平地治美の漢方ブログ 

漢方(漢方・薬膳・鍼灸...)全般についてのブログです。コメント大歓迎。

霊枢終始篇 2 人迎脈口診について

2008年03月20日 | 古典・書籍
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前回の続きの部分から人迎脈口診の記載になるのですが,
その前に素問・霊枢における人迎脈口診について考察して
みたいと思います。

以前書いたように,人迎脈口診について記載が有るのは


素問 陰陽別論 第七
   六節蔵象論 第九
   腹中論 第四十

霊枢 終始篇 第九
   経脈篇 第十
   禁服篇 第四十八

ところで内経の編纂は素問チームと霊枢チーム,別々の人達が
やったのではないかと言われています。そして脈診については

 霊枢......人迎脈口診
 素問......いろいろな脈診

が記載されていますが,素問の三篇に記載されている部分は前後の
文との関連も薄く,不自然なかんじです。
島田隆司先生も,

「時代的にも前漢初,中期のものと思われる素問の篇に,後漢の霊枢
のものと考えられる人迎脈口診が入っているのは後人の付け加えで
あると考えられる。」

という御意見だったようです。

霊枢の根底に流れる思想であるにもかかわらず,実際の臨床ではあま
り使われていないようでもあります。

首と手首という離れた場所の脈を診ることにより体の中のおおまかな
バランスを判断することはできるかもしれませんが,大きさの違う脈を
「一倍,二倍,三倍....」などと比較できるのか疑問です。

今の時点では,やってもあまり臨床に応用できなさそうだな,というのが
正直な感想です。でも,一度まとめておけば,いつか何かの気付きがある
かもしれないので,
「完成したら壊す砂マンダラを作るチベット僧」になった気分で次回
まとめてみようと思います。




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霊枢終始篇 1

2008年03月19日 | 古典・書籍
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凡刺之道.畢于終始.

およそ刺の道は終始に畢る

刺.........鍼のこと

終始.......始めから終わりまで,という意味の他に「循環する」という
    意味があります。また,柴崎保三先生の本には

    「終始とは大宇宙の根本原理たる,陰陽両輪よりなる車輛を
     其の上に架して走り続ける軌道である。そして人は,その
     軌道の上に正しく乗って行動する時に健全な生命現象を
     営むことができるのである」
 
    と書かれています。
    つまり,そこをに乗っていれば間違いのないレールのことを
    「終始」と呼ぶようです。

畢る(おわる)...尽くす,出し尽くす,全部もれなくけりをつける



明知終始.五藏爲紀.陰陽定矣.


紀......①のり,いとぐち
   ②物事のはじめ
   ③はじめから順序良く整理するための手順.すじ道



陰者主藏.陽者主府.陽受氣于四末.陰受氣于五藏.
故寫者迎之.補者隨之.知迎知隨.氣可令和.

(陰は蔵をつかさどり,陽は府をつかさどる。
 陽は気を四末にうけ,陰は気を五蔵にうく。
 故に寫はこれを迎え,補はこれに随う。
 迎を知り,随を知り,気を和せしむべし) 

故に....かならず

  
迎......←こういう方向に来る相手に→こういう向きで出迎える。
   「流しそうめん」みたいなかんじでしょうか。

   中にある邪に対し,かみあい交叉させて外に連れ出す事であり,
   学校で教わった「流注に逆って刺す」という記述はどこにも
   ありませんでした。

随.....したがう。その物事やその時のなりゆきにまかせる

   易経に「沢雷随(たくらいずい)」という卦があります。
   一時的に主体性を捨て,臨機応変に従うことをよしとする卦です。
   しかし,少女(沢)に長男(雷)がしたがうという不安定なものです。


   和氣之方.必通陰陽.五藏爲陰.六府爲陽.傳之後世.
以血爲盟.敬之者昌.慢之者亡.無道行私.必得天殃.

