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【日曜特集】平成28年第1空挺団降下訓練始【03】響け”空の神兵”大空へ(2016-01-10)

2019-09-15 20:02:52 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■航空自衛隊輸送機から降下
 陸上自衛隊では空挺部隊の落下傘降下に際しては伝統的に名曲"空の神兵"が響きますが冬の寒空には一際とよく響きました。

 C-1輸送機の展開、既に降下準備を完了した隊員の姿が降下扉付近に確認できる。この100秒前に掛かるのは降下用意!環掛けッ!、号令でC-1機内には落下傘開傘紐と直結した環紐を通す導線が張られており、装具点検!、空挺隊員は前の空挺隊員装具を点検する。

 C-1機内の導線と落下傘は一体化しています、位置就け、この号令とともに、用意の号令を待ち、降下へ、降下その瞬間に自重で開傘紐は強く引かれる、こうする事で空挺隊員が輸送機を飛び出した瞬間に開傘紐は解き放たれ、空で自動的に丁度四秒後、落下傘は花開く。

 C-1輸送機は1970年初飛行の輸送機で、各国の輸送機が低速域の操縦性を重視する設計思想と対照的にジェット旅客機ボーイング737と同型のエンジンを採用し高速飛行性能を重視、これにより24時間当たりの輸送力を増大させるという、新幹線の発想で設計された。

 C-130輸送機の飛来、この種の飛行展示は航空祭や駐屯地祭の航過飛行に慣れてしまいますと、一回の航過飛行で完了してしまう印象がありますが、何しろ習志野訓練場は狭い為、一度で全員が降下する事は出来ず、結果的に何度も上空を降下へ航過してゆくのですね。

 落下傘が自動開傘するまでは四秒間、いち降下ッ!にい降下ッ!さん降下ッ!よん降下ッ!!、開くまでを数えます、正にその瞬間がC-130の降下扉から跳んだ直後の空挺隊員が写っています、落下傘は引き出され、紐と共に開く瞬間を待っている瞬間が写りました。

 696ML/12落下傘は現在の13式空挺傘の前型に当ります、696ML/12落下傘が更にその前の60式空挺傘が空中で瀬食すると変形し高速落下する危険があったのに対し、空中で接触した場合でも元の形状へ戻るまで迅速という利点がある。ただ、絡まりやすい、ともいう。

 13式空挺傘は空中で接触した場合でも元の形状に迅速に復元する為、輸送機の左右両扉から同時に降下する事が出来ます。この利点は同じ降下点に対して一機あたり、いままで左右一方から降下したのに対し二倍の人員を迅速に降下できるという速度の利点があります。

 空挺大隊は380名、空挺中隊3個と大隊本部に情報小隊と通信小隊に対戦車小隊が就く。この空挺大隊は空挺団に3個ありまして、即応待機、准待機、訓練待機、とローテーションを組む事が可能です。この編成、2004年までは空挺普通科群、という一単位編成でした。

 KC-130空中給油輸送機からの降下が続く。C-130輸送機とKC-130空中給油輸送機は人員92名か空挺隊員60名、C-1輸送機は人員60名か空挺隊員45名を輸送します。これは単純計算ですが、空挺大隊380名輸送にはC-130H輸送機で7機、C-1輸送機で9機要る。

 空挺大隊には情報小隊は当然偵察オートバイや1/2tトラックで車両化されていますし、対戦車小隊には中距離多目的誘導弾が装備されている、空挺中隊にも一部は軽装甲機動車が装備されている。緩衝材と落下傘を加えると、これらを輸送するのはかなり嵩張ります。

 最先任曹長兼降下長が全員の降下完了、機内よし!扉よし!を輸送機機長に宣言し、お世話になりました!と喊声を上げて報告すると共に自らが最後の降下を行い、ここで航空自衛隊の空輸任務は完了、その瞬間から落下傘で降下し陸上自衛隊空挺部隊の任務が始る。

