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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(18)訓練展示偵察隊と敵戦車部隊の遭遇戦(2011-10-09)

2022-10-02 20:11:56 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
みよ!この威力!戦車前進
 この空気この轟音この振動、というような写真の情景はやはり実際に見上げてみなければわからないものがあるのですが一言で説明するならば、凄い迫力、となる。

 第7師団の訓練展示は凄いぞ、この一言に尽きるのですが今回は戦車部隊の訓練等を写真として回顧しつつ戦車の話題を。それにしても繰り返しますが第7師団の訓練展示は凄い、富士総合火力演習の様に実弾は使わないが、演習には出てこない仮設敵が、そこには。

 戦車は現在においても有用か、という問いはあるのでしょう、なにしろ陸上装備体系でもっとも予算を要するのはミサイル部隊か機甲部隊ですから。しかし、10名という一つの単位で考えますと、戦車ならば3両を運用できますので、人数を限定するならば、強靭だ。

 映画のスタローンやシュワルツネガーの世界観ランボーやコマンドー、デルタフォース、チャックノリスのほう、こうしたワンマンアーミー的な10名を集めない限り、10名という人員数を限れば戦車部隊はもっとも人員に対して戦力を最大限発揮できる職種と思う。

 戦車は進化します、長年戦車といえば120mm戦車砲、ロシア戦車が125mm戦車砲、というもので、これ以上の後継を搭載することは不可能ではないが、第二次大戦中には152mm砲搭載事例もある、しかし重戦車や駆逐戦車は重すぎ、中戦車、主力戦車へ収斂しました。

 ガンランチャーならば152mm砲をアメリカがM-60A2戦車とM-511空挺戦車で実現はしている、しかし戦車の機動力や防御力を肥大化によりそいでしまうことは否めず、結局は120mmと125mmが一種の最適解とされていました、これが、近年転換期を迎えつつある。

 フランスのネクスター社がテレスコープ弾薬方式、もともと大口径機関砲用の小型化技術、これを応用して140mm戦車砲の可能性を示し、ラインメタル社は55口径120mm戦車砲とほぼ同程度の大きさの140mm戦車砲試作を再開し、次世代戦車の主砲は大口径化しうる。

 我が国でも防衛装備庁は技術研究本部時代から研究、日本製鋼所とダイキンも135mm戦車砲技術を開発している。無理に搭載して初速が低下した場合は徹甲弾の貫徹力が下がってしまい、120mm戦車砲の新型弾薬を開発したほうが理にかなっているとはいえるのですが。

 この部分を両立しメガジュール比で120mm戦車砲の徹甲弾を越える貫徹力を、現実的に可能な戦車に搭載する研究は進んでいます。もっとも、130mm戦車砲の議論は冷戦時代に在りました、この頃には野砲も155mm砲から将来は175mm砲時代が来ると云われましたが。

 オールドメインドクトリン、戦車砲の新しい可能性を示すものはアメリカ陸軍が進める次世代通信技術開発です、これはリアルタイムの通信と情報共有を今までのリアルタイムの水準を超えて、戦分の一秒単位での情報共有を目指すもので、これが戦車砲を、変え得る。

 レールガン開発中止、アメリカ軍を取り巻く2021年の一つの話題に長年開発を進めてきたレールガン開発中止というものがありました、電磁コイルにより加速し理論上は光速まで加速した砲弾を投射できる、1980年代より日本を含め各国が開発した次世代可能技術だ。

 オールドメインドクトリンは、極超音速兵器などの脅威が増大する中で、これを確実に迎撃する技術は光速に迫るレールガンしかない、という視点で進められていたものについて、データリンクと脅威評価をAIにより全体で共有し瞬時に行うならば、別の方法を示します。

 レールガンの初速は素早いものですが、目標飛翔情報と脅威評価を千分の一秒単位で共有できるならば、通常の火砲から投射できる誘導砲弾でも、待ち受ける構図で、キネティック弾頭が弾道ミサイルを待ち受けて破壊するように、撃墜できる可能性をしめした構図で。

 戦車砲の将来技術は、こうしたオールドメインドクトリンが普及するならば、戦車砲での見通し線外射撃の可能性を充分に開拓するものとなります。もちろん、その運用は野砲、52口径火砲やアメリカが開発を進める58口径火砲でも対応できるのですが、其処は戦車の。

 戦車は機動力と防御力の面で52口径155mm榴弾砲を搭載する自走榴弾砲よりも優位にあります、そして如何に長射程を実現したとしても近接戦闘部隊の宿命として全て見通し線外戦闘だけで片付けられると考える程、戦史は甘くなく、歴史上例外なく痛い目に合う。

 大口径戦車砲はこの部分の欠缺を補う装備といえるもので、考え方を変えるならば将来戦車は大口径戦車砲をデータリンクにより運用する事で、既に10式戦車は僚車により目標情報共有し、見通し線外の戦車射撃を僚車との協同により事実上可能だが、一歩進め得る。

 戦車さえあれば戦争にこれだけで勝てる、敵艦船を洋上で撃破しステルス戦闘機も撃墜できるし身長が伸びて彼女も出来る、そこまでの万能を誇るものではありませんが、なにしろ現在120mm戦車砲APFSDS弾も飛翔距離だけならば物凄いものがあり、無視できない。

 日本の防衛を考えるならば、特に少子高齢化の時代に在って人命は尊い中でも尊く、また個人の能力を最大限発揮するには、戦車に3名を乗せて高い戦闘能力を発揮させる事が、限りある人材を最大限活用する方策の一つだと考えます。そう、戦車の火力は、万能です。

 戦車は、使うぞ、実任務で。こうした印象を昨今受けるところです。なによりもウクライナでのウクライナ機甲部隊の奮戦とロシア軍の緒戦における侵攻は、結局のところ戦争の形態が全面戦争という従来型の戦争を想定するならば、基本形が重要となるのでは、と。

 基本とは。人間が歩くときに足を使うように、また栄養分を接種する際に経口摂取するように、変わらない基本があるということを認識させられました。だからといって這うことを否定するわけではないですし点滴などの投与を否定しないと同様にこの論理が成立つ。

 戦車が必要だからといって無人機や対戦車火器が不要であることと同義ではない、という論理が成立つことの確認です。なるほど無人航空機はウクライナ戦争においてもウクライナ軍が活用し、対戦車ミサイルもジャベリンの威力はめざましいものがありました、が。

 新装備は様々なものが出てくる一方で、注意しなければならない前提としてこれらは戦車の攻撃を防ぐという、いわば相手の機甲戦力をそぐというものであり、ジャベリンと無人機同士が戦うことではなく、ともに一方に戦車という脅威が存在していたため、という。

 そして機動力と打撃力を併せ持つという意味で戦車を視る必要が。戦車を中心とした機械化部隊は自己完結性があり、結局のところ無人機と対戦車ミサイルを駆使したウクライナ軍が反撃に転じたのは戦車を中心とした機甲部隊でした。複合的に見るべきということ。

 この際にウクライナ軍は相当消耗していた自国のT-72戦車やT-64戦車をポーランドから供給されたNATO規格の照準機を搭載したT-72戦車で置き換えたため、かなり性能は向上しています、そのポーランドはM-1A2戦車やK-2戦車を増強する方針を進めてはいるが。

 火器管制装置の改良、いうなればわたしの古い方のカメラ、三世代前のEOS-50DなどにCANON純正の白レンズを装着したようなかたちでしょうか、威力を発揮できたという構図です。戦車の重要な部分に打たれ強さがありまして、装備品として、この点も重要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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