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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

広島長崎原爆忌二〇二四【1】79年前の今日-広島が核攻撃を受けた,2020年代の核兵器と危機の核軍備管理

2024-08-06 20:00:12 | 北大路機関特別企画
■原爆忌二〇二四
 見上げる大空を星々への希望として捉えるか敵の航空機が殺戮へ侵入する頭上の脅威として身構えるか。

 1945年の今日、広島は世界で初めて、核攻撃を受けることとなりました。核分裂を兵器に応用するという視座は、アメリカはじめ連合国が大量の化学兵器や生物兵器を保有しているにもかかわらず、仮にこれを苦戦する太平洋方面で使用するならば、日本にも大量の化学兵器と生物兵器があり、報復使用という蓋然性を直視する必要がありました。

 化学兵器と生物兵器は、戦後アメリカが注視したのは日本の航続距離の大きな伊号潜水艦、特型といわれる伊号四〇〇型など艦載機を搭載したものを含め、マゼラン海峡を回りアメリカ東海岸のワシントンDCやニューヨークをも航続圏内に収めていることから、仮に日本がその気になれば化学兵器を東海岸に散布できたことを知り驚愕していましたが。

 核兵器はそうした中に在って、報復の可能性が、日本の核兵器開発はようやく基礎研究を終えたばかりの段階であった、危険性を考慮せず使用できるとして、非戦闘員が多数居住する広島市に6日、長崎市に9日、投下しています。ただ、威力がありすぎるとともに1954年には核分裂ではなく核融合を利用した水素爆弾が開発、威力は規格外でした。

 国際公序として、核兵器は日常的に使用する兵器の延長線上に置くべきではない、という認識が共有され、先ず1950年代の大量報復戦略、一発でも核兵器が使われるならば報復に全ての核兵器を一気に投入する戦略が、柔軟反応戦略、使われた段階で使われた規模だけ報復し一気に全面核戦争に進むことを抑止する枠組みが出来、続いて軍備管理が。

 大量報復戦略から柔軟反応戦略へ1960年代に移行するとともに、100メガトン級水爆の開発など、実戦で使えない核兵器という認識が広まります。ツァーリボンバ核実験は1961年にソ連が100メガトン水爆を50メガトンに出力制限の上で実験は、遥か1000㎞以上離れたモスクワにも衝撃波を届け、これがソ連文化人による核軍縮運動の発端となる。

 部分的核実験禁止条約に包括的核実験禁止条約、ミサイル技術拡散防止レジームにINF中距離核戦力全廃条約、第一次戦略兵器削減条約と第二次戦略兵器削減条約、核兵器は単に威力の大きな爆発物ではなく、いったん使う事で世界の均衡に影響が及ぶという認識のもとで削減の道が軌道に乗り始めてはいましたし、最盛期よりは核兵器もかなり減った。

 INF中距離核戦力全廃条約は、地上発射型兵器のみに適用した事で抜け道が多くあり過ぎ、また500㎞から5500㎞までの射程の兵器を米ソだけが全廃する枠組みはその他の国と不均衡を生み条約は廃止、また2010年代に入り締結された2011年の新戦略兵器削減条約は、2023年にロシアが脱退を定めた法律を成立させ、揺らぎが生じているのですが。

 性善説、日本政府は別として世界の核軍備管理への姿勢は性善説に偏り過ぎているのではないか、という事を危惧します。いや日本の左翼的平和運動においても核軍備管理には性善説、核兵器を欲しがる国など何処にもいないのだ、という一種陰謀論、持たされているような視座に基づく姿勢がみてとれまして、現状で危機感を覚えるところです。

 核兵器を巡る国際政治、現在ロシアウクライナ戦争により危機的な状況を迎えています、それは単純にロシア軍がウクライナにおいて戦術核兵器を使う、というような危機という訳ではありません。いや、逆にウクライナでは戦術核兵器を使いにくい状況が成立しており、第三次世界大戦を覚悟しない限りウクライナでの核兵器使用は無いでしょう。

 ウクライナでの核兵器使用は、NATOがロシアウクライナ戦争開戦後、マリウポリなどの戦闘に際しその懸念が強くなった際、“ウクライナで核兵器が使用された場合はNATOが介入する”という明白な線引きがNATOの一致した意志として示され、ロシア軍は逆に核兵器を使用しなければNATOは介入しない、使用すれば介入する、と理解している。

 介入、思えば2022年の開戦直前に、アメリカはロシアがウクライナへ侵攻した場合でも直接介入しない、というバイデン大統領の発言が、ロシアが進行した場合にこれまでにない経済制裁を行う、と過去の発言を事実上、ロシアが進行した場合でも経済制裁が行われるだけ、とプーチン大統領に誤ったメッセージを送った、こう理解すべきかもしれません。

 核兵器。さて、ウクライナで戦術核兵器が使用される事は第三次世界大戦をプーチン大統領が覚悟しない限り起こり得ない、と理解する背景です。NATOが介入してもウクライナの状況は変わらない、と主張される方がいるかもしれませんが、NATOは航空戦力を重視しており、必要ならばモスクワを叩ける位置に航空戦力を置いている点が重要です。

 NATOの介入は、航空戦力だけではなく、NATOはウクライナ軍と異なり戦術核兵器を170発から250発、ニュークリアシェアリングにより保有していることから、NATOに対して戦術核兵器を使用した場合、同程度の戦術核兵器により報復、出力調整型の核兵器により使用した核兵器のキロトン数と冷静に一致させ、報復するという点も肝要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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