和気の方は必ず陰陽に通ず。五蔵を陰となし六府を陽となす。

これを後世に伝え血をもって盟となす。
之を敬するものはさかえ,之を慢にするものは亡ぶ。
無道にして私を行えば必ず天の殃を得る


血をもって盟をなす.....禁服編で雷公がやった,例の儀式(口の周りに血を塗る)

敬......うやまう。心身を引き締めてていねいにする

慢......あなどる。いいかげんにあしらう

殃(おう,よう)......わざわい
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漢文の読み方

2008年03月18日 | 古典・書籍
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宿題の終始篇。
久々に辞書をひきながら格闘してますが,新しい気付きもあり
なかなか楽しいものです。

私は漢文読解は三考塾で松岡榮志先生に習いましたが,初めのころは
ダメ出しの連続で1行しか進まなかったこともしょっちゅうでした。

松岡先生は知恵の塊のような方で,膨大な知識と鋭い感性には毎回驚く
ばかりでした。ユーモアのセンスも素晴らしく,笑いの多い授業でした。
しかし,学問的にはとても厳しく,

「平地さん,それはおできにならなかったんですか?
 それともお調べにならなかったんですか?」

「すみません,調べてません」

「お話にならないですね」

「........」

そして優雅に扇子を使いながら私が辞書をひき終わるのを待っています。

テレビ出演などは全て断っていらっしゃるので,隠れたお宝的存在です。
私にとって先生に教われた経験は大きな財産になりました。

先生に教わったことの一部です。

・まず自分なりに素読して区切ってみる。
 2,4.6字で区切れる事が多い。
 対になっている文など,全体を見渡して構成をみることが大切。

 この区切ることが少し出来てきた時,「漢文って美しいな」と
 思えるようになりました。

・わからない字は当然として,わかりきっていると思う字も辞書をひく

・知っていると思う言葉が落とし穴

・スラスラできてしまった所ほど要注意

あとはひたすら文法や文型を覚える事でしょうか。

先生の著書を何点か紹介させていただきます。
「中国学レファレンス事典」は特に良書ですが,プレミアがついてしまって
いるようですね。

次回から終始篇の本文に入っていきたいと思います。

中国学レファレンス事典

凱風社

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料理の国へようこそ―中国人的生活芸術 (中国人的生活芸術)
陳 詔
三省堂

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クラウン中日辞典
松岡 栄志,白井 啓介,樋口 靖,代田 智明
三省堂

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大好き!雷公

2008年03月17日 | 処方・症例
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来週の勉強会で「霊枢 終始篇」のところの担当になり,今私の頭の中
は人迎脈口診でいっぱいです。
というわけで,しばらくは霊枢関連についてです。

「人迎脈口診」について記載が有るのは

素問 陰陽別論 第七
   六節蔵象論 第九
   腹中論 第四十

霊枢 終始篇 第九
   経脈篇 第十
   禁服篇 第四十八

などが挙げられますが,「禁服篇」の雷公のキャラが気に入って
しまいました。

雷公は他の篇でも,以前に習ったことをもう一回聞いちゃったり,
何と言うか,ちょっとお馬鹿さんっぽい発言があったりするのですが,
以外と重要な篇に登場しています。

以下,禁服編のはじめの部分を思いっきり簡単にしてみました。


雷公「あなたにもらった本(九鍼六十篇),よくわからないです。
   どうやって理解して後世に伝えればいいんでしょう?」

黄帝「苦労しないでものにしようなんて甘い!
   それに,こちらにも学ぶ人を選ぶ権利があるぞ。
   口の周りに血を塗り付ける儀式をきちんとして,
   初めて伝授するものなのだ。
   だいたいお前は誠意が足りない!」

雷公「よくわかりました。教えの通りにします!」

そして雷公は誠意を見せ,三日間部屋にこもったのち,黄帝のところへ
出直しました。
そして例の儀式をし,黄帝と雷公はかたく手を握り合い,かなり
テンションの高い,感動のスタートです。

