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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:グレーゾーン事態を考える⑤ 国際人道支援任務と人道危機対処

2014-06-25 23:38:43 | 国際・政治

◆保護管轄権行使を強いられた際どうするか?

 保護管轄権をどうするか、ロメオ・ダレールの著書は国際政治を学ぶ学部生では多く知られていますが、彼が問うた難題への我が国での回答は未だ導き出されていません。

Pimg_7301 国際平和維持活動の人道支援任務に際し、現在のPKO協力法では万一の際、具体的には大規模騒乱や武装勢力の攻勢などに際して、制定当時のPKO協力法では自隊警護に限定されていたものが、施設や保護下に置かれている人員の防護にも武器使用が認められています。自衛権行使の三要件に該当せず、一方で放置すれば人道危機に繋がる状況での戦闘行動の可否は、考えなければならないグレーゾーン事態の一つ。

Pimg_1268 しかし、現行法では緊急避難に限られています。冒頭のロメオ・ダレールは、カナダ軍の将官で国連ルワンダ支援団司令官として派遣され、80万が虐殺されるルワンダ虐殺に際し、当時のPKO部隊では実力を以て阻止することが出来ず、辞任後、保護管轄権として権限に関わらず人道上必要な行動を採る体制の必要性を提唱してきました。

Pimg_9458 さて、自衛隊のPKO参加ですが、武器使用は緊急避難に限られているため、今日まで僥倖にしてそうした事案は生起していませんが、仮に安定状態が崩壊し、宿営地へ避難民が押し寄せるという状況と、緊急避難以上の積極行動を行使しなければ撤退するほかない状況に追いやられた際、放置すれば犠牲となる承知で難民を見捨て退避する事は出来るのか。

Pimg_3179 グレーゾーン事態として、自衛隊がPKO協力法で想定していない積極行動、PKO部隊による防衛線構築による安全地帯構築を国連が日本政府と現地部隊へ要請した場合、即ち位置を固守すれば戦闘で退避すれば避難民虐殺との人道危機、究極の天秤を差し迫られた際、現行法では人道危機を放置するほかない状況、どうすればいいのでしょうか。

Pimg_2562 憲法上軍隊ではない自衛権の行使主体という自衛隊ですが、装備と任務は軍隊としてPKOに参加します、万一秩序が崩壊した際には避難民は自衛隊に人命を託すこととなるのですが、この義務を放置する事は出来るのか、避難民は軍隊として保護を求める希望の対象となる事は言うまでもありません。

Pimg_3147 繰り返しますが、僥倖にして今日までそうした事案は生起していませんが、ルワンダ派遣、イラク派遣といった過去の自衛隊派遣はもちろん、現在派遣している南スーダンPKOなども、こうした危惧を安易に机上の空論として放置する事は出来ず、グレーゾーンが突き付けられた現状では超法規措置か現行法の拡大運用を強いられることとなってしまう危惧はあります。

Pimg_0940 無論、法的には撤退する事は出来ますが、虐殺事案を放置する、これは例えばルワンダPKOにおいてその地域にて発生したルワンダ虐殺を阻止できなかったPKO派遣国は国際的な非難を集めています。現行法を順守して人道危機の放置と世界的な非難を浴びた際、我が国世論にそれを支える覚悟があるとは考えられず、これは主観ですが、そうした状況を敢えて想定外と考えないようにしているのでは、と。

Pimg_0781 例えば、人道危機に際して、津城の国際平和維持活動後方支援任務から国連の要請に応え、撤退するのではなく、例えば米空軍のC-17輸送機等の支援を受け、小隊規模でも戦車を派遣する、重火器を緊急展開する、などの施策を採るならば、現行法からは逸脱しますので新法が必要となりますが、人道危機を阻止したならば国際的な批判は皆無でしょう。

Pimg_6905 保護管轄権をどうするか、安易に平和主義の論点からは、海外で人殺しさせない、という論調で語られる国際平和維持活動における緊急時の人道危機対処ですが、それならば平和主義の論点からは、虐殺を見過ごしてでも当事者にならない、という無責任を強調する体制が望ましいのか、グレーゾーンへの対応は十分考える必要があると考えます。

北大路機関:はるな

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