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平地治美の漢方ブログ 

漢方(漢方・薬膳・鍼灸...)全般についてのブログです。コメント大歓迎。

不知火検校 2 「検校」について

2013年09月25日 | 鍼灸
日本には古くから盲人を守るための優れた制度がありました。
「検校」というのはその制度の中の役職名です。

第五十四代仁明天皇の皇子である人康(さねやす)親王は若くして失明。
隠遁した人康親王は自分と同じ盲人を集め、琵琶や管絃、詩歌を教えたそうです。
人康親王の死後、側に仕えていた盲人に検校と勾当の2官が与えられ、これが
「検校」と呼ばれる盲人の官位の始まりといわれています。

その後しばらく下火となってしまったこの制度が活気づいたのは江戸時代。
幕府は盲人が男性盲人の互助組織「当道座」に属することを奨励しました。
かなり自治的な運営が行なわれ、 検校の権限はしだいに大きなものとなり、
社会的にもかなり地位が高く、関東の座を取り締まる「惣録検校」になると
十五万石程度の大名と同等の権威と格式を保ちました。

江戸時代には優れた音楽家となる検校が多く、その後の音楽界大発展の大きな
原動力となりました。

生田検校(生田流箏曲の始祖)、
八橋検校(京都のお菓子「八ッ橋」は八橋検校が由来!)、
尾張藩の吉沢検校

などのように、専属の音楽家として大名に高待遇で召し抱えられる検校もいました。
また杉山和一のように鍼灸医として活躍したり、塙保喜一のように学者として名を
馳せた検校もいます。

視覚障害は世襲と関係ないため、平曲、三絃などの音楽または按摩・鍼灸の業績が認められれば
一定の期間をおいて検校まで73段に及ぶ盲官位が順次与えられました。
しかしそのためにはとても長い年月がかかり、早く取得するためお金による盲官位の売買も公認され、
当道座によって自治的に各盲官位が認定されるようになりました。

ではお金で検校になるには?
最低位から順次位階を踏んで検校になるまでには総じて719両が必要であったそうです。
1兩が現在のいくらに相当するのか?
1兩≒4万円として計算したとしても300万円近い金額です。
按摩師が貯めるには大変なことと想像できます。

そこで官位の取得に必要な金銀取得を助けるため、元禄頃から幕府は高利の金貸しを認めていました。
特に幕臣の中でも禄の薄い御家人や小身の旗本等に金を貸し付けて、暴利を得ていた検校もおり、
「不知火検校」でも富の市が按摩師の他にサイドビジネスとして旗本にお金を貸す場面があります。

私達鍼灸師の憧れの人・杉山和一も金貸しをやったのかしら?
なんだかイメージできません。。。

「不知火検校」ではお金儲けのためなら人殺しも平気でする、という按摩師の検校が主人公ですが、
清貧に甘んじてコツコツお金を貯め、悪いことを一切しないで実力のみで検校になる
正義のヒーローみたいな検校物語も作ってほしいですね。


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不知火検校(しらぬいけんぎょう)1

2013年09月24日 | 鍼灸
今月号の医道の日本「鍼灸パラダイム談義」では
武田時昌先生が盲人の按摩鍼師について書いてくださっていてとても面白い。

しかし悲しいかな、私達以下の世代は「不知火検校」「座頭市」と言われてもピンと来ないのです。
勝新太郎さんによる大人気番組で、もう一回り上の世代の方はテレビで夢中になって見ていたようですね。

そんな折、「不知火検校」が36年ぶりに松本幸四郎により復活上演、ということで
新橋演舞場に観にいってきました。
松本幸四郎さんが演じるダークヒーローの按摩鍼師・富の市。
悪の限りを尽くし、最後は師匠を殺して盲人としての最高位・検校にまで昇りつめます。

