北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

トランプ新大統領の外交国防戦略【01】 三五〇隻海軍構想、大統領選下の海軍再建発言の検証

2016-11-16 21:58:10 | 北大路機関特別企画
■トランプ三五〇隻海軍構想
 安倍総理は明日、ニューヨークにてトランプ次期アメリカ大統領と初の会談に臨みます。トランプ新大統領にとって、明日の安倍総理との会談は大統領選当選後初の外国首脳との会談となりました。

 ペルーで開かれるAPECアジア太平洋経済協力会議の首脳会議へ出席する途上、ニューヨークへ立ち寄り実現するものです。政府は今回の会談について、現在のアメリカ大統領はオバマ大統領である為、個人的な信頼関係を構築することに主眼が置かれた会談になる、との立場を強調していますが、トランプ大統領の外交政策、アメリカは内向きとなるのか、世界での地位も偉大なものとするのか、一端が語られる事でしょう。

 アメリカを再び偉大な国とする、壮大な計画を示しましたトランプ新大統領ですが、実態としては保護主義的な政策と世界各国からの軍事力引き上げを示唆しているので、逆にアメリカは内弁慶となり、世界におけるアメリカの勢力は相対的に低下するのではないか、この懸念は様々な分野において大統領選の時期から為されてきましたが、どうなるのか。今回から、アメリカの次期トランプ政権が進める外交防衛政策を分析してゆきたいと思います。

 三五〇隻海軍構想、これはトランプ大統領が公約として提示した国防政策で、具体的には戦闘艦の保有数を現在の1.5倍へ増強する構想というかなり大規模な艦隊計画です。現在アメリカ海軍は予算均衡法に基づく緊縮財政により国防費削減措置を実施中で2012年から五年間の強制削減措置を実施中です。この為、アメリカ海軍の水上戦闘艦部隊規模は第一次世界大戦後最小規模となっています。

 トランプ大統領が掲げる保護主義を実行するならば、長大なシーレーンを維持する必要が無くなり、世界の警察官をやめる事で戦力投射能力整備の事業評価が低下し、最後に財政再建と公共事業重視を掲げる、そこで350隻という数値を提示するとなりますと、建造費用の問題や維持費の問題がありますので、大型水上戦闘艦ばかりを数十隻短期間で建造する事は財政的な裏付けが必要となり、不足する部分はミサイル艇やミサイルコルベット等小型艦建造しか選択肢は無くなるでしょう。

 海軍力の強化の背景は財政難への反発です。緊縮財政により2012年から国防費を五年間で4900億ドル削減するという大規模な予算縮小措置を実施していましたので、陸海空軍及び海兵隊へ影響が及ぶのは当然で、海軍力の低下は致し方なく、毎年1000億ドル近い国防費の縮小を知られる中で、艦隊規模を増強は勿論、維持する事などできるわけがありません。

 レーガン大統領の六〇〇隻艦隊構想をもい出させる海軍計画、偉大なアメリカの復活を掲げるトランプ新大統領は三五〇隻海軍構想を掲げる事で偉大なアメリカ海軍の復活に繋げる構想でしょう。実際、アメリカが19世紀から20世紀初頭の帝国主義の時代に在って植民地を持たず国家を繁栄させた背景には海洋自由原則を掲げ、交易により国家経済を拡大させたためで、繁栄を維持するには海洋交通自由が不可欠です。

 アメリカが世界から引くのであれば新興勢力、欧州と中東ではロシアが、東南アジア南アジアとアフリカでは中国が、アメリカのポテンシャルを引き継ぎ、アメリカを排除した中ロによる新しい国際秩序が構築できるのではないか、両国の為政者と政策決定者の大きな視点はこうした部分に収斂するやしれません、しかし三五〇隻海軍構想は方向性が異なる。

 もちろん、アメリカを偉大な国とする、という施策と併せトランプ新大統領が提示した、最早アメリカは世界の警察官ではない、として軍事的な撤収を示唆し、導き出された一つの方向性ですが、アメリカの発展へ海洋自由原則が不可欠ならばこれは一転するでしょう。なお、現在のアメリカ海軍は航空母艦に潜水艦と水上戦闘艦で177隻、両用戦艦と機雷戦艦艇に支援艦を含めれば251隻という規模となっています。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 駆け付け警護任務、第11次... | トップ | 航空防衛作戦部隊論(第四四... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

北大路機関特別企画」カテゴリの最新記事