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陸上防衛作戦部隊論(第六五回):装甲機動旅団再検討日本版機甲支隊、米軍機甲支隊の成功

2017-11-27 20:14:25 | 防衛・安全保障
■実戦参加米軍機甲支隊を参考
 幹部自衛官のアメリカ留学やドイツ留学等を経て、自衛隊幹部の指揮官としての優秀性は世界でも一定水準の評価があります、だからこそ、その能力を最大限活かせる部隊が必要でしょう。

 装甲機動旅団隷下の連隊戦闘団、その下で中隊長と中隊本部機能を流用し複数の小隊を集成し独立した戦闘能力を付与させる、という方式は、師団普通科連隊へ戦車中隊を配属した甲師団乙師団の連隊戦闘団編成においても必要に応じ採用された方式です、戦車中隊隷下の小隊を普通科中隊へ派出するだけの戦車定数が認められていた時代の方策でした。

 しかし、アメリカ陸軍においても即応支隊IRTF、としまして増強中隊規模の部隊を軍団規模で常時待機させています、これは1993年のソマリア安定化作戦に際し、特殊部隊と山岳師団主体の安定化部隊が大規模な市街戦に巻き込まれ、在欧米軍より緊急編成し派遣したM-1A1戦車等を装備する増援の機甲支隊が小規模ながら大きな能力を発揮出来たためです。

 アメリカ軍の機甲支隊は2003年のイラク戦争に際しても、攻撃の主力を担うクウェートからのイラク南方戦線に加え、イラク北部戦線へC-17戦域間輸送機により投入され、戦略的成果を上げました。当時、トルコ政府がクルド問題との関係からイラク北部へのトルコ国境米軍通過を拒否し、アメリカ軍は空挺部隊を投入、機甲支隊は支援へ投入されました。

 イラク戦争北部戦線へは第173空挺旅団の2200名が効果展開しましたが、空挺旅団には装甲車両が無く、在欧米軍第1歩兵師団よりM-1A1戦車5両やM-2A2装甲戦闘車5両を装備する1/63機甲支隊を派遣、イラク政府は当初想定外であった北部への米軍戦車部隊出現により防衛計画が大きく混乱、規模は少なくともその戦略的意義の大きさが分りましょう。

 その上で、航空機動旅団編成案において、戦闘基本単位に中隊戦闘群、としまして、普通科中隊へ機動力と分散集合能力の大きな軽装甲機動車小隊を付与し、協同する運用方式を提示、この方策を装甲機動旅団の運用へも応用できないかとの視点から、図上での検証と運用研究を重ね、装甲中隊戦闘群、という独立戦闘部隊試案を提示する事となりました。

 装甲中隊戦闘群、この編成は固定編成ではありません。この為、必要であれば連隊隷下に機械化大隊を置き攻撃前進等打撃力を集中する際の骨幹戦力を構成し、その他の軽装甲車両や対戦車火力は統合し情報優位の基幹部隊としての捜索大隊という、異なる二つの大隊を置く、もしくは他の選択肢として、装甲中隊戦闘群を4個置く、という選択肢がある。

 4個の戦闘基幹部隊、戦術単位を配置する場合、連隊長の手元には特科大隊と対戦車部隊等、必要ならば投入できる、所謂“最後の手札”、というものが残ります。旅団は師団から全般支援火力の増援を受ける事が可能です。勿論、連隊戦闘団の連隊長の結審により編成される戦闘序列ですので、編成は状況に応じ柔軟に転換できます。この点意義は非常に大きい。

 戦闘単位は自由自在です。装甲機動旅団としては、3個機械化大隊3個捜索大隊を置く事も、12個装甲中隊戦闘群を置き沿岸部を広範囲に警戒する、2個機械化大隊2個捜索大隊に4個装甲中隊戦闘群、1個機械化大隊1個捜索大隊に8個装甲中隊戦闘群、旅団の運用の自由度も広げる事が可能です。平時1個装甲中隊戦闘群を即応待機に置くことも可能でしょう。

 本案の背景には自衛隊中隊長の高い位置づけがあります、元々高い管理能力と独自火力を持つ中隊の指揮官へは最低でも幹部上級課程AOC,指揮幕僚課程CGSを修了した幹部や幹部特修課程FOCを経て補職する、諸外国でいう初級幹部の補職先という中隊長よりも一段高い教育を受ける、複合火力と装備を持つ混成部隊でも指揮可能との視点に基づきました。

北大路機関:はるな くらま
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