北大路機関

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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第四回・・・徒歩歩兵の新しい運動戦への対応

2015-02-02 22:22:22 | 防衛・安全保障
◆運動戦と空中機動
 前回までに掩蔽陣地を基本とした陣地戦闘は装甲車により置き換えられ、これが城郭から野戦陣地への転換の流れの延長線上にある事を紹介しました。主陣地と射撃陣地を交通壕により結ぶ方式は先進国において過去のものとなった、ということです。

 こうしますと、稜郭陣地や塹壕陣地は、五稜郭のような相互支援のための形状が文字通り装甲車の陣形により置き換えられた、と言えます。稜郭陣地がこの形状に発展したのは、塹壕線が単一線として位置しただけでは相互に火力支援や人員などの兵力展開支援を行えないために発展した帰結ですが、装甲車は容易に部隊陣形を転換可能です。装甲車が装甲箱ではなく装甲車たる所以はここ。

 動けない掩蔽陣地に対して、装甲車による防御は運動戦を志向しているため、従来の陣地防御に対する運動戦、例えば空挺強襲による連絡線遮断や接近経路確保への対処は容易となります。更に錯綜地形では装甲車の機動には制限が掛かるものの、徒歩歩兵や陣地戦闘では対処できない方法を選択し得ます。

 そして装甲車の重要性を示したのですが、もちろん、徒歩歩兵の価値が完全に失われたわけではありません。山岳歩兵等は装甲車が運用出来ない地形を踏破するため、装甲化が出来ません。そして山間部には隘路など緊要地形、其処地点を確保することで優勢を得られる地形がある。

 例えば隘路などにおいて挟撃できる位置を確保するには徒歩歩兵の踏破力が不可欠であり、携帯対戦車火器の発展はこの重要性を更に高める事となっています。山岳歩兵は、特殊部隊的な位置づけを残し、地形制約の克服という意味で空中機動部隊による歩兵展開に部分的にその道を譲りました。

 そして、空挺歩兵についても、展開への地形制約への克服という意味で同様の位置づけがあります。もちろん、正面から機械化部隊と相対することは絶大な損耗を強いられるため、緊要地形を先制到着するのではなく先制確保する事、つまり陣地構築の時間を見越さなければならないのですが。

 機械化部隊に関する新動向は、空中機動作戦の普遍化にあります。第二次大戦当時、空挺作戦は特殊作戦に範疇に含まれ、通常の歩兵師団ではなく空挺師団が対応していました。しかし、第二次大戦末期にヘリコプターの技術が開発され、朝鮮戦争期には墜落時の操縦士救出や急患輸送に対応します。

 インドシナ戦争期には、限定的に空中機動、小隊規模の増援部隊をヘリボーンする概念が萌芽し、マラヤ動乱期には空中機動部隊という概念の下、ヘリコプターによる機動歩兵という概念が定着してゆきます。これがヴェトナム戦争期には機動力が評価され一挙に普及するのですが、同時期に当然ながら所謂装甲車や戦車等機械化部隊主体の戦線にも波及してゆきました。

北大路機関:はるな
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-02-03 00:02:59
いつまでこのネタやるの?流石に飽きたわ
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まだまだ続きます (はるな)
2015-02-03 00:18:49
昔は特集記事を三種類用意して各十日ごとに掲載していたのですが、ね・・・
返信する

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