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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

民主党細野幹事長代理 シーレーン防衛恒久法制定を提唱

2010-06-20 23:35:12 | 国際・政治

◆防衛のバラマキ?緊縮ありきの予算と任務拡大論

 鳩山政権から菅政権に転換して、社民党が離脱したことにより防衛政策に踏み込んだ発言が増えてきました。しかし、予算措置人的措置を伴わず、これでは防衛のバラマキだ、と思えてくるのが今日この頃。

Img_7933  これについて興味深い記事がありましたので日経新聞から記事を引用します。海自のシーレーン防衛、恒久法で 民主・細野氏2010/6/19【ワシントン=大石格】・・・訪米中の細野豪志民主党幹事長代理は18日、日本の国際貢献の一環として海上自衛隊によるシーレーン防衛を実施すべきだとの考えを表明した。

Img_9026_1  海自は海賊対策法に基づきソマリア沖に艦船を派遣中だが細野氏は「地域を限定した特措法でない方がよい」と述べ、幅広く活動できる恒久法制定を提唱した。ワシントン市内で記者団に語った。海自によるインド洋での給油活動の再開案に関しては「一度やめたものだし、シーレーン防衛そのものではない」と指摘し、消極姿勢をみせた。

Img_2180  これに先立ちホワイトハウスのベーダー米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長と会談。普天間基地の移設に関する日米合意の実現を参院選のマニフェストに盛り込んだことを伝達。南シナ海における中国海軍の活動状況などで意見交換した。

Img_7413  米シンクタンクでの講演では「日米同盟の機能的拡大」を目指すと強調。菅政権は鳩山前政権と異なり、(1)現実的な判断ができる(2)司令塔が明確だ――などと述べた。引用は以上です。http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E3EBE2E2E68DE3EBE2E4E0E2E3E29C9C97E2E2E2

Img_1322  普天間問題の政権内部での合意に至る事が出来なかったことから民主党が社会民主党との連立政権を解消して以来、もっともこれを契機に鳩山政権は崩壊し辞職したのですけれども、民主党は安全保障政策について自民党の理念と接近してきているように見えてきます。今回の恒久法提案についても同様です。

Img_3822  もともとシーレーン防衛を含む恒久法お制定は民主党が野党時代にテロ対策特別措置法に基づいて自衛隊の活動を実施していた時代から、自民党の時限立法による、民主党の表現を借りれば場当たり的な対処ではなく、長期的な自衛隊の任務を見据えた恒久法の制定が必要、と繰り返していました。

Img_1087  今回の発言は“地域を限定せず”、と表現していますので、これはシーレーン防衛のみならず、テロとの戦いに関するもので日本の安全保障に関連する事項であれば、新しい立法措置を行わずとも自衛隊を世界規模で展開させ、任務に対応させることを目指すもの、と読み取ることが出来ます。

Img_7213  しかし、一点気になるのは、自衛隊の任務の上限を定めない、という事にもなりますので、基本的に1000浬シーレーン防衛の延長として部隊編成を行ってきた海上自衛隊と、本土防空に特化した航空自衛隊、専守防衛を原則として装備や部隊編成、配置と訓練を実施してきた陸上自衛隊を現行編成のままこうした任務に充てることは妥当なのか、という疑問符が付きます。

Img_6911  昨今、安全保障や軍事に関する識者には、欧州の事例を出し、ドイツやイギリスが陸軍兵力を大幅に削減して冷戦型の編成から重装備を削り機動力を増強させる形で世界規模での脅威に対応させることが可能となるような体制への再編を行っている旨を紹介し、日本も冷戦型の編成からの脱却が必要だ、という発言がある事も確かです。

Img_2222  しかし、日本周辺の情勢はこれまでの記載しましたように、冷戦時代最大の脅威であり縮小傾向にあった北方の脅威が昨今の大型水上戦闘艦の航行や戦略爆撃機の出現として再度増加の傾向にあり、そこに冷戦時代はあまり大きな脅威では無かった中国が海空軍の勢力を増大させ日本周辺での行動が活性化、朝鮮半島情勢も予断を許さないものとなっており、冷戦型の延長上にある、という状況を忘れてはなりません。

