北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ユーロサトリ2014国際兵器展へ国内12社出展、三菱重工は新型装輪装甲車模型を出展

2014-06-19 23:57:38 | 国際・政治

◆防衛装備品輸出に関する温度差とともに

 現在フランスで実施されているユーロサトリ2014国際兵器展に我が国から12の防衛産業が出展しています。

Img_4423  三菱重工は新型装輪装甲車模型を出展し、輸出などの試作は政府方針に基づくことという原則を提示しているため、カ国の関係者からは此処の場所で商談を成立させることはできないのかとした声も寄せられたようですが、ユーロサトリへの日本企業出展、各種周辺技術を筆頭に注目度は高かったようです。

Img_7918  これは野田政権時代に防衛装備品の国際共同開発に関する再検討が示され、安倍内閣においてこの方針が発展的に継承されたかたちで、武器輸出三原則に明示された紛争当事国や共産圏と国連武器輸出禁止対象国への武器輸出を行わないとした原則を拡大運用し、全ての兵器を輸出しない、とした拡大態勢を見直すという指針に基づくもの。

Gimg_6444 昨今、イギリスやフランスとの防衛装備品共同開発に関する模索が進められているほか、オーストラリアへの潜水艦技術供与なども併せて模索されているところです。また、戦車技術の提供要請など、一通りの装備品の国産を努力してきた我が国の装備品は、併せて日本製品の質の高さから来る好印象とともに好意的に受け止められているもよう。

Img_5004i 他方で、国内の報道では、我が国の防衛装備品の輸出に関して、否定的な報道が散見、好意的な報道の方が稀有な状況となっています。その視点として、平和主義を国是とする我が国が武器輸出を行うことは、という疑義が背景にあるといえるのかもしれません。

Eimg_2940 ただ、防衛産業に関する連載記事を北大路機関特集として掲載した際に幾度も触れたところですが、国産装備は生産数が限られるため量産効果が低く高騰する要因を有しているため、海外装備よりも国産が割高、という主張がマスメディアや識者により為される際、対案は海外への輸出の方策を模索する、というものしかありえないはず。

Mimg_7038 討議を行う際には、この場合、高価な国産装備を平和主義の観点から輸出し価格低減の余地を閉ざすという、高いままに甘んじる選択肢か、量産効果により費用を下げる努力を行う方策を通じて為政者に国民の防衛負担を低減させる努力を求める選択肢か、どちらかを選ぶべきでしょう。

Img_72_81 もっとも、冷戦終結ののち各国の防衛装備品は量産効果の利を失い、対照的に我が国防衛装備品についてはその量産体制を過度な削減には曝されていないため概ね費用の大幅な高騰には繋がっておらず、価格競争能力では防衛装備品は割高という一種の印象は既に過去のものとなっているのではありますが。

Himg_3228 もちろん、防衛装備品は日本仕様のものであり、諸外国が導入しようとしたとしてもその国々が有する後方支援体系に合致しているかと問われれば、その相互互換性は難しく、これらの共通性の利は、単に高性能な装備品を安く供することが出来れば採用される、というものでは決してありません。

Img_9528 故に輸出の活路を開けば、高性能な装備は売れるので量産効果で安くなるという論理は必ずしも通りません、高性能で安くとも普及し指す差が重要になる、というものは過度に高性能を希求した日本製品の所謂ガラパゴス化と重なる部分もあり、もちろん欠陥品は論外ですが高性能で売れるものではありませんし、販路拡大を何処が主体となって必要な負担を行うか、というものもあるでしょう。

Img_79361 その一方で、視点を戻せば、防衛装備品を輸出するのは平和政策に反するのか、と問われれば、永世中立国だるスイスやスウェーデンが、エリコンやモワクにシグ、ボフォースやサーブといった巨大軍需産業を抱えて積極的に輸出を行っており、平和政策と武器輸出は一体と考えているのは我が国位でしょう。

Iimg_9390 しかしながら、紛争地や人道上の問題のある国々へ無配慮に兵器を輸出する国は平和政策と対照的な政策として批判を集める事があります、この部分については注意を要するのですが、反面、我が国は輸送機械や建機といった汎用品、直接殺傷に用いられないため武器としていない軍需品を広く民生品として輸出しており、この部分が懸念すべき諸国に流通していることの方が課題かもしれません。

Dkimg_7028 この点、我が国は武器輸出をしていない、としているのは武器を汎用品全般を含めた広義の軍需品ではなく直接殺傷に用いられる狭義の兵器に限定した範疇で堅持している事ゆえの一種の自己満足であり、我が国が防衛装備品を輸出していない事の国際的認知度や事業評価などは為されていないのではないか、ときになります。

Img_8097 ですから、輸出に関する管理を行う事の方が、汎用品の軍需転用を無視して兵器のみ輸出していないと開き直るよりも平和主義には貢献するのではないか、という視点、更に冒頭に示しました防衛装備品の費用を抑える努力の可否についての視点をマスメディアや識者は論じる必要があるでしょう。即ち、自己満足か輸出管理か、ということ。

Img_4627 ともあれ、ユーロサトリに出展し、一応の注目は集めました、機動戦闘車、あきづき型、C-2輸送機、そうりゅう型潜水艦、10式戦車、軽装甲機動車、ひゅうが型護衛艦、えのしま型掃海艇、07式機動支援橋、01式軽対戦車誘導弾、11式短距離地対空誘導弾、中距離多目的誘導弾、注目を集める装備は多数あります。これら装備についいても、販売有無を問わず提示してゆくことは重要だと考えます。

北大路機関:はるな

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