そして黄帝は今まで教えた,教科書通りの説明を始めるのですが,

雷公「そういう理屈は知ってるけど,使い方がわからないんですよ!」

黄帝「学んだ知識をきちんと整理して使えなければ意味ないじゃないか。」

雷公「だから,もう深い知識なんかいらない,バカでいいからポイントを
   簡単に教えてくださいよ!」

黄帝「そんなことでは普通の医者になれるだけで,天下の指導者には
   なれないぞ!」

雷公「いいんです,普通の医者で。だから簡単にポイントを教えて!」

黄帝「.........(仕方なく教え始める)」



雷公,なんだか憎めないですよね。
この正直でなりふり構わないところが,とても好きです。
しかも,結局黄帝を言いくるめてしまうあたり,なかなかのやり手です。

雷公は人気者で,患者さんがたくさん待っていたのかもしれません。
その人達のために,カッコつけてる場合ではなかったのかもしれないですね。


そして黄帝は人迎脈口診の説明を始めるのですが.......


雷公よりはるかに下をいく私には,正直,よくわかりません。
でも,わからないなりにとりあえず読解を進めていきたいと思います。
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皮膚病 症例

2008年03月16日 | 処方・症例
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戴陽証について
戴陽証を一言で表現すると「フェイント」でしょうか。
表面はいかにも陽(熱)証なのだけれど,中は冷えきった状態(陰)
です。

たとえば電車に突然ヤクザが乗ってきて暴れだしたとします。
他の乗客は危険を感じ,なるべく壁際の,離れた位置へ避難します。
中央のヤクザが陰,壁際(表)に追いやられた乗客が陽です。
外から見れば陽ばかりだけど,実は中で陰が猛威を奮っているわけ
です。



戴陽証のアトピー性皮膚炎

29才女性  156cm 51kg
幼少時からアトピー性皮膚炎でステロイドを常用していたため,
皮膚は厚く象皮のようになってしまった。5年ほど前からステロ
イドを離脱していきたいと考え,鍼灸,漢方薬を併用していた。
徐々に効果が現れステロイドを使用しなくても痒みに耐えられる
ようになってきていた。
 指先の痒みだけが残り,「このくらいならステロイドを塗れば
治るだろう」と自己判断し,ステロイド剤を指先だけに塗ったとこ
ろ,その夜から全身に発疹が出て痒くて眠れなくなった。来院した
時は全身から黄色い分泌液が流れ出し,包帯からも滲みだしていた
ためビニールシートを敷いて治療をした。

ステロイドを使ってしまったことへの自責の念と不眠のせいか,
落ち着きがなく視線が定まらない。

舌体は紫,舌苔は白くやや厚い。
脈はもともと沈遅細であるが,さらにひどく沈んでいたため,
真寒仮熱の戴陽証であると判断した。

手足の指は冷たく血の気がなかったため,井穴刺絡をし,湧泉には
灸をした。
肩背部の熱感の強い箇所からは吸角を使い少量の血を刺絡。
漢方薬は茯苓四逆湯(煎じ)を服用していただいた。
治療後,急に眠くなってきたとのことだったので帰宅し,数時間
昼寝をしたら痒みは引き分泌液の流出も止まっていた。
三日後にはかさぶたができたが,乾燥して痒みがでたので紫雲膏,
中黄膏,ラベンダーオイルを使い分け対処した。口渇が出てきた
ため,処方は五苓散に変方。
二週間後にはほぼ元の状態に戻った。

《考察》
戴陽証は見かけが実熱証と似ていて見分け辛い。
以前,この患者に白虎加人参湯を服用してもらったことがあったが,
「体の芯から寒くて気分が悪い」と言われ,その後は五苓散,黄耆建
中湯等を服用していた。
今回は大量の分泌物を発汗と同じものと考え,落ち着きのない態度や
不眠を煩躁として茯苓四逆湯にした。
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血圧70! 血虚体験 その後の経過

2008年03月15日 | 処方・症例
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以前,献血で血圧が下がり過ぎた時の体験をお伝えしました。
(詳しくは2/1~5の記事をご覧ください。)
その後の経過についての報告です。