Img_7547  仮に恒久法を制定したとして、自衛艦隊の編成をどうするのか、という問題があります。かつてはシーレーン防衛を自衛艦隊、沿岸警備と基地機能を維持を横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊に置かれた地方隊が対応していて、護衛艦の数も、大型艦と小型艦の違いはありましたが均衡していました。しかし、現在では護衛艦は全て護衛艦隊に集約されているという状況があります。

Img_0847  ここに地域を区切らずシーレーン防衛を行う、という恒久法を制定するのならば、護衛艦隊が分散したのちに沿岸警備を行うために地方隊の再編、という事を本格的に検討しなければならなくなるでしょう。しかし、護衛艦定数は約60隻の時代から地方隊を縮減した事で大型化はしたのですが、現在の定数は40隻台、かなり縮減されています。

Img_6256  恒久法を制定して任務範囲を増大させるのならば、海上自衛隊がこれまでにない広い地域で任務に当たる場合に、補給艦を含めたロジスティクスはどのように行うのか、艦隊防空を含めた対処が必要な脅威が生じた際にどのように実施するのか、広域化する任務と本土防衛をどのようにして両立するのか、という事が明確となっていない理念先行型、というようにも思えてきます。

Img_6870  これは表現は編ですが、防衛政策のバラマキを行って防衛政策の担当能力を無理やり見せているようにしか見えません。任務増大任務増大しかし予算的人的裏付けなし、これは財源のめどを立てずに行った鳩山政権時代の福祉バラマキ政策と余り変わりません。どういう任務にはどのくらいの規模の部隊や人員が必要になるのか、防衛大綱に盛り込んだうえでの発言が必要でしょう。少なくとも、今回の発言に際して、必要な部隊の編成と予算措置を行う、という一言は付け加えてほしかったですね。

HARUNA

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2 コメント

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結局アメリカから無視されて、ビビッて、あること... (蒼い)
2010-06-21 21:44:07
結局アメリカから無視されて、ビビッて、あること無いこと、財源も詳細な計画も、深い戦力的思考も無い、行き当たりばったりの発言でしょうね。
海兵隊基地海外移転と同じような現実感の無い発言でしょうね。
何も考えてないでしょう。後で必ず修正されるはずです。
自衛隊の数減らす、防衛予算減らす、集団的自衛権を認めるわけでもない、
日本だけの防衛すら縮ませてるのに、どうシーレーンを守ろうというのか、
他国とシーレーン共同防衛する法的な根拠はどうするのか、相変わらずその場限りの発言です。
これだとアメリカが脅せば一国の首相がやめてしまう、中国に艦隊おくられて脅されると、東シナ海のガス田を譲ってしまう、とてつもなく弱弱しい国にという印象を内外で持たれる事になり、日本のイメージにとって良くないですね。
結局自分の国を自分で守る覚悟、勇気のない国というのは、誰からも尊敬されませんね。
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蒼い 様 おはようございます (はるな)
2010-06-22 08:49:48
蒼い 様 おはようございます

シーレーン防衛ですが、背景に多少の知識があっても、行き当たりばったりと誤解を与えた1000カイリシーレーン防衛の鈴木首相の話を思い出しますので、まず、そういった思案は防衛大綱などを通じて、任務と必要な部隊のあり方、とともに出してくれた方が、という印象です。

ガス田共同開発の主導権喪失といい、普天間問題と言い、仰る通り、軍事的な外圧で国民の不利益をどの程度考慮しているのか、という点にかなり不安があります。ガス田の問題も、あの時点で佐世保に護衛艦隊集合訓練を緊急に行えば物凄い圧力を加えられましたでしょうし、普天間問題も合意前ならば海兵隊の抑止力を不要とするくらいの自衛隊を沖縄に配置する覚悟があれば、アメリカも移転案に柔軟な姿勢を見せた事でしょう。
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