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浜松基地航空祭2012詳報⑥ 青空を背景にE-767空中警戒管制機の機動飛行

2013-11-04 23:19:17 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆この空は僕らを待っていた!

 この空は僕らを待っていた、空を宇宙に置き換えれば彗星のガルガンティアのOPみたいなタイトルですが、順光の撮影環境へ移動した感想はこうした感じ。

Himg_3069 青空に映えるこのE-767空中警戒管制機、早期警戒管制機とも呼ばれる航空機で、導入当時は一機で護衛艦二隻分という非常に高額な装備として性能を度外視して反発の声もありましたが、今日、我が国が周辺国に対し戦闘機数で押されつつも防空を維持できている背景に航空機の存在もあります。

Himg_3077 早期警戒管制機は、搭載するAPY-2レーダーによりE-767が高度9000mで飛行していた場合は超低空目標であっても430km、高高度目標であれば800kmの距離で補足が可能であるほか、超水平線遠距離捜索機能時は二次元情報に限られるが1000km以上の距離での目標捕捉が可能とのこと。

Himg_3087 レーダー情報はそのままIBM社製CCE-2指揮通信装置により処理され、千数百の航空機や飛行目標を同時に識別子追尾可能ですが、更に昨年度予算からUPX-40目標識別装置の搭載改修予算が通り、これにより同時に電子妨害などを排除しつつ二千以上の航空機を識別し追尾が可能となります。

Himg_3092 こんな写真が撮れるとは、高高度を往く旅客kとE-767だ。早期警戒管制機は目標情報を捕捉するだけではなく、目標を識別し、どの目法を優先目標として対処するかを決定する空飛ぶ司令部であるため、機内には14のコンソールが配置され、地上の司令部と同等の水準を持っての要撃管制を実施します。

Himg_3109 追尾目標はTADIL-A情報伝送装置により地上司令部はもちろん、直接飛行中の戦闘機や地対空ミサイル部隊へ情報を伝送でき、戦闘機部隊と地対空ミサイル部隊は自らが全く補足していない超長距離の目標を画面上の位置関係として把握することが出来るほか、早期警戒機からの情報伝送を行えば戦闘機は自らレーダー波を発せず戦闘が可能であるため、目標に発見されにくくなる。

Himg_3116 早期警戒管制機が最も威力を発揮するのはこの部分で、画面上に目標情報が表示されつつAAM-4のような長射程の誘導弾により目標が攻撃を開始する以前に一方的な攻撃を行うことが可能です。これにより航空自衛隊は戦闘機数が決して多くなくとも、数倍の戦闘機を相手に継続して航空優勢を確保できる訳です。

Himg_3134 航空自衛隊はE-767を導入する以前、1976年にMiG-25函館亡命事件が発生し、この際にはソ連軍特殊部隊による奪還作戦の情報が米国より寄せられたことで函館駐屯地が警戒態勢を取り、千歳基地より戦闘空中哨戒が実施、津軽海峡へ艦艇を常駐させ警戒したのですが、これにより低空目標への警戒の重要性が指摘されました。

Himg_3152 MiG-25が低空飛行した際に一時的にレーダーの圏外に出てしまい、これが有事であれば目標を探知できないままに航空攻撃を受ける事を意味していたため、航空自衛隊は低空目標の探知能力を有するF-15戦闘機の導入、そして早期警戒機の導入を決定しています。

Himg_3168 しかし、このとき米国が運用するE-3早期警戒管制機の導入を検討したのですが、余りに取得費用が高すぎたため現実的に導入でき無いとされ、より安価な艦載機であるE-2C早期警戒機を導入したのでした。もっとも航空自衛隊は13機を導入、世界で広くE-2Cは採用されているのですが開発国のアメリカ海軍以外に唯一二桁台のE-2Cを導入したことになるのですが。

Himg_3174 こうして1987年より航空自衛隊は三沢基地へE-2Cを配備し、北日本の低空侵攻に供えましたが1990年代にシーレーン防衛など海上での警戒監視活動を行うには艦載機であるE-2Cの航続距離では不十分とされ、改めて早期警戒管制機の導入が検討されました。

Himg_3178 E-3早期警戒機は飛行時間が長く航続距離も多い、そして高高度を飛行するためその分警戒範囲も大きく機内容積に余裕があり将来発展性も高い、しかしE-3は二機でE-2C一個飛行隊に匹敵する取得費用を必要としており予算確保と運用経費の確保に慎重を期し、この為導入は遅れることに。

Himg_31850 ボーイング707生産終了は、こうして検討期間が長期化すると共にそのさなかで発表されました。ボーイング707はE-3の原型機、この瞬間、航空自衛隊のE-3導入は物理的に不可能となります。そして航空自衛隊はボーイング767を原型機としてE-3の能力を有するE-767のどうにゅを決定、開発が開始されました。

Himg_3189 E-767は一機当たり当時の汎用護衛艦二隻分という極めて高い取得費用を要し、毎年段階近代化改修により一基当たる数十億円から百億円単位の予算を要する一種の怪物となりましたが、四機を導入したE-767により航空自衛隊の防空能力は文字通り飛躍的に向上、有事においては百機単位での戦闘機増勢に匹敵する防衛力を整備したわけです。

Himg_31940 そんな四方のような装備を浜松基地に配備しているのですが、高い機体でなんという飛行を、と少々焦ることも。さて、E-767の採用ですが、無理してE-3の最終調達に駆け込むよりはE-767の採用でKC-767や同型エンジンを搭載するC-2輸送機など、新しい装備体系を構築したわけですから、結果として正解だったのかもしれませんね。

Himg_32040 E-767の機動飛行が終了しますと、T-4練習機の離陸準備が開始されました。E-767の飛行展示は背景が青空、この空は君を待っていた、と言いたくなるような順光の撮影環境での撮影でしたが、これもエプロン地区では撮影できず、滑走路の反対側に展開しなければ見えないもの。

Himg_3213 エプロン地区ではこれから開始されるT-4の飛行展示も逆光で、機体は黒く空は白くなってしまうのですが、ここならば青空に映える機体の塗装を拝める、というわけです。これで芝生が青ければ最高、というところですが日付は11月17日、流石にそれは無理というもの。

Himg_3224 E-767ですが、搭載するAPY-2レーダーが生産終了となり、米軍やNATO軍のE-3と共に近代化改修プログラムと維持部品供給は今後も長期的に継続されるのですが、新規取得は不可能となりました。航空自衛隊としては更にE-767の増勢を望んでいたところでしょうが、更にE-2Cの老朽化と後継機選定の必要性も出てくるわけで、以下に対応するか興味の湧くところ。

Himg_3229 E-2Cの後継機はE-2DかE-737なのか、APY-2以外のレーダーを搭載するE-767Bを開発するのか、関心事ではありますが、それはそうとT-4が続々と離陸してゆきます。浜松基地航空祭はいよいよ編隊飛行が開始されますが、その様子までの流れは自愛紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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