北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国軍が自衛隊機接近映像公表、30m接近と主張も実測値は323m(ミル/シュトリヒ計算法)

2014-06-12 23:48:11 | 防衛・安全保障

対象幅÷ミル×1000=距離(ミル計算法)

 本日、中国側が中国機に対する自衛隊機の異常接近、とする映像を公表しました。中国側はその映像を以て30mまで接近と主張したのですが、それにしては遠い。

Himg_3399 そこで、ミル/シュトリヒ計算法を用いてみますとその距離は実に323mという距離であることが分かりました。計算式は単純で、中国側の情報公開の稚拙さが見えてきます。中国側はTu-154より第83航空隊のF-15を撮影し、異常接近の証拠としたのですが、Tu-154とF-15という格好の対象を提示したため計算することが出来ました。323m、というと自衛隊機も接近するときがあるのだな、と思わせるのですが反面、この映像で中国側は30mまで接近している、と報道しているのは如何なものか、と。

Eimg_9071 Tu-154は全長47.90m、ボーイング707の全長が46.61mですので同程度の航空機であるといえるでしょう。全幅37.55m、主翼桁の端部は実測値が手元にありませんが、2mと仮定しましょう、 F-15Jは全長19.43m、今回中国軍が発表した動画は途中から接近するF-15にズームされていますが、その直前に主翼桁端部とF-15が同時に写り込む画像があり、その後ズームにより接近している印象を与えたのち再度広角に戻すとTu-154の端部が写りますので、そこから計算することが出来ました。

Gimg_9999 計算はミル/シュトリヒ法を用います、戦車砲の射撃などで照準器に三角のメモリが複数が刻まれていることで対象までの距離を計算し正確に射撃する、つまり測距に重宝するものですが、360°の円周を6283ミルとして瀬光に計算する際のもので、1ミルは(360/2000π)=約0.0573度 、対象1mのものを距離1000mで1ミルとすることが出来るため、照準器等にミルの目盛りを刻むことで、対象物の大きさが判明している際、正確に距離が分かる訳です。

Img_3136  1ミル=対象1mが1000m、10ミル=対象1mが100m、100ミル=対象1mが10m、です。Tu-154の全幅は37.55m、翼端までの距離を18mと仮定し、端部の主翼桁を2mと仮定した場合、その幅は90ミル、ということが分かり、翼端の幅と比較しますとF-15はその六割程度まで接近していますので60ミルと計算できました。ズームして近くみせましても、比較対象が写り込んでいるのであれば、これは自衛隊機が充分に距離を取っている証拠画像となるのですが、それを気付かなかったのでしょうか。

Iimg_3314  F-15C 全長:19.43m、60ミル、つまり19.43mの対象が60ミルに収まる距離を計算すればいい訳です。対象幅÷ミル×1000=距離、これがミル/シュトリヒ計算法です。つまり、この場合、F-15の全長÷60ミル×1000の距離を計算し、そこから撮影者の位置と主翼端部までの距離を引いたものがTu-154とF-15の距離となります、計算してみましょう。19.43(F-15全長)÷60(ミル/シュトリヒ)×1000-18(T-154の主翼端部と撮影者の距離)=323.83、となる。

Himg_7177 つまり中国軍が発表した動画に関して言えば、中国軍側は異常接近行動、としているのですがミル/シュトリヒ計算法ではTu-154とF-15、323.83mは離れているわけです。異常接近という情報を捏造することに失敗したのか、編集すればよい様なものの簡単に計算されることを気付かずに比較対象となるものを画像に含めたまま動画を公開したのか、意図が分かりません、が、編集していない情報を提示したとすれば、短絡的思考と言いますか、その稚拙さが気になるといえるところ。

Nimg_8455_1  動画をご覧の皆さんはF-15が動く様子からもっと近く見える、と思われるかもしれませんが、例えば航空祭のブルーインパルス飛行展示高度は最低高度で2000ft/600m、航空祭の戦闘機機動飛行などでも最低飛行高度は700m、しかも観客上空での機動飛行は通常実施しません、すると北大路機関で掲載している航空祭の機動飛行の機体と撮影している当方の距離は1km近く離れている、ということ。

Img_88_76  つまり、中国側が発表した自衛隊機の異常接近と称する動画はズームして間近に見せているのですが、Tu-154の主翼端部とF-15という格好の対象物を収めているため、ミル/シュトリヒ計算法で実は323m離れている、異常接近ではない中国側の捏造発表、ということが簡単に計算できてしまいました。逆に中国側が主張する30mまでの接近となりますと今回の60ミルよりも十倍以上に航空機が入る事となりますので、もっともっと迫った動画になります。航空機の中から航空機を見る機会が少ないので近く見える、という点もあるのでしょうね。

Img_1160  自分に不利な証拠画像でも発表する姿勢について、ある意味考えさせられるものですが、300m以上離れていることが明瞭にわかる比較対象を映像に含め簡単に距離が計算できる映像を安易に公開した姿勢は、なかなか理解できません。他方、今回の中国側の発表では既に航空自衛隊が射程を延伸させたAAM-5を搭載し緊急発進している様子が紹介されています。これはある意味、凄く興味深い映像と言えるでしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (9)
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