あれはまだ私が韓国に来て間もない頃でした。
会社からある場所まで移動する際にバスを利用することになったのですが、
同僚が、「一緒に行く」と付いて来ます。
「いくら外国人でも子供じゃないんだから…」
「いや君にはまだひとりは無理だ。」
「え?な、何が…?」
そうです。
この国のバスに乗るには運動神経は勿論、勇気、ガッツ、動体視力、乗車テク、
その他様々な力量が必要とされたのです。
それは悪夢でした。
タイヤが鳴るほどの急発進から始まった「初バス」は、
急加速、急ブレーキ、急カーブはおろか、信号無視、無理な追い越し、等等、
日本人の常識からは計り知ることの出来ない凄まじいものでした。
ジェット・コースターどころの話じゃありません。
出発して1分もしないうちに同僚の言葉を深く、
そして切ないまでに理解しました。
バス内はもう既に加速という名の修羅場。
子供は必死で母親にすがり付き、
おじさんは前の座席にしがみ付き、
つり革に両手でつかまったお姉さんの体は宙に浮きました。
後部座席からは乗客のおばちゃんがスーパーで買った品物が、
次々に転がって来る…。
コロコロ、コロコロ、果物が転がり来るその後に金ダライが、
ガラガラと激しい音をたてながら転がって来て料金箱にCrash!
そ、そして私は見た。…見てしまったのです。
おばあちゃんが最後部から真ん中あたりまでゴロゴロと転がるのを…!
悲鳴をあげながら転がるおばあちゃんを見ながら、
なす術もなくただ黙って見ているしかない乗客たちの口からは、
運転手に向けられた激しい罵声と憎悪に震えるしん吟の声、
「おばあさん!」、「おばあさん!」と手を伸ばし口々に呼びかける声、声、声…。
誇張表現など全く無しです。
この目で見たままを率直に書いているだけです。
バス停に着いて降りる乗客たちは口々に運転手を罵倒しながら降りていきました。
ある男性は「バス会社に抗議する」とナンバーを控えて行きました。
そんな乗客たちの態度にもまるで、「また言ってるぜ」とでも言うように、
運転手はまるで聞こえていないような態度で顔さえも向けもしません。
初バスがこんなでしたからそれからと言うもの、
やむを得ずバスに乗るときは覚悟を決めてから乗りました。
外人1年生の私にはしっかりトラウマとなりました。
国民の皆さんやマスコミの糾弾でここ数年の間でかなり改善されたものの、
根底にある精神までは改革されていないと思います。
日本のドライバーの方々のマナー、心意気、プロ魂に比べたら、
…いや、比べることさえも馬鹿馬鹿しい。
なんか書いてたらどんどん言いたいことが浮かんで来る…
また明日書きます。って思い出して怒るなよわたし…。