新年のことばは九条武子さんの短歌です。九条武子(1912年~1928年)さんは明治時代から昭和の初めに活躍された歌人であり、教育者であり、社会運動家であった。
今、六十歳より上の布教師さんがたは、法話や文章に九条武子さんの短歌を頻繁に引用されていました。
伯爵家に生まれ、公爵家に嫁いだ方らしい歌です。この歌の背景を詳しくはしらないけれど、新しい年の歌というわけではない。就職でも、入学でも、引っ越しでもかまわない。最初の一歩を踏み出すときの決意願望の歌として理解すれば良いのでは!
ところで右の写真は、正月の我が寺の本尊さまを彩る生花です。シキミに小菊に千両の紅い実。シキミと小菊は数日前の12月24日に先住職の七年忌をした時に、花屋さんにしつらえてもらった弔事の花です。七年忌の花に千両を加えて、賀春の花に転用したわけです。これって、「正しくあらん?」
正しいかどうかはしらないけれど、最初は全部を生け替えようと思ったのです。でも、イヤ待てよ!シキミについて調べた時に、正月飾りに松でなくシキミを使う地域もあるとしりました。それで、シキミはそのままにして、白菊だけとって、紅い千両に替えればよし、と思ったのです。でも、紅色というのは、緑だけだと沈んでしまう。白菊を残せして紅を足せば紅白になるではないか。「凶は吉に帰る」(『梅暦』)、あるいは「禍福はあざなえる縄の如し」(『史記』)とはこのことか。
紅い千両を加えるだけで、弔事が慶事に変わるのです。これって、わたしたちの日常にもありえることです。だが、しかし日常の生活では、一発逆転するには何が必要なのか判然としません。なぜ、判然としないかというと、人によって千両の役目をしてくれる契機が異なるからでしょう。
福も凶も背中合わせ。凶を福に転じる人生の千両は何なのか。探す一年が始まったようです。