「皮膚病を上手に治せたら漢方家として一流」
と言われます。
皮膚病治療には
・症状の移り変わりが早く臨機応変の対応が求められる
・皮膚病は治ったか治らないかの結果が一目瞭然のものが多い。
そのため,見た目に惑わされ,本治より標治ばかりに目がいきや
すくなり失敗する
・瞑眩(メンゲン)と誤治との区別がつきにくい
・良くなったと思っても,悪い条件がそろえば1からやり直し
などいろいろな難関があります。
私も漢方を始めて数年経った頃,他の疾患(薬局に来るような
婦人科,慢性疲労,風邪等)はなんとか処方を選びそれなりの結果
を出せるようになったのですが,皮膚病に関しては治るどころか
悪化させてしまうことも多く,悩んでいました。
中医学の教科書通りの処方を出しても良くならないことの方が
多かったのです。
そのころ寺師睦宗先生の三考塾に通い始めてしばらくたったころ
だったので,
「皮膚病が難しくていつも失敗してしまうのですが,どうやって
勉強したらいいでしょうか?」
と先生に聞いてみたところ,
「いや~,私も皮膚病は嫌いでね。来ちゃった時は,知り合いの先
生に全部回してるよ。
何しろ私には5000人を妊娠させてギネスブックに載るという目
標があるからね。そんな面倒くさいのにはかかわってられないか
らね。
なに,あなたは皮膚病勉強したいの?
それなら一流の先生のところで勉強しなくちゃ。
今私が紹介状書くから。」
先生はおもむろに御自分の名刺を取り出し,裏に
「平地さんをよろしく」
というようなことを書いてくださいました。
寺師先生についてはまたいずれ書く予定ですが,大御所にもかか
わらずとにかく明るく面白い。
「私は苦手だから」と正直に言って他の先生を紹介するという行為も,
先生ほどの地位のある方にはなかなかできないことなのではないで
しょうか。
それからしばらく,蒲田の岡山先生の所へ通うようになったのでした。
次回へつづく