(昨日の続き)
寺師先生がくださった名刺を持って岡山皮膚科を訪ねました。
「なんて書いてあるかわからないよ!
でも,君をよろしくってことなんだろうね。
私はあんまりこういうこと(見学させること)したことないけど
寺師先生の頼みじゃ仕方ないな。
まあいい,見てなさい。ベッドサイド金匱要略だ!」
とおっしゃってくださいました。
岡山誠一先生。
学会などで発表なさることもこのごろはしないので,その名を知る
人は少ないかもしれません。
誰か師匠について勉強した経験はない一匹狼。
お母様の病気を寺師先生の漢方で救われ,また和田啓十郎の
「医界の鉄椎」に影響され漢方を志したそうです。
先生の時代に,わざわざエリートコースを外れ漢方をやるのは並大
抵の決心ではできなかったことが予想されます。
見たこともないようなひどい症状の患者さんが診察室に次々と入っ
てきます。先生はまず患者さんの掌をパタンパタンと叩き,それから
腹診,舌診,脈診です。
全ての過程で3~5分くらいでしょうか。
最初の患者さんはアトピーで顔は粉をふいたように乾燥して皮がむ
け,その下の皮膚は赤黒くなっていました。
先生は何を処方するのかな.....
「はい,五苓散」
えーーーっ!こんなにひどいのに五苓散だけ?
衝撃をうけました。
それからも出てくる処方もシンプルなものが多く,
当帰建中湯
猪苓湯
桂麻各半湯
桂枝茯苓丸
茵陳五苓散
などが多く,「いかにも皮膚病処方」というかんじの処方(例えば
消風散,十味敗毒湯など)はあまり出てきません。
典型的な古方の先生なのかな....と思っていると
九味梹榔湯(くみびんろうとう)
荊芥連翹湯
防風通聖散
加味逍遥散
など後世方処方も登場します。
その後,先生のところには3年くらい通って勉強しました。
次回は先生のところで学んだことをまとめていきたいと思います。