田舎道を歩いていると普段出会うことの出来ない、
新鮮で刺激的な光景に遭遇することがあります。
結婚して間もない頃、
まだ子供も居なくて結構時間のあった頃のことです。
3,4日くらいの連休を妻の実家で過ごしました。
午前中、桃の刈り入れ…じゃなくて何ていうんでしょうか。
とにかく桃を木からもぎ取って、
午後は1,2時間、収穫した桃を綺麗にして箱詰めしたりしたその後、
夕暮れが近づく頃、二人で散歩に出ました。
労働(という程のモノじゃないが)の後の散歩は爽やかでした。
穏やかな山道を歩いていくと、
ふとした所に果物のかごが置いてあります。
確かリンゴかなんかだったと思います。
何かなと近づいてみると、
そばにはお金の入った小さなかごも。
千ウォン札が数枚と小銭が少々。
「一個○○ウォン」と書いた紙が立てかけてありました。
むっ、無人販売…!
しかも限りなく太古の息吹を感じさせる!
「や、やられた…!」、意表を突いた攻撃に私はうろたえました。
田舎の山道にふさわしい、
それでいて絶対に予測出来なかった手法!
よく日本でもさりげないポイントにお地蔵さんとかたたずんでるじゃないですか?
何気ない山道でありながらも人々のふとした気持ちの通う、
微妙にツボを押さえた場所に…立ってますよね。お地蔵さんて。
言うならばその「お地蔵さんポイント」、にあるんです。
無人販売システムが。
即座に妻に、「この商売は成り立っているのか?」と尋ねました。
妻は「愚問だ」と言わんばかりの顔をわざとして見せる。
大学入学から8年間、東京で過ごした経験のある私には信じられないことでした。
やはり検証すべきでしょう。
次の日、同じ散歩コースを行って、
ドキドキしながら例のポイントへ…
まだあります。
しかも昨日よりお金、いっぱい入ってるし…。
驚いたことにお金のかごには昨日から回収された形跡もないままに、
お札も小銭も増えていました。
お金払わないでリンゴ持ってっちゃうヤシも、
リンゴもろともお金持ってっちゃうヤシもいないのです。
農家で食べ切るあてもなく余っちゃってる果物とかを、
気軽に欲しい人に分けてあげれる合理的なシステムなんだそうです。
世界中がこの村のようだったらいいのに!
乙女ポイ台詞が赤面することもなくスラスラ出て来る…
そんなとある夕暮れの出会いでした。