ちなみに「不知火」とは九州や四国の海の沖にゆらめいて見える蜃気楼で
人魂のように見えるものだそう。

作者の宇野信男は

「悪い人間というものは見るからに悪そうには見えないものだ。
 それどころか、見るから愛嬌のある人がびっくりするような人間であることがある。
 そういう人は平気の平左で悪いことをして、知らん顔している、
 びっくりするような悪事を働いて、ニコニコしたり、どこを風が吹くか、
 というような顔をしている...........
そんな人間を前々から書いてみたいと思っていた」

と語っていますが、富の市はまさにその通り、金のためならどんな悪事でも働きます。
そのやり方というのが人の良心を利用したものが多く、一例の師匠殺しは
まず一番優秀な弟子となって師匠の心をつかみ、その後周到な計画を立てて殺してしまいます。
良心をもたないサイコパスのような人は昔からいたのですね。
この舞台では「鍼治療のシーン=殺人シーン」で、人を助ける為の鍼を平気で殺人の手段として使います。

これでもかという悪事のオンパレードで救いのない感じですが、とうとう最後は
富の市の悪っぷりについていけず、恐ろしくなって精神的におかしくなってしまった
仲間の内部告発によって捕えられます。

捕えられて群衆から石を投げられ「人!」と言った人に見えぬ目を向け

「オレのように胆が据わっていないから、お前達は目開きのくせに悪いことの一つもできず、
 ジジイになりババアになっていくだけ。楽しみと言えば祭りをみることくらいだ。
 思えば不憫なやつらだ.....」

と憐れむように言い捨てます。

そして、共に悪事を働いてきた相棒の生首次郎に向かって

「あばよ、地獄でまってるぜ!」

と爽やかに去って行きます。
縄をかけられているのに風格が漂い、美しい姿はまさに「悪の華」。

36年前の十七世勘三郎が主演する舞台を観た大映の人が

「これはぜひ勝新太郎にやらせたい」

と強く推し、後の座頭市シリーズにつながり大スターになっていったそうです。

勝新のものも是非視てみたい。
鍼灸学校の指定DVDにして皆で鑑賞するのも面白いかもしれないですね。



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9月19日開催東洋鍼灸専門学校公開講座

2013年09月15日 | 学会 勉強会 お知らせ
9月19日開催東洋鍼灸専門学校公開講座

お知らせにも記載した通り、今回は

・舌診
・秋の養生
・美肌対策

がテーマです。

参加ご希望の方は、学校に直接お申し込みください。


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秋梨膏

2013年09月09日 | 養生

  中医学では「秋」を前半と後半大きく2つに分けています。

  前半はちょうど今の時期、
  残暑で日中はまだ暑く感じますが、空気は乾燥してきています
  「温燥(おんそう)」の邪を受けやすい時期です。

  後半は10月初旬あたりから、肌寒くなって空気が冷たく乾燥してきます。
  「涼燥(りょうそう)」の邪を受けやすい時期です。

  どちらの時期も乾燥することは同じで、ちょうど今の時期に旬を
  迎える「梨」は、肺・胃を潤してくれる果物です。

  「本草備要」の中で梨については、

  「生で食べると六腑の熱をとり火を通して食べると五臓の陽を滋養される」

  と記載されており、食べ方によって効果が違ってきます。

  水分が多く体の熱を冷ます性質を持つので、温燥の時期には生食がピッタリです。
 
  涼燥の時期になって寒くなってきた場合、冷え症やお腹を壊している場合などは
  シナモンや生姜などの温性の食材と一緒に煮込んで、コンポートやジャムにする
  方法が良いかと思います。


  昨日、たくさんいただいた梨で秋梨膏を作ってみました。
  
 
  この他に貝母や百合を入れて咳に使っても良いらしいので、こんど咳の出ている人に
  あげてみようと思います。
 

〈秋梨膏〉
梨    1200g(5~6個)
大棗   80g
生姜  20g
氷砂糖  100g
蜂蜜   100ml

〈作り方〉
蜂蜜以外の材料を入れて弱火で煮込み水分を飛ばす。
最後に蜂蜜を入れて保存する。


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コメント (3)
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