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【防衛情報】双十節-緊張の台湾海峡,防空識別圏中国軍機56機侵入と米軍極秘台湾軍事訓練

2021-11-09 20:03:13 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は台湾海峡情勢について最新情報を。一部識者は台湾侵攻は無いと論じますが中国大陸から0.8kmの距離に在る台湾金門島への限定侵攻は無視できるリスクではありません。

 中華民国台湾防空識別圏へ中国軍機56機が一日で侵入する異常事態が発生しました。これは10月4日、台湾南西沖空域の飛行情報区に基づき設定されている防空識別圏に侵入した中国機の総数で、戦闘機やミサイル爆撃機を中心としたものであり近年膨大過ぎる中国機の防空識別圏侵入に中華民国空軍は戦闘機保有数の限界から対応できなくなっています。

 中国は10月1日の中華人民共和国建国記念日に当る国慶節に併せて戦闘機部隊の訓練を強化しており、1日から4日までの四日間で149機が防空識別圏へ侵入しました。10月9日の辛亥革命110周年記念日には中国の習近平国家主席が台湾統一を諦めないと発言、習主席は7月にも台湾独立の動きは全て粉砕するとして軍事攻撃を示唆した発言がありました。
■米軍極秘台湾軍支援
 台湾はシンガポール軍へ演習場を提供するなど水面下で様々な防衛力強化を進めていますが。

 アメリカ特殊作戦軍や海兵隊は一年以上前から台湾への軍事訓練支援を実施していた、アメリカのWSJウォールストリートジャーナルが10月7日に報道しました。WSJ紙は情報源を匿名の関係者の話として報道していますが、動揺の報道は2020年11月に台湾メディアによっても報道されています。ただ、中華民国国防部はコメントを控えています。

 アメリカ国防総省のジョンサプル報道官は肯定も否定もせず台湾の防衛上必要な支援を行っていると発言を留めました。2020年11月には台湾軍兵士が米軍駐留支援で多忙を極めているとのSNS上の発言や、また誤っていたとして投稿は削除されていますが今年8月16日にアメリカのジョンコーエン上院議員が台湾に3万名が駐留とSNSに投稿がありました。

 WSJ紙の報道では、台湾へ展開したアメリカ軍要員は20名強であり、2020年11月台湾メディア報道では、中華民国海兵隊や海軍部隊へ小型艦艇での沿岸作戦や特殊部隊の訓練支援を行っているとのこと。アメリカのバイデン政権は現在台湾に対し武器売却等は実施していますが、有事の際の台湾防衛への米軍展開有無に関しては明言を避け続けています。
■双十節軍事パレード
 日本では長らくライセンス生産を行っているものでも台湾は105mm砲の国産化が出来ずアメリカよりM68戦車砲を輸入していますが、出来る事からの努力は続けています。

 中華民国台湾の建国記念日に当る双十節において蔡英文総統は中国を牽制しました。蔡英文総統は軍事圧力を強める中国に対し、中国が提案する一国二制度を拒否し、台湾と中国との関係は台湾自身が決定する権利を持つとし、中国軍機多数の相次いでいる防空識別圏侵入を、われわれの安全に深刻な影響を及ぼしているとし、強い口調で非難しました。

 民主主義の防衛線、台湾の防衛力強化をこう表現した蔡英文総統の訓示に続いて実施された双十節恒例の軍事パレードでは台湾が大車輪で量産を進める雲豹装輪装甲車の20mm機関砲塔搭載型や国産装輪多連装ロケット砲などが参加し、中でも対艦ミサイル雄風3や1980年代に開発された天弓シリーズ最新型天弓3地対空ミサイルなどが誇示されています。
■中国軍福建省上陸演習
 大陸近傍に位置します金門県の近くでの上陸演習は緊張を生むものです。

 中国人民解放軍は台湾の対岸福建省において上陸演習を実施しました。これは10月11日に中国国営メディアにより演習映像が公開され、台湾の蔡英文政権を牽制する狙いがると考えられています。上陸演習は大規模なものではなく、小型舟艇と歩兵部隊のみが参加、人民解放軍が誇る05式水陸両用戦闘車や最新の海南型強襲揚陸艦などは参加していません。

 福建省での演習ですが、小規模といわれても台湾当局には緊張の要素です。金門島など台湾の金門県が中国大陸から0.8kmの近距離に在り、1949年に上陸した人民解放軍を撃退しましたが、1958年から1979年まで金門砲撃戦として中国側が砲撃を続けた過去があり、0.8kmであれば現在中国人民解放軍は制空権を確保し海峡を渡るに十分な戦力が在ります。
■リシャール元国防大臣訪台
 最近の中国への欧州各国態度硬化は驚かされるような急展開ですね。

 フランスのアランリシャール元国防大臣は台湾を訪問した際に台湾を国と表現し中国側が反発する事態となっています。これは蔡英文相当からの台仏友好記念に関する叙勲の際、パリの台湾代表部を、貴国の代表、と表現したもの。フランスは建国記念日に当る双十節の期間、リシャール元国防大臣を団長とする上院議員団を中華民国台湾へ派遣しています。

 中華民国台湾と各国では2020年のトランプ政権時代、アメリカのアザー厚生長官が台湾を訪問していらい、各国との関係が強化されており、その都度北京の中国政府は不快感を表明しています。中国外交部の趙立堅報道官はフランスを批判しましたが、リシャール元国防大臣は国際社会が中国台北ではなく台湾と呼ぶのを妨げるべきではないと反論しました。

 フランスは台湾へミラージュ2000戦闘機やラファイエット級ステルスフリゲイトを売却した実績があります。台湾は自国防衛力強化へ様々な国産装備を開発していますが、外洋水上戦闘艦や潜水艦と第4.5世代戦闘機の国産開発能力は有しておらず、リシャール元国防大臣の訪問はラファール戦闘機やアキテーヌ級駆逐艦等の台湾輸出に憶測を呼ぶものでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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