良い変化
①目と鼻の周りの皮膚炎が翌日に消えた
②月経周期が正常に戻った。
 PMS(月経前緊張症)の症状が,漢方なしでも出なかった
③食欲が以前より落ちた
④睡眠時間は以前より短いが日中は調子が良い
⑤物事に対しての執着が弱くなった


今のところ,悪い変化は自分では特に思い当たりません。

血熱について


漢方では、血に熱がこもる”血熱”という症状があります。

・暑がり,のぼせ
・月経が早く始まる
・月経血は鮮紅色で多量
・出血(鼻血,血便,血尿など)
・ニキビや赤い炎症
・イライラ
・不眠

などが主な症状ですが,原因としては

・甘いものや味の濃いものの食べ過ぎ
・お酒の飲みすぎ
・ストレス
・運動不足
 
などにより,血が濃くなり熱を持つことなどが挙げられます。

上記の①~④の症状は血熱によるものです。
私は食べることが好きなのですが,ちょうどその時期は忘年会や
新年会も重なり,食事の不摂生により血熱がいつも以上にこもって
いたように思います。

私はPMSの症状が毎月ではないのですが出ることがあり,月経前は
不眠になることがあります。また,その時期は悲しみに敏感になり,
辛い症状を抱えた患者さんに接するのが苦痛なのですが,それが
全くありませんでした。

また血熱があると,ヘンなプラス思考になり,自分の能力以上のことを
しがちになるように思います。
行動してる割には無駄が多いようなことが多い時期でもあるのですが,
いつもより冷めた目で判断している自分を感じました。

この精神面への影響は予想以上に大きく,大袈裟なようですが
世界が変わって見えるような感覚です。


今回の場合は,血を抜いたことにより一緒に熱が抜けた結果,
血熱がらみの症状がいっぺんに解消したと考えられます。

ちょっと危険な「デトックス」でしたが,良い経験になりました!
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皮膚を愛する

2008年03月14日 | 処方・症例
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「皮膚を愛しなさい」

岡山先生はよく患者さんにそうおっしゃっていました。
カルテに毎回書くのが大変だったのか、途中で

「やさしく愛して」

という印鑑を作ったほどです。


「先生,愛するってどういうことですか?」


という患者さんからの質問に,

・いつも気にかけてあげる
・丁寧に正しい方法で扱う

ことだよ,と答えてらっしゃいました。

「僕は皮膚科専門医だから,君じゃなくて皮膚の味方だよ。
あ~,こんなひどい扱い受けてかわいそうに。」

よく ”患部に” 向かってそう話しかけていました。

食事指導は,ニキビのような毛穴がつまる疾患の患者さんに対しては
・もち米
・ナッツ類

アトピーの人に
・たけのこ,山菜

を注意するくらいで,あまり神経質にあれを食べてはダメ,これを食べては
ダメという指導はしていませんでした。

シックハウス症候群の疑いがある,またひどいアトピーの患者さんには

・新しいビル,デパートにはなるべく行かない

ということを指導していました。

外用薬に関しては,ステロイドは一切使わず紫雲膏,サトウザルベ,
酸化亜鉛配合のローションを出すくらいでした。
それも,

「患者さんが何か塗らないと気が済まないから」

というかんじで,あくまでも内服の漢方が中心です。

岡山先生から教えていただいたことを書き表すのは難しいですが,処方に
関しては芸術性を感じました。
また,既存の考えに縛られず,自由な発想を持つことの大切さを学びました。



伝統医学の学び方

「その国の言葉を習得するにはその国の恋人を作るのが一番である」

と言われますが,恋人とまでいかなくても,やはり好きな,尊敬できる先生
から学ぶことが,伝統医学の習得に関しても一番の近道なのではないでしょ
うか。他の学問はわかりませんが,特に伝統医学は師匠との心の交流がなく
ては学べない部分が多いのではないかと思います。