 航空自衛隊は小牧基地と入間基地に美保基地の三基地に輸送機を配備しています、小牧基地がC-130H輸送機とKC-130空中給油輸送機を装備する第401輸送航空隊、入間基地がC-1輸送機を装備する第402航空隊、そして美保基地が最新型機を有する第403航空隊を。

 C-2輸送機、川崎重工がC-1輸送機の後継として開発した新型輸送機を第403航空隊は運用しています、C-1は8t搭載し1500kmしか飛行できません。これがC-2では26t搭載し6800km飛行でき、最大37tまでの重貨物を搭載、人員だけならば10000km飛行できる。

 BTR-96装輪装甲車、仮設敵が攻撃を加えてきました。この空挺団降下訓練始めは空挺降下を展示すると共に空挺団の任務を空包用いた訓練展示模擬戦闘により展示します、つまり空挺部隊が降下した場所は我が領土を敵が占領しているとの想定です。戦が始まるのだ。

 96式装輪装甲車っぽいと思われるでしょうがBTR-96装甲車とした方が、仮設敵らしさが滲み出ているでしょう。74式戦車は仮設敵になった場合でT-74戦車、90式戦車ではT-90という戦車が実際に居ますし、K-90戦車とでも呼称するとそれっぽく感じるのでしょうか。

 P-3C哨戒機、下総教育航空群の機体です。状況によれば離島に敵が上陸し、奪還へ向かった空挺団に攻撃を加える兆候を見せているという。昨今の空挺団降下訓練始めでは島嶼部防衛を想定し、習志野訓練場を習志野島というような離島に見立てて状況を展開してゆく。

 P-3C哨戒機が旋回する、下総航空基地は房総半島南部に在ると勘違いする人が多いのですが、それは館山航空基地の方で下総航空基地は千葉県柏市に在ります。つまり習志野訓練場からかなり近い位置、航空基地祭は余り混雑しない穴場的な航空祭として有名な一つ。

 BTR-96装甲車部隊が我が空挺部隊に対し間合いを詰めてきます、しかし、空挺部隊の展開と共に敵が行動を開始したという事は、その位置を暴露しつつあるという事です。一方、P-3C哨戒機が飛行できる程度に航空優勢は我に有利、我が方の防衛作戦が本格化します。

 LR-2連絡偵察機、陸上自衛隊が保有する唯一の固定翼機が航空偵察を開始します。実は2016年のこの降下訓練始めの時点では僅かにLR-1連絡偵察機が木更津で運用中でありLR-1がこの日参加するという話題もあったのですが、飛来してきましたのはLR-2でした。

 LR-2は偵察ポッドを搭載する事で画像偵察機として運用可能、機内に観測員を複数搭乗させ情報収集機として運用する事もあります。更に前のLR-1は偵察任務に加えまして12.7mm機銃ポッドを搭載し、軽対地攻撃機、COIN機として運用する事も可能でした。

 LR-2はアメリカキングエア社製、現在のホーカーキングエア社のキングエア350自衛隊仕様機で、実は平時における情報収集任務や電波観測任務等、この規模の航空機、運用する需要は相応に大きく、自衛隊の導入数は僅かですが安価ですし数が在って良い機種と思う。

 BTR-96装甲車の攻撃が本格化しつつある、ここ前型LR-1であれば搭載する二丁の12.7mm機銃により、制圧出来たのかもしれません、BTR-96は重量14.5tの軽装甲車ですので上面を12.7mmで集中射撃したならば、撃破できたでしょう。反撃が怖いですが、ね。

 CH-47JA輸送ヘリコプターにより、空挺団本部偵察小隊の高高度降下が開始される。敵BTR-96装甲車は我がLR-2の強硬偵察を前に航空攻撃を警戒し、一時後退しました。そこで空挺団は更なる空挺部隊の投入を行うべく、高高度降下による情報収集を開始しました。

 自由降下による情報収集、空挺団本部には本部中隊として、偵察小隊と降下誘導小隊が置かれており、政府が外交政策では全く投了状態となった際に憲法上の権利を国民へ護るべく探す選択肢として、自衛隊で最後に頼る空挺団、その情報収集を行う事がその任務です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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