浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

Journalism9月号

2014-09-10 15:51:46 | 日記
 いま右翼雑誌や商業メディアに叩かれている朝日新聞社発行の雑誌。

「従軍慰安婦」問題に関する朝日新聞攻撃は、一般週刊誌も加わり、その勢いが増しているような気もする。こう書いていても、ボクはそうした雑誌を読んでいないので、詳しいことはわからない。ただし、右翼の攻撃手法、「一点突破・全面否定」という手法を、一般週刊誌もとりはじめたということだけは指摘しておきたい。

 「一点突破・全面否定」とは、公表された研究論文や調査報道に「一点」でも不十分な箇所や間違った記述があると、それを攻撃することにより、すべてを消し去ろうというものだ。「慰安婦」問題について言えば、吉田清治という人が書いたものに記されていたところの朝鮮半島での「強制連行」がなかったのだから、「慰安婦」はなかったという主張である。しかしこの点で言えば、朝鮮半島で吉田が記したようなことはなかったかもしれないが、他の地域では強制的に「慰安婦」とした事例は存在するのである。それだけではなく、「慰安婦」問題は、以前にも書いたが、吉田が記した「強制連行」があろうとなかろうと、問題とされる歴史的事件なのだ。

 いや今日は、これについて書こうとしたわけではない。今月号のJournalism9月号について書こうとしているのだ。

 今月号は、多彩な方々による、ジャーナリスト(そしてその予備軍)に宛てた読書の手引きである。「反知性主義に抗うために」というテーマのもとに、10冊の本をそれぞれが紹介しているのだ。全部で18人。オーソドックスな内容のもの、ユニークな内容のものがあるのだが、後者の方が面白かった。

 まず憲法学者木村草太の文は、流れるような内容で面白かった。まっ先に高野秀行の本をあげて論じ始めたことが功を奏している。佐藤優というもと外交官は、ボクは、彼の本を読んだ上で言うのだが、好きではない。だからかもしれないが、彼が薦める本に関心は湧かない。ただし推薦した本に『民族とナショナリズム』(岩波書店)があったが、これは読むべきだ。つぎ柏倉康夫、もとNHKの人。主張の全体は意義深いもので、読みたいものが何冊か出てきた。田所真幸の紹介する本は、読もうという気が起こらなかった。落合恵子の本も、彼女の関心とボクのそれとは重ならないことがわかった。松原隆一郎は、個人的な探究に関わって読んだ本を紹介しているが、これはまあ内容的にはきわめて個人的な本ばかり。森達也は予想通りと思うような選択。山口二郎には以前から不信感があるので、「あーそうですか」。山口が推薦するものは、ほとんど読了済み。毎日新聞の西川恵の推薦図書は読みたいものが多い。ただし朴裕河の『和解のために』については、ボクは賛同できない。トニー・ジャケット『ヨーロッパ戦後史』上下(みすず書房)はすぐにでも読みたくなった。渡辺武達では『ベラ・チャフラフスカ』(文春文庫)を読みたいと思った。橋本五郎の推薦図書は「あっそう」で終わり。慶應大学の山腰修三の推薦図書は、読んだ本もあるけれども読みたい本もある。『民主主義の逆接』(以文社)は読みたくなった。

 五野井郁夫の文は面白く、推薦されたものも読みたくなった。『金枝篇』(岩波文庫)は読んでいないので、読まなければならなかったと後悔。『スペクタクルの社会』(ちくま学芸文庫)も読みたい。何年か前、『現代思想』で、「スペクタクル社会」の特集があったことを思い出した。もと共同の青木理が推薦する本は、ほとんど読んでいる。興味関心が重なるということだ。生井英考の推薦図書も、知らなかったものが多く、いずれ読みたいと思う。TBSの金平さんの推薦する『ニュース報道の言語論』(洋泉社)は読みたくなった。金平さんのは、そうだろうなと思うような選定である。根本かおる推薦の陳天璽『無国籍』(新潮文庫)、高野秀行『アヘン王国潜入記』(集英社文庫)も読みたい。仲俣暁生の文はとてもよくて、そこで紹介されている本は、読んだものを除き、すべて読みたくなった。井田真木子という人は知らなかった、片岡義男『日本語の外へ』(角川文庫)、大野更紗『困ってるひと』(ポプラ文庫)。

 ボクはものすごくたくさんの本を読んでいるが、知らなかった本が多い。こういう特集があるとさらに本が増える。最近は図書館で借りるようにしているが、ボクは赤鉛筆で線を引いたり書き込みをする習性があるので、買うしかなくなるのだ。

 金平さんは、最近の若いメディア関係者には、好奇心が足りないようなことを記していた。ボクは高校生の頃から、世界のすべてを知りたいと思って生きてきた。だから好奇心が旺盛で、さまざまな分野の本を読んできた。いまは歴史や政治に関係する本を読むことが多いが、大学生の頃までは自然科学や児童文学の本もたくさん読んだ。そこで獲得した知識がいまも活躍している。

 自分自身の人生の軌跡はあまりに細い、せめて本を読んでその線を太くしたい。

 『朝日』のTさん、この人選はよかったと思います。知的刺激を大いに受けました。
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「昭和天皇実録」の社説

2014-09-10 14:08:38 | 近現代史
 昨日の新聞は、これについての報道が多かった。ボクは見てもいないので何とも言えないが、新しい事実や昭和天皇にマイナスになるような記述はぜったいにありえないだろう。歴史研究というのは、批判的な視点を持つ人でなければ、真実は明らかにならない。

 さてそれを報じた新聞社は、社説でも論じている。やはり沖縄の新聞がもっともクリアである。

 『琉球新報』
<社説>昭和天皇実録 二つの責任を明記すべきだ2014年9月10日

 沖縄の運命を変えた史実は、十分解明されなかった。

 宮内庁は昭和天皇の生涯を記録した「昭和天皇実録」の内容を公表した。米軍による沖縄の軍事占領を望んだ「天皇メッセージ」を日本の公式記録として記述した。

 しかし、沖縄の問題で重要とみられる連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサーとの会見記録や、戦争に至る経緯などを側近に述懐した「拝聴録」は「見つからなかった」との理由で、盛り込まれなかった。編さんに24年かけたにしては物足りず、昭和史の空白は埋められなかった。

 昭和天皇との関連で沖縄は少なくとも3回、切り捨てられている。最初は沖縄戦だ。近衛文麿元首相が「国体護持」の立場から1945年2月、早期和平を天皇に進言した。天皇は「今一度戦果を挙げなければ実現は困難」との見方を示した。その結果、沖縄戦は避けられなくなり、日本防衛の「捨て石」にされた。だが、実録から沖縄を見捨てたという認識があったのかどうか分からない。

 二つ目は45年7月、天皇の特使として近衛をソ連に送ろうとした和平工作だ。作成された「和平交渉の要綱」は、日本の領土について「沖縄、小笠原島、樺太を捨て、千島は南半分を保有する程度とする」として、沖縄放棄の方針が示された。なぜ沖縄を日本から「捨てる」選択をしたのか。この点も実録は明確にしていない。

 三つ目が沖縄の軍事占領を希望した「天皇メッセージ」だ。天皇は47年9月、米側にメッセージを送り「25年から50年、あるいはそれ以上」沖縄を米国に貸し出す方針を示した。実録は米側報告書を引用するが、天皇が実際に話したのかどうか明確ではない。「天皇メッセージ」から67年。天皇の意向通り沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中して「軍事植民地」状態が続く。「象徴天皇」でありながら、なぜ沖縄の命運を左右する外交に深く関与したのか。実録にその経緯が明らかにされていない。

 私たちが知りたいのは少なくとも三つの局面で発せられた昭和天皇の肉声だ。天皇の発言をぼかし、沖縄訪問を希望していたことを繰り返し記述して「贖罪(しょくざい)意識」を印象付けようとしているように映る。沖縄に関する限り、昭和天皇には「戦争責任」と「戦後責任」がある。この点をあいまいにすれば、歴史の検証に耐えられない。
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安倍内閣支持率

2014-09-10 13:48:21 | 政治
 安倍改造内閣を明確に支持しない国民は、たった30%だそうだ。

http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20140910/1410305311

 きちんとみれば悪政ばかり。原発再稼働、武器輸出解禁、戦争をする日本への転換など、かぞえあげれば切りがないほどだ。しかしそれでも、安倍内閣の支持率は50%を上回るようだ(『毎日』は低い)。

 「アベノミクス」で少し景気がよくなったかのような宣伝で、それを信じているのか。

 『東洋経済』7月26日号を最近購入した。その特集は「『21世紀の資本論』が問う 中間層への警告」。「中間層」が「中間層」でなくなる(日本では、総貧困化だそうだが)具体的事例が載せられている。全体的にも、子細に見れば、給与が上がっても、可処分所得は増えていないはずだし、中間層が下層へと剥落しているという数値はかなり以前から指摘されている。年金生活者は、生活レベルを下げているのが現実。

 そういえば今日の『中日新聞』に、TPP関連の官僚の出張費が総額で3億5千万円(2013年7月~14年3月)であったという記事が載せられていた。

 国家財政が厳しいという報道がなされ、多くのお人好しの国民は、それなら消費税アップも仕方がないと思っているようだが、しかしその税金を費消する官僚や政治家は、節約なんかまったくしていない。それが上記の数字にも現れている。

 それでも国民の半数以上は、安倍政権支持か。ため息が出てしまう。
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