勉強に通いはじめて,私は岡山先生のことがとても好きになりました。

先生も,寺師先生の頼みで仕方なく受け入れてくださったというかんじでしたが,

「はじめは君が来るの邪魔だな,と思ったけど,このごろ来ない週は淋しいなあ,
と思うようになったよ」

と,率直におっしゃってくださいました。
また,休み時間などには,他のフロアの店員さんの人生相談にのったりも
していたようで,先生御自身が「愛」の実践者でした。

このところ御無沙汰してしまっていますが,噂では相変わらず大きな声で
診察し,患者さんを叱り飛ばしたりしているそうです。

岡山先生には,いつまでもお元気で活躍していただきたいです。

コメント (7)
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皮膚病 3

2008年03月13日 | 処方・症例
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           膿疱 
           / \
        小水疱  びらん
        /      \
       丘疹      結痂  苔癬化
      /          \ /
     紅斑ーーーーーーーーーーー落屑ーー治愈 
      
        《湿疹三角形》
(線が引けませんでしたが,丘疹→落屑
 小水疱→びらん,結痂,落屑への移行もあります)


①紅斑期…病邪(主に外風)によって気血に急な停滞が生まれます。
     そこで発表剤を使って邪毒をと取り除きます。
     病邪が衛分に限局される場合は麻黄剤中心で

     実証,無汗で乾燥傾向→ 麻黄湯 葛根湯 桂麻各半湯

     虚証で色白,または湿った皮膚の紅斑→桂枝湯
                      桂枝加黄耆湯
                      桂枝加葛根湯 

     熱邪が深部の気分に入ってる場合は石膏を使います。
                     →白虎加人参湯   
                              
子供の目や口の周りに出るものには葛根湯を処方なさることが多
かったです。
「ジベル氏バラ色粃糠疹」には白虎加人参湯が効いていたようです。                 

②丘疹期…風邪+若干の湿邪
     発表剤、水剤をこの段階で用います。
               →小青竜湯 合 荊芥連翹湯
この処方はゆるやかに発表させるので消風散ではメンゲンが心配な
時に使います。今風の男の子(やせ形でやや色黒,神経質で手足の裏
ベタベタしている)に処方されることが多かったです。
     もう少し実証→消風散
            防風通聖散(合 通導散)
                 
③水泡・小水泡期…紅斑を伴う場合は丘疹期と同様の処方です。
         紅斑のない場合は利水剤を中心に与えます。

       →猪苓湯,五苓散,茵蔯五苓散,越婢加朮湯,苓桂朮甘湯
虚証でめまいを伴う場合→真武湯(合 人参湯)      

④膿泡期…熱毒が内盛して化膿しています。
                 →十味敗毒湯(合 温清飲)
                  清上防風湯
                  竜胆潟肝湯
                  黄連解毒湯
            痛みを伴う→排膿散及湯

⑤縻爛(びらん)期…水疱や膿疱が破れたものなので,基本的には
          同じ処方を使います。 

⑥結痂期......「かさぶた」のできる時期で,これ以降はとくに薬物を
       必要としないケースもあります。
                 →治頭瘡一方  

⑦ 落層期…..順調に行けば治愈に向かいますが,血虚の状態に陥り白い
      粉をふいて痒みを生じている場合は治療が必要です。
                 →当帰飲子,温清飲 

⑧苔癬化.....「アポトーシス」がうまくいかず,慢性化した状態です。
      瘀血を伴うことが多いです。
                →桂枝茯苓丸(合 桃核承気湯)
                →通導散(合 防風通聖散)




・その他,すべての段階で女性に多かったのは

  当帰建中湯(合 桔梗石膏)
  桂枝茯苓丸(合 桃核承気湯)
  加味逍遥散(合 四物湯)


・わからない時,とりあえず様子見で出すのに良いのは
  五苓散
  (岡山先生は脱毛等には合 セファランチン)
 
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皮膚病 2

2008年03月12日 | 処方・症例
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(昨日の続き)

寺師先生がくださった名刺を持って岡山皮膚科を訪ねました。
「なんて書いてあるかわからないよ!
でも,君をよろしくってことなんだろうね。
私はあんまりこういうこと(見学させること)したことないけど
寺師先生の頼みじゃ仕方ないな。
まあいい,見てなさい。ベッドサイド金匱要略だ!」

とおっしゃってくださいました。

岡山誠一先生。
学会などで発表なさることもこのごろはしないので,その名を知る
人は少ないかもしれません。
誰か師匠について勉強した経験はない一匹狼。
お母様の病気を寺師先生の漢方で救われ,また和田啓十郎の
「医界の鉄椎」に影響され漢方を志したそうです。
先生の時代に,わざわざエリートコースを外れ漢方をやるのは並大
抵の決心ではできなかったことが予想されます。


見たこともないようなひどい症状の患者さんが診察室に次々と入っ
てきます。先生はまず患者さんの掌をパタンパタンと叩き,それから
腹診,舌診,脈診です。
全ての過程で3~5分くらいでしょうか。

最初の患者さんはアトピーで顔は粉をふいたように乾燥して皮がむ
け,その下の皮膚は赤黒くなっていました。
先生は何を処方するのかな.....

「はい,五苓散」

えーーーっ!こんなにひどいのに五苓散だけ?
衝撃をうけました。
それからも出てくる処方もシンプルなものが多く,

当帰建中湯
猪苓湯
桂麻各半湯
桂枝茯苓丸
茵陳五苓散

などが多く,「いかにも皮膚病処方」というかんじの処方(例えば
消風散,十味敗毒湯など)はあまり出てきません。

典型的な古方の先生なのかな....と思っていると

九味梹榔湯(くみびんろうとう)
荊芥連翹湯
防風通聖散
加味逍遥散

など後世方処方も登場します。

その後,先生のところには3年くらい通って勉強しました。
次回は先生のところで学んだことをまとめていきたいと思います。

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皮膚病 1

2008年03月11日 | 処方・症例

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「皮膚病を上手に治せたら漢方家として一流」
と言われます。
皮膚病治療には

・症状の移り変わりが早く臨機応変の対応が求められる
・皮膚病は治ったか治らないかの結果が一目瞭然のものが多い。
 そのため,見た目に惑わされ,本治より標治ばかりに目がいきや
 すくなり失敗する
・瞑眩(メンゲン)と誤治との区別がつきにくい
・良くなったと思っても,悪い条件がそろえば1からやり直し

などいろいろな難関があります。

私も漢方を始めて数年経った頃,他の疾患(薬局に来るような
婦人科,慢性疲労,風邪等)はなんとか処方を選びそれなりの結果
を出せるようになったのですが,皮膚病に関しては治るどころか
悪化させてしまうことも多く,悩んでいました。
中医学の教科書通りの処方を出しても良くならないことの方が
多かったのです。

そのころ寺師睦宗先生の三考塾に通い始めてしばらくたったころ
だったので,

「皮膚病が難しくていつも失敗してしまうのですが,どうやって
勉強したらいいでしょうか?」

と先生に聞いてみたところ,

「いや~,私も皮膚病は嫌いでね。来ちゃった時は,知り合いの先
生に全部回してるよ。
何しろ私には5000人を妊娠させてギネスブックに載るという目
標があるからね。そんな面倒くさいのにはかかわってられないか
らね。
なに,あなたは皮膚病勉強したいの?
それなら一流の先生のところで勉強しなくちゃ。
今私が紹介状書くから。」

先生はおもむろに御自分の名刺を取り出し,裏に

「平地さんをよろしく」

というようなことを書いてくださいました。

寺師先生についてはまたいずれ書く予定ですが,大御所にもかか
わらずとにかく明るく面白い。
「私は苦手だから」と正直に言って他の先生を紹介するという行為も,
先生ほどの地位のある方にはなかなかできないことなのではないで
しょうか。

それからしばらく,蒲田の岡山先生の所へ通うようになったのでした。



  次回へつづく

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