自衛隊のUH-60JA,航空自衛隊のUH-60Jが飛来し、屋内避難者と濁流に取り残された被災者を救助しています、実に間一髪であった場面ばかりで、時間を要するホイストによる吊上げ救助が完了した家屋が十数分を経て幾つも幾つも押し潰されました、屋上に被災者と愛犬が取り残された一幕もありましたが、新潟中越地震のように置き去りとはならず、第12ヘリコプター隊のUH-60JAにより無事救助され、安堵しましたしだい。

 水害の危険は、併せて福島県内でも高まり昼ごろに大雨特別警報の発令を検討している点が示唆され、同時に利根川水系の思川、新潟県の阿賀野川、栃木県を流れる小貝川、茨城県を流れる利根川水系の桜川、埼玉県や東京23区東部を流れる中川、以上で氾濫危険水位を越えたとの発表が国土交通省より為されています。また鬼怒川堤防決壊は孤立者が国土交通省により浸水地域に6900軒あるとされ、水位が下がる見通しが無いことから夜までの救助が必要とされます、このため、防衛省は投入する航空機の大幅増強を決定し、海上自衛隊のSH-60K,陸上自衛隊のUH-1Jも投入されています。

 今回災害派遣ではUH-60が市街地においてその能力の高さをいかんなく発揮しました、これは高出力のエンジン二基を搭載する出力に余裕ある機体の性能によるもので、強襲ヘリコプターや救難ヘリコプターとして運用される為航続距離と滞空時間が非常に長く、加えて15名が搭乗できます、更に自衛隊仕様機は気象レーダーに前方赤外線監視装置等を搭載している為、夜間や悪天候下の無視界状況にも任務飛行が可能で、高出力のエンジンは強風や雨天という悪天候でも機体を安定してホバーリングさせる事が可能、取得費用は大量生産した場合で35億円、通常は50億円と高価な航空機ですが、東日本大震災では大きな能力を発揮し9000名以上を吊り上げ、今回も100名以上を救助しました。

 しかし、水害は今なお継続中です、国土交通省は氾濫し水没した地域からの排水へ全力で取り組む姿勢を示していますが、茨城の常総市では9名が不明で110名余が孤立し救助を待っています。市街地では電柱やアンテナなどの障害物が多数あり、そこに道路が水没し濁流に覆われている状況で建物の屋根にヘリコプターを展開させる事は非常に高度な飛行技術を要し、防衛省では終夜の救難を検討中です。被害の全容は、いまだわかっていません。

北大路機関:はるな くらま
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1 コメント

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Unknown (付箋の誓い)
2015-09-13 04:57:38
各組織のヘリが大活躍で、ヘリオタが大興奮してました。
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