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【くらま】日本DDH物語 《第三一回》はるな型護衛艦と大型ヘリコプター艦載への新技術

2017-11-25 20:12:21 | 先端軍事テクノロジー
■観艦式くらまMCH-101着艦
 はるな型に始るヘリコプター搭載護衛艦の歴史は大型ヘリコプターの着艦技術により初めて実現しました。

 ヘリコプター搭載護衛艦くらま、2015年の自衛隊観艦式では安倍内閣総理大臣搭乗のMCH-101掃海輸送ヘリコプター着艦を果たしました、MCH-101掃海輸送ヘリコプターは35名乗りのEH-101輸送ヘリコプターで現在はAW-101として提示される三発式大型ヘリコプターです、運用可能であることは知っていましたが目の前で見ますとある種感動です。

 MCH-101掃海輸送ヘリコプターの原型であるEH-101輸送ヘリコプターは対潜型がイギリス海軍向けに開発されていまして、これはシーキング対潜ヘリコプターの運用能力を持つ水上戦闘艦であれば発着を含め運用が可能となるよう、機体形状や運用重量などに配慮がありまして、シーキングと云えば海上自衛隊のHSS-2対潜ヘリコプターを示す機種です。

 くらま艦上ではHSS-2Bが運用されていましたので、MCH-101を運用できるのはある種当然ではあったのですが、それならば、くらま艦上から一機分の区画に掃海器材を搭載し掃海母艦としての運用も可能となりますし、緊急人道支援任務に際してイギリス海軍のコマンドー母艦と同等の両用作戦母艦としても運用できるのだなあと多用途性を認識しました。

 HSS-2を護衛艦で運用する、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型、ヘリコプター搭載護衛艦しらね型、護衛艦はつゆき型、護衛艦あさぎり型、と当然のように運用実績を重ねてきました今日の視点としては当然できるものなのだろう、と思われるかもしれませんが、運用開始前においては、果たして護衛艦の規模で発着と運用が可能なのか、確証がありません。

 カナダ海軍が開発したベアトラップ発着支援装置、という新装備により海上自衛隊が構想する4000t級の水上戦闘艦においてもHSS-2を運用できる見通しは立ち始めていたようですが、海上自衛隊はアメリカ海軍より供与された大戦中のLST-1型戦車揚陸艦おおすみ型の三番艦しれとこ艦上にベアトラップを設置し、ヘリコプター運用実験を開始しています。

 カナダ海軍のベアトラップ着艦高速装置は、コロンブスの卵的な発想の逆転により開発されたもので、ベアトラップ、つまり猛獣などを捕獲する罠、トラバサミ型の拘束装置を駆逐艦の飛行甲板に設置し、着艦するヘリコプターからトラバサミに挟まれる専用の拘束器具を鋼索で展開、揺れる艦上に敢えて罠にかかる形で拘束され、安全に着艦するという。

 駆逐艦規模の水上戦闘艦へヘリコプターを搭載する事は、特に対潜哨戒任務の能力を大きく向上させる事で理想的な選択肢でしたが、駆逐艦規模の船体に設置できる飛行甲板の面積は限られており、更に太平洋の波浪は時化の悪天候でなくとも外洋では大きく動揺する為、着艦した瞬間に船体が動揺すればそのまま飛行甲板を海へ滑り落ちる危険があります。

 LST-1型戦車揚陸艦おおすみ型でのベアトラップ運用試験が実施され、良好な成績を得ました。実はLST-1型戦車揚陸艦でのヘリコプター運用は朝鮮戦争の時代にすでにアメリカ軍が実施しています。洋上に停止したLST-1型戦車揚陸艦の露天甲板に救難ヘリコプターを配置し、運用するというものです。しかし、これでは航行中に発着艦する事は無理です。

 カナダ製、実はアメリカ海軍は諸般の理由から駆逐艦からのヘリコプター運用に積極的ではなく、QH-50-DASH無人ヘリコプター等の運用に特化し、駆逐艦より大型の原子力フリゲイト、当時は駆逐艦より大型の水上戦闘艦の中で艦砲重視を巡洋艦とミサイル重視の物をフリゲイトとしていた、この中で駆逐艦にはそれ程航空運用を重視していませんでした。

北大路機関:はるな